インタビュー

【 社長インタビュー 】
前向き姿勢で次期中計へ 4社提携「着地点示す」

2015年12月15日
カンダホールディングス 勝又 一俊 社長
平成27年4~9月期、増収増益だったカンダホールディングス(本社・東京、勝又一俊社長)。全拠点黒字化を図る「業績改善運動」で赤字を大幅解消。国内外で相次ぐ拠点開設、新サービス開始など、姿勢は前向きだ。通期業績も予想通りを見込み、来期からの新中期経営計画へ歩を進める。2月に締結した中堅4社の提携関係も「実を結ぶため、何を目指すかを定めていく」(勝又社長)。
――4~9月期の経常利益は45%増益の7億円に。
勝又 黒字拠点だけで経常ベース10億円超の利益が出せている。赤字額は3億円に減らすことができた。「業績改善運動」がかなり進み、赤字拠点はまだ残っているが、黒字化のメドはほぼ付いた。もうひと踏ん張りだ。
――どんな施策を。
勝又 赤字拠点の業務拡大や効率化、料金値上げ・条件見直しの交渉など、一つずつ突き詰めて取り組んでいる。黒字化が難しい業務は解消も辞さなかった。採算が合うよう拠点の規模を縮めたケースもある。
――国内の業務開拓が好調だ。
勝又 上期は愛知県に4つの物流センター(小牧、豊川、岡崎、大府)を開設した。ドラッグストアに商品を供給する卸向け3PLの拠点だ。子会社のロジメディカルが手掛けている。
――10月には3つのセンターを相次ぎ開設。
勝又 千葉県の八千代センターと埼玉県の久喜菖蒲センターは食品卸の物流センターとして運営。群馬県伊勢崎市のセンターはドラッグストア向け3PL拠点。これらの業績が今期は半期分、来期はフルに寄与する見込みだ。
中国向け宅配サービス開始
――9月、子会社のペガサスグローバルエクスプレス(=PGE)がインドネシアに現地法人。
勝又 タイ現法はゼロから出発したが、インドネシアはPGEのノウハウや代理店機能を生かして開設した。ハリム国際空港近くに事務所を設け、航空輸入商材の緊急配送ニーズにも対応。今後はM&A(企業の合併・買収)も検討したい。
――課題は。
勝又 まずは赤字が残るタイ事業の収益性を今後1年ぐらいで改善し、インドネシアの事業を早期に軌道に乗せたい。
――新サービスも。
勝又 PGEが10月に中国向け宅配サービスを始めた。中国南方航空と現地宅配業者の円通と手を組み、日本の商品を中国へ売りたい通販事業者などの越境EC(電子商取引)の販路開拓を支援するものだ。
通期業績予想上回る可能性
――ニーズが高い。
勝又 EMS(国際スピード郵便)に比べ最大3割程度安く届けることができ、引き合いも多い。利益率も高く、今後が楽しみな事業の一つだ。
――2月に東部ネットワーク、高末、ヒガシトゥエンティワンと「日本物流ネットワーク協力会」を発足。
勝又 4社間の相互理解は深まりつつある。そろそろ明確な着地点を示していかなければ。いまも、各社の社長が集まり協議を続けている。
――通期は売上高350億円、経常利益13億5000万円を予想。
勝又 ほぼ達成可能だ。売り上げ拡大、業績改善運動の効果で予想を上回る可能性もある。
――来期から新しい中期経営計画が始まる。
勝又 策定はこれから。売上高500億円を目指した現中計の骨子を引き継ぐことになる。人材確保、労働環境改善を図るにも体力と規模が必要。売上高1000億円、経常利益率5%確保が将来目指すべき最低ライン。だが、自助努力では難しい。M&Aや4社提携の方向性が鍵を握る。
記者席 「働きやすい職場へ」
「長時間労働の改善は労使一致した喫緊の課題」。従業員の拘束時間を減らすには、省力化など効率的な現場運営が重要に。「手を打たなければ人が集まらなくなる。従業員の生活にしわ寄せを与えてまでこなす業務の在り方はおかしい」。
半面、時間外労働が減る分、従業員の給与も減ってしまう。「働きやすい職場づくりとともに、待遇改善についても考えなければ。そのためにはやはり企業体力と規模が必要」
デスクには「K.KATSUMATA」と掘られたインドネシア製のネームプレート。「ジャカルタにいるPGEの社員が送ってくれた」と笑顔。提携を結ぶ情報関連企業の社員からは似顔絵のプレゼント。「似ている」と照れながら、社長室に飾る。現場の従業員たちと同じ目線で向き合う姿勢は不変だ。
(略歴)
勝又 一俊氏(かつまた・かずとし) 昭和27年1月2日生まれ、63歳。大分県出身。49年大分大経卒、太陽神戸銀行(現・三井住友銀行)入社。平成17年カンダコーポレーション常務営業本部長兼サプライチェーン事業部長、19年社長、21年、持ち株会社制移行に伴いカンダホールディングス社長就任。(水谷 周平)