インタビュー

【 社長インタビュー 】
実運送の連携支援 強化 ハブ機能と災害対策柱に

2025年06月24日
日本自動車ターミナル 黒沼 靖 社長
7月に創立60周年を迎える日本自動車ターミナル(=JMT、本社・東京)。都内4カ所の公共トラックターミナルの運営を通じて、特積みをはじめ物流を支えるハブ機能の役割を長年果たしてきた。黒沼靖社長は「特積み企業のニーズに寄り添い、使い勝手の良い環境を提供していくことが一丁目一番地」と語り、災害対策や施設再開発と併せて、引き続き特積み事業を支えていく方針。
――2024年問題など事業環境への認識は。
黒沼 働き方改革に伴う24年問題は、物流に限らず、社会全体の問題と認識している。その中で24時間365日人々の生活や産業活動を支える物流業界で、輸送の担い手不足の問題が象徴的に表れた。当社の役割は、特積みを支える拠点として物流ハブ機能を十全に提供し、24年問題に取り組む物流業界にしっかりと貢献していくことだ。
共同輸配送をさらに円滑に
――24年問題の社会的影響はまだ顕在化していない。
黒沼 モーダルシフトや共同輸配送など、物流各社の並々ならぬ努力の結果だとみている。だが今後さらに手を打たなければ深刻な問題として顕在化するだろう。さまざまな機会を通じて物流各社の声に耳を傾け、当社としてできることに最大限取り組んでいく。
――長年、各トラックターミナルは共同輸配送の拠点となってきた。
黒沼 当社のトラックターミナルに入居しているテナントのうち20社超が共同輸配送に取り組んでいる。連携・協働をさらに円滑に行うために、建物の仕様、配置、動線などどのような施設環境であればいいのか。この思想の下、再開発を進めた板橋トラックターミナルは、施設を二層式バースにして敷地北側に集約したことで、合理的な動線となり、連携効率は格段に向上した。
――60年のノウハウを詰め込んだ。
黒沼 フルトレーラーも入れるようにして、ホームの柱は可能な限り減らした。セキュリティーや風雨・鳥害対策としてシャッターを整備した。快適に横の連携ができる、特積み企業のニーズに寄り添った施設になったと考えている。
噴火も想定しBCMを実践
――災害対策でも重要な使命を帯びている。
黒沼 当社の四つのトラックターミナルは、東京都地域防災計画に基づく広域輸送基地に指定されている。大規模災害時には緊急物資の受け入れ・積み替えのための拠点運営を支える立場から、行政や物流のプロを後方支援する役割を担う。ハード面では免震構造の採用や72時間対応の非常用自家発電設備を取り入れながら、ソフト面ではBCP策定にとどまらず、有事を想定した訓練、地震災害だけでなく風水害や噴火災害をも想定したオールハザード型のマニュアル整備など、BCM(事業継続マネジメント)を実践している。
――今後は地域との連携も必ず求められる。
黒沼 今後、地方公共団体との連携による地域の産業振興に資する施設づくりがますます重要になると考えられている。こうした流れを踏まえて、当社は筆頭株主である東京都との事業協力をさらに深めるとともに、経営の自立性も意識した新たな再開発の姿を模索していきたい。