インタビュー
【 社長インタビュー 】
鉃道の不可欠性強く訴求 PRで荷主に「親近感」
2026年08月04日
全国通運 𠮷沢 淳 社長
全国通運(本社・東京、𠮷沢淳社長)は、顧客ニーズが高まる温度管理輸送をはじめとした鉄道モーダルシフト、31フィートコンテナ往復利用の促進へ営業活動を積極化している。半面、認知度向上も課題で、𠮷沢社長は「トラックドライバー不足の深刻化を見据え、鉄道が不可欠な輸送モードであることを訴求。利便性や長所のPRで幅広い荷主に親近感を持ってもらえるようにしたい」と語る。
――2025年度の振り返りを踏まえた事業環境は。
𠮷沢 25年度の全通系コンテナ輸送実績は前年度比4・7%増の829万1000トン。上期はリニア中央新幹線工事に伴う残土輸送や備蓄米関連の輸送もあり増勢が続いたが、下期は荷動きの鈍化や大雪の影響で下落に転じた。年度全体の実績はプラスだったが、残土輸送を除くと前年度を若干下回ったことは課題だ。
――今年度は。
𠮷沢 円安や中東情勢悪化による物価上昇、個人消費の低迷で全体的に荷動きが鈍く、回復感を見いだせない状況が続いている。改正物流効率化法の施行やドライバー不足を背景にモーダルシフトへの追い風が強まってはいるが、このままではいけないという危機感がある。
高まる温度管理輸送ニーズ
――厳しい中でも、鉄道に対するニーズは底堅い。
𠮷沢 トラック輸送力の確保に悩む顧客を中心に鉄道の利用は着実に進んでいる。特に高まっているのは長距離の温度管理輸送ニーズだ。地球温暖化に伴う気温上昇を背景に、これまで常温輸送だった製品を温度管理の下で運びたいというニーズも出てきている。
――今年度、31フィート温度管理コンテナを10基増備し計70基に。
𠮷沢 必要とする顧客の期待に応え増備を計画した。利用する顧客にとって持続可能な物流に欠かせない手段になっていると実感する。昨年からは三菱倉庫との連携で武田薬品工業の医療用医薬品の輸送を展開。鉄道で医薬品を適正な品質基準で運べることを実証した先駆的な事例で、他の医療関連企業からの引き合いも来ている。
――温度管理型を含む31フィートコンテナの運用効率向上への取り組みも強化。
港湾と円滑連携へ態勢強め
𠮷沢 収益性を踏まえ持続的に運用していくには、往復利用の促進が必要だ。帰り荷の確保に向け、当社の中核事業「モーダルシフト推進協議会活動」で顧客に呼び掛けるとともに、全国の支社や、幅広い顧客基盤を持つ全通系利用運送企業を通じた提案を強めている。
――鉄道輸送量の拡大には認知度向上が鍵に。
𠮷沢 生産年齢人口減少と高齢化進展で輸送能力の減退が懸念される2030年問題が迫り、ドライバー不足がさらに深刻化することを見据え、モードとしての不可欠性を強く訴えていく。鉄道を使ったことがない荷主には、選択肢に入れてもらうべく、鉄道の利便性や長所の理解を促し、親近感を持ってもらうことが大事。トラックの確保ができず物流面で不自由を感じている荷主のニーズを細かくつかんでいきたい。
――内航船活用を含む災害時対応の強化も図る。
𠮷沢 鉄道を基軸に安定した輸送を提供していくためにも、内航船社とのネットワークづくりは必要不可欠。船舶代行輸送がうまく機能するように、港湾管理者や港湾荷役企業と円滑に連携できる態勢を強めておくことも重要だ。災害による輸送障害で顧客を失望させないために、JR貨物グル―プと利用運送業界を挙げて対策づくりを進め、鉄道輸送の信頼性と魅力を高めていきたい。
記者席 「MSは手作り」
「モーダルシフトは手作りで実現していくもの」。顧客・利用運送企業・JR貨物が同じテーブルに着くモーダルシフト推進協議会を通じ、「試験輸送や関係者間の調整など地道な努力を重ねた先に結実する」。
鉄道輸送の認知度を高めるには、改正物効法で特定荷主に選任が義務化されたCLO(物流統括管理者)へのアプローチも肝要。温室効果ガス削減に貢献する環境特性も訴求し、「製品輸送だけでなく、原材料調達や静脈輸送を含むサプライチェーン全体の中でどう鉄道を組み込んでもらうか」。
トラック適正化二法に盛り込まれた適正原価の設定にも関心を寄せる。「トラック輸送のコストがどれだけ上がるかによっては、比較対象となる鉄道への追い風がさらに強まる可能性もある」
