インタビュー

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【 社長インタビュー 】

創業70年、未来につなげ 人材の礎整え、飛躍誓う

2025年06月24日

四国運輸 松本 俊一 社長

 四国運輸(本社・高知市、松本俊一社長)は1955年に創業し、まもなく70年の節目を迎える。地元・高知県をはじめ四国経済の発展を戦後の復興から今日まで支えてきた。松本社長は「経営理念に掲げる顧客第一主義、つまり地域貢献が事業の根幹」と語り、オンリーワン企業として歩み続け、次の100周年の未来に向かって新たな礎を築く。

 ――6月29日に創業から70年を迎える。
 松本 1955年に高知市知寄町で産声を上げ、昭和の激動の時代と共に事業が躍進した。平成の不況を乗り越え、令和という新たな時代まで高知県の発展と共に歩んできた。これまで特積み事業を軸に、貸し切り、医薬品、園芸品などを扱い、地元経済を支えてきた自負と誇りを持っている。
 ――顧客第一主義と従業員、関係者の物心両面の幸福を追求するという経営理念を掲げてきた。
 松本 輸送品質を高めることは当社の使命で、顧客の満足度につながり、今日まで継続的に事業を営んできた。単に荷物を届けることではなく、サービス品質の方針や目標を定めることで信用を担保するとともに、安全順守という社会的使命を果たすことは変わらない。

地場産業共に陸続きで変革

 ――振り返れば、四国と本州が陸続きとなった瀬戸大橋の開業は大きな転換点だった。
 松本 瀬戸大橋の開業は四国全体の悲願だった。88年の瀬戸中央自動車道の全線開通に合わせ、四国の玄関口となる香川県坂出市に「坂出物流センター」を開設。本州と四国のハブ拠点の機能を持つことで輸送効率が大いに高まった。同時に、四国に進出する小売りの3PLを受託し、運営ノウハウを培えた実績は今も生きている。
 ――青果物・花卉(かき)の扱いを源流に、医薬品と定温輸送は大きな柱。
 松本 県産の野菜や果物、花卉といった園芸品輸送は鮮度や品質を一定に保つため、保有する大型トラックの9割以上で定温機能を装備している。JA高知県と長年の信頼関係で醸成された輸送実績は強みの一つだ。その上で、約25年前から医薬品にも進出し、医薬品GDP(適正流通基準)に適合した品質は医薬メーカー、卸にも支持されている。2022年に坂出定温センター(坂出市)を整備し、四国向けの安定輸送に貢献している。
 ――共同化の先駆けとなった四国特積み「五社会」も見逃せない。
 松本 1994年の結成から30年超がたち、ターミナル、集配、幹線、情報の一元化、業務の安全確保の5項目で共同化に取り組んでいる。高知をはじめ四国は人口減少が避けられず、競争よりも協調することで、共同化を核に業界が抱える課題に一定の成果を収めた。各社の社長が当時、顧客情報を提供する英断を下した先見性は評価に値する。

挑戦する心と思いやり胸に

 ――節目を前に、売上高60億円の目標を突破し、〝次なる路(みち)〟を目指していく。
 松本 ドライバーの時間外労働規制を筆頭に取り巻く環境の厳しさは増すばかりだが、地元・高知県の経済を支えることは果たすべき命題と捉えている。そのため、人材の確保と育成は優先する投資だ。働きやすい環境を整えることは言うまでもなく、夢に向かって積極的に挑戦する心と顧客への思いやりをいかに醸成するかが重要になる。
 ――新テーマに「未来につなげる」を掲げた。
 松本 先人たちの血のにじむ努力で得られた教えをどれほど実践できてきたのか、今改めて自問自答している。この先、創業100年を見据えれば、礎となる体制づくりに真正面に取り組む覚悟を持つ、貴重な機会と捉えている。

記者席 変化を読む

 未来につなげる――。松本社長が掲げた創業100年を見据えたテーマだ。地域貢献、社員の幸福など、創業以来、堅持する理念は変わらない。一方、多様化する顧客ニーズ、度重なる法改正による体制の見直しといった時代に即した柔軟な変化が求められ、歴代の経営者は鋭い見識で乗り越えてきた。
 例えば、本四架橋の開通によってリードタイムの大幅な短縮が図られ、地域の経済規模は拡大した。半面、本州の企業が進出し、競争は激化。特積み五社会で編み出した共同化は、時代の先端を捉えた知恵だった。
 この先、取り巻く環境は、誰も経験したことがないスピードで変化すると見込まれる。そんな危機に直面する時こそ、これから重点的に投資する教育により、将来を担う人材が新たなサービスや戦略を生み出すのか注目したい。