インタビュー
【 社長インタビュー 】
北地盤の強み前面に 新時代へDX推進も視野
2026年04月14日
第一貨物 越智 史朗 社長
1日付で、第一貨物(本社・山形市)の新社長に越智史朗専務が就任した。越智社長は、前職の三菱倉庫でサステナビリティー推進部門の立ち上げや、スタートアップへの投資を担うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)設立など「新たな取り組みを主導してきた経験を生かし、DX活用を含め新たな挑戦に取り組みたい」と話す。
――就任の抱負を。
越智 物流を取り巻く環境がかつてないほど激しい変化を見せる中で、山形市に本社を置き、東北エリアを地盤とする第一貨物の社長を務めることに、責任の重さとやりがいを感じている。
――自身の使命は。
越智 三菱倉庫時代、新組織立ち上げなど新たな挑戦を積み重ねた。経験を生かし、DXなど新時代に向けたバージョンアップに挑む。加えて東北では人口減を背景に市場縮小が見込まれるが、当社が東北の物流を最後まで担う覚悟で臨む。
――DXは特積み事業の強化にもつながる。
越智 DXでは例えば管理会計や事務処理の効率化、営業戦略立案への導入が挙げられる。AI活用については全てが正しいとは思わないが、合理化への貢献は大きい。属人的な業務を解きほぐしながら積極的に新技術導入を進め、特積み事業の収益基盤を強化していきたい。
サーチャージ全顧客展開へ
――足元では従業員の賃上げや軽油価格の急騰への対応が欠かせない。
越智 今春闘では集配ドライバーを中心に待遇改善を図った。社員の定着率向上は輸送品質の向上はもとより、外注費抑制にもつながる。軽油価格の高騰に対しては、燃料サーチャージ導入をさらに推し進める方針だ。
――燃料サーチャージでは、一部荷主で未収受や運賃に含める形で対応しているケースがある。
越智 多くの顧客が協力してくれているが、運賃に含める形で別建てになっていないケースが実際にある。その場合、米国・イスラエルのイラン攻撃を端緒とした予測不能な軽油価格急騰に際し、コストを速やかに転嫁できない。安定的な物流を維持するためにも、未導入の顧客を含め全顧客への展開を急ぐ。
――厳しい中でも今期は増収増益を計画。
越智 燃料コストについては少なくとも今期前半で、前年に比べ大幅な上昇が見込まれる。人件費や外注費上昇も含め、年間で相応のコスト増を織り込んでいる。物流業界の現状を丁寧に説明しながら、適正な運賃・料金を収受するとの姿勢で誠実に話し合い、コスト転嫁を推進する。
――引き続き、トラック事業の貸し切りや利用運送、ロジスティクス事業の拡大にも取り組む。
越智 貸し切りと利用運送は前期、夏場以降の荷動き悪化で物量が伸び悩む中でも取り扱いを伸ばした。またロジ事業での取り組みが実を結び、全事業では減益ながら一定の利益を確保できた。取り組みを強化しつつ、特積み事業でのさらなる採算性向上にも努める。
地域特有のコストも課題視
――荷主との価格交渉ではコストの見える化も理解を得る鍵となる。
越智 東北では例えば冬季の除雪費用や冬用タイヤなど、地域特有のコストが発生するが顧客からは見えづらい。こうしたコストへの理解浸透も適正収受に向け重要だ。
――業界の人手不足が深刻化する中、他社との協業拡大が必要に。
越智 トナミホールディングス、久留米運送との協業をはじめ、同業他社との連携をさらに深めたい。三菱倉庫との関係も強化する。輸送・保管や地方港を経由した輸出入など幅広い領域で、東北各地にネットワークを持つ当社ならではの提案ができればと考える。
記者席 今が踏ん張りどころ
「いずれどこかで反転する」。取材でのやりとりは、荷主との取引環境や物流従事者の社会的地位にも及んだ。「コストは上がり、人手不足も続く今が一番大変かもしれないが、じっと我慢してその時を待とう」と社員にも話しているという。
物流二法による1990年以降の規制緩和と過当競争、荷量減少の下、運賃が上がらず賃上げもままならない時代が長く続いた。だが物流効率化法や、トラックドライバーの適切な賃金確保を目指すトラック適正化二法の施行など、物流を巡る環境は今や変わりつつある。「エッセンシャルワーカーの在り方が改めて問われている」
「反転の時」を良い形で迎えるためにも、技術活用を含め手を尽くして基盤事業である特積みの強じん化と、さまざまな顧客ニーズに応え得る営業メニューの多様化を成し遂げることが求められそうだ。
