インタビュー
【 社長インタビュー 】
付加価値貨物、成長の核に 拠点整備で需要取り込み
2025年11月25日
姫路合同貨物自動車 藤田 弘一 社長
姫路合同貨物自動車(本社・兵庫県姫路市、藤田弘一社長)は主力の物流センター事業を強化している。この数年、積極的な投資を行い、複数の施設を整備。危険物や低温貨物、リユース・リサイクルを行う情報機器といった付加価値の高い貨物の取扱量を拡大し、さらなる成長につなげる。
――足元はどうか。
藤田 国内の荷動きは伸び悩んでいる。物価高騰による消費抑制や、米国の関税政策の影響が大きい。人件費、燃料費などの各種コストの上昇が続いている。また、コンプライアンス(法令順守)に対応した社内体制の整備も重なり利益を圧迫している。
――今後の成長戦略は。
藤田 物流センター事業で確実に結果を残すことが重要と考えている。特に危険物、低温貨物、使用済みのパソコン・タブレットなどの情報機器を安全・適切に処理する「ITAD物流」の三つの分野をターゲットとする。いずれも付加価値が高く、十分な運賃・料金の収受が可能で事業の成長の柱になる。
――どんな取り組みを進めるのか。
藤田 顧客から求められるサービス品質を担保することは簡単ではない。(危険物や低温貨物を扱うには)一般貨物と比べて一定水準を満たす施設整備やノウハウを構築することも不可欠になる。(その分)競合他社が限られ、差別化を図りやすいことが重視する理由だ。
――需要獲得のための準備の状況は。
藤田 この数年、小野物流センター(兵庫県小野市)を中心に設備投資してきた。2021年には同じ敷地内に「第3危険物倉庫」を、23年はセンターの隣接地に「第5危険物倉庫」を開設。EVや再生可能エネルギーの活用が広がり、バッテリー関連品を中心に引き合いが強い。25年5月の改正消防法の施行で、条件を満たした普通倉庫でリチウムイオン電池の保管が可能になったが、安全意識の高まりから、危険物倉庫での保管を望む顧客は多い。
低温では新たな取り組みも
――低温物流では新たな試みを始めた。
藤田 7月、当社初の冷凍に特化した「冷凍第1倉庫」を小野物流センター内にオープンした。既存顧客の事業拡大に対応し、冷凍食品の入出庫や保管、仕分け、流通加工とともに、大阪と兵庫を中心に約160カ所の小売店舗への配送も行っている。旺盛な消費が続いていることを踏まえ、今後も物量が膨らむと感じている。さらなる拡大に向け、兵庫県たつの市にも冷凍・冷蔵倉庫を新設し、26年度下期中に稼働させる。
長期経営計画の策定進める
――ITAD物流の状況はどうか。
藤田 主にリース会社をターゲットに情報機器を回収し、データ消去や整備・解体を行い再資源化を手掛けている。データの保護、環境負荷低減への取り組みが重視される中、IT資産を適正に処分できるサービスを求める声が強く、今年9月、東京都大田区に「東京ITADセンター」を開設した。既存の西日本PC集約センター(神戸市)で積み上げた実績とノウハウを生かし、強く訴求できると考えている。
――今後の成長をどう描く。
藤田 中核となる物流センター事業を重視した営業活動の推進が基本方針。危険物、低温貨物、ITAD物流の三つの分野を段階的に広げる。一方、経営環境が好転する兆しは見えず、人材育成やデジタル技術を活用した業務効率化などの課題も多い。今後は新たに長期経営計画を策定し、当社としての目標を明確にした上で、問題解消に取り組んでいきたい。
記者席 次世代を見据え
物流センター事業を主軸とした成長戦略を展開する姫路合同貨物自動車。高付加価値な貨物を重視する独自の取り組みを展開し、需要獲得を進めているが、「対応が必要な課題が山積している」と話す。
現在、優先的に進めるのは次世代を担う人材の育成。最新の技術や仕組み、事業に影響を与える法改正など経営を取り巻く環境は絶えず変化を続け、さらなる成長を目指すには「活発な行動力、新たな考え方を受け入れる柔軟性が特に不可欠」。
将来の経営幹部育成を目的とした独自の「ヒメゴ-マネジメントスクール」などを展開し若い人材が学び、成長できる体制を充実させ、活躍の基盤を整える。「策定を目指している長期経営計画の中でも、踏み込まなければならない重要なトピックスになってくる」と先を見据える。
