インタビュー
【 社長インタビュー 】
適正取引で基盤を強化 持続的な成長目指し
2026年10月06日
千代田運輸 水野 功 社長
千代田運輸(本社・東京都日野市)は収益力向上に取り組んでいる。取引先との適正運賃・料金交渉や、主力の自動車関連物流以外にも事業の幅を広げ、成長戦略を着実に推進してきた。水野功社長は「再生産可能な経営には営業利益率の向上が不可欠」とし、確保した原資を基に事業基盤のさらなる強化を目指す。
――経営環境は。
水野 トラック適正化二法の成立、行政の監視体制強化もあり、取引適正化に向けた追い風が吹いている。各種コストが値上がりする中、適正運賃・料金収受は一過性でなく、毎年継続しなければならない。
――取引先との交渉を粘り強く続けている。
水野 今年は特に燃料サーチャージの再設定に注力している。取引先に現状を丁寧に説明し、発動の基準値を3カ月に1度見直す内容に改めた。輸送協力会社からも運賃・料金の値上げ要請があり、元請けとしてしっかり払えるよう交渉を継続する。当面は顧客全体の8割で、別建て料金の導入を目標としている。
――2026年4~9月期業績の見通しは。
水野 上期は取引先の生産が堅調に推移した結果、増収増益となり、営業利益は一定の成果を残すことができた。下期は減産の可能性もあるが、さらなる成長に向けて取り組んでいく。
安定した製品供給が重要に
――増益要因は何か。
水野 今春、賃借していたチヨダロジスティクスセンター古河(茨城県古河市)を自社化し資金負担の軽減を図った。併せて、保有資産の選択と集中も行った。再生産可能な経営を続けるには営業利益率の向上が不可欠。DXなどにより現場の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、今後も間接費の削減を進めたい。
――自動車メーカーでは再編の動きが続く。
水野 現時点で大きな影響はない。重要なのは、再編後も各メーカーが利用する優れた物流インフラを生かし、安定した製品供給を続けること。当社としては完成車輸送、部品の保管・輸配送といったスケールメリットを期待したい。
館内物流など事業の幅広げ
――経営の課題は。
水野 深刻な労働力不足は大きな課題だ。キャリアカーのドライバーは高齢化し、運転以外に積み込みなどの専門知識が必要なため、人材確保に苦労している。また、車両も価格高騰に加え、一般のトラックと比べ納期がかなり長く、メンテナンスを行いながら使用期間を延ばしている。
――特定技能制度の活用はどうか。
水野 一時期検討はしたが、キャリアカーの場合はハードルが高い。住宅支援をはじめとする費用も想定される。当面は労働環境を充実させながら、特に女性ドライバーの採用を強化したい。
――事業領域の拡大にも取り組む。
水野 多くの産業で人手不足が発生し、今後も人材派遣事業は成長が見込める。近年強化してきた館内物流、イベント物流も着実に伸ばしており、新たな仕事にもチャレンジしている。
――具体的には。
水野 都内の大型商業複合施設に入居する取引先の依頼を受け、初めて海外美術品の輸送手配業務に携わった。商業複合施設ではさまざまな催しが開かれている。培ったノウハウを生かしながらイベント関連業務を増やしていけば、さらなる成長が期待できる。
――地元密着のサービスも見据える。
水野 高齢者の家事代行、遺品整理といったシルバーサポートサービスを視野に入れている。(近年利用が広がる)買い取り専門チェーンと連携することも手だろう。全てを自社で手掛けることは難しく、労働力をうまく分配しながら、新事業の展開も模索する。
記者席 「人」を第一に考え
長年、人への投資に重点を置いている。運送業界の中でも、完成車輸送の人材不足は特に深刻。世の中で輸送力不足が騒がれる前から運べなくなる時代の到来を見越し、労働環境改善に熱心に取り組んできた。
福利厚生充実の一環として、最近は新たな取り組みも始めた。専用の冷蔵庫・冷凍庫を設置し、総菜などを手頃な価格で購入できる設置型社員食堂を導入したところ、営業所の従業員から大好評。「試験的なものだったが、本格導入することにした」とうれしそうに話す顔が印象的だった。
多能工化をはじめ、これまで進めてきた社内教育も着実に成果が出始めている。安定的なサービス供給には人の力が不可欠。DXを通じて可能な業務は効率化しつつ、今後も人を大切にした経営を続ける。
