インタビュー
【 社長インタビュー 】
現場重視、厚い信頼実感 運送屋から運送企業へ
2026年11月03日
山陽自動車運送 本荘 寿彦 社長
山陽自動車運送(本社・大阪府東大阪市)は、事業の持続可能な発展を目指すため、業務効率化と収益強化を加速させている。本荘寿彦社長は「完全週休2日制の実現といった待遇や環境の改善は欠かせない」として、得られた原資を現場に還元するとともに、社員に〝運送企業〟との自覚を促しながら社会的地位向上にも取り組んでいく。
――社長に6月、就任した。
本荘 まず現場をくまなく回った。役職員が打ち出した戦略の下、主体的に動いている印象を抱いた。心強い。さらに働きやすいように労働環境や待遇の改善を図るためにも、非効率な業務の見直しや適正な運賃・料金の収受で収益をこれまで以上に確保していく。
――レンゴーでの経験を基に、経営で心掛けていることは。
本荘 品質向上と顧客との関係構築に注力した。清水工場(静岡市)から社会人の一歩を踏み出し、営業畑を軸に歩んできた。大口や地域の顧客との接点に重きを置き、価格交渉力や提案力を磨いてきた。同時に、品質を担保するため苦情の対応には細心の注意を払った。例えば段ボールでは湿度など環境によって発生する反りや汚れが挙げられる。一つ一つの積み重ねで信頼関係を醸成してきた。
付帯作業は再び見直し改善
――物流業界にも通じる話だ。
本荘 その通り。顧客へのあいさつ回りを通じて、当社への信頼は厚いと感じた。商品事故や誤った情報伝達は少なく、高い品質が信用の証し。この先、取り巻く環境がより厳しくなる中、顧客との関係を継続するためには改善すべき事象が残っている。
――具体的には。
本荘 業務効率化によって収益力を高めたい。ドライバーの労働時間や負荷につながる荷待ち、付帯作業はいま一度、洗い出した上で見直しや料金化を交渉する。例えば荷待ちの短縮により、トラックの回転率を高めることが視野に入る。資産の有効活用につながる。加えて、諸コストが高まる中、運賃・料金の適正収受は毎年求めていく方針。物流業界だけが価格転嫁できない、しわ寄せを受けることはあってはならないとの思いは社員と共有している。
賃上げ、完全週休2日目指す
――現場への思いがあふれている。
本荘 魅力ある職場環境の整備は社長の責任だ。賃金は約5%のベースアップを実現し、今後も継続する。さらに、ドライバーの完全週休2日制を実現するため、人材確保や業務の在り方など多くの課題はあるが挑んでいく。若年層を中心にプライベートを優先する傾向があり、年休の増加は欠かせない。
――中長期の売上高目標200億円は。
本荘 当然ながら維持する。25年3月期は単体で前期比4・9%増の156億円、連結で180億円だった。今期は中東情勢の不透明さに伴う在庫確保の動きで4月期が大きく上振れ、上期は前期を上回る見通し。投資では、厚木支店(神奈川県厚木市)が11月にも新築移転し、倉庫併設のターミナルとなる。拠点の集約や老朽化対策も進めていく。
――43年の創業100年に向けた展望を。
本荘 業界の社会的地位向上を目指す。レンゴーでは大坪清会長兼CEOの薫陶を受けてきた。レンゴーは「段ボール屋ではなく、段ボール企業だ」との意識付けの下、1兆円企業へと変貌してきた。物流はAIやロボット技術がどれだけ進展しても、人の手が必要とされる仕事。「われわれは運送屋ではなく、運送企業だ」という自覚が芽生えると、企業を大きく成長させる工夫が生まれると信じている。
記者席 継続は力なり
モットーは「継続は力なり」。レンゴーでは段ボール営業を長く務め、顧客との人間関係を重要視してきた。拡販に向けた提案力、価格交渉、クレーム対応とどれを取っても信頼関係が前提になる。顧客の企業規模を問わず足を運び、声を丁寧に拾い集めてきた。
物流業に転じたからこそ、業界の慣習にとらわれない視点で改善点に気付き、業界の社会的地位向上の必要性を感じる。将来的な輸送量減少、ドライバー不足、EC台頭による需要拡大を見通せば「物流は決してなくならない。成長するチャンスはある」。
コロナ禍を契機に始めた、毎日早朝4時半から早歩きする習慣を今も続ける。「朝から汗をかくと気持ち良い」小さな継続が大きな力になると体で実感。日の出を眺めつつ、トップとして新たな企業像を築き上げる覚悟だ。
