インタビュー

【 大和物流 設立65周年~Open up DREAMS~・インタビュー 】
現場の力で進化する 新ビジョンで意識変革へ

2025年03月25日
杉山 克博 社長
大和物流(本社・大阪市)は2024年8月に設立65周年を迎えた。建設現場向けの重量物輸送を主軸とした総合物流サービスを展開し発展してきた。さらなる成長に向け杉山克博社長は「急速に変化し、多様化する物流ニーズに対応することが不可欠」とし、新ビジョン「Open up DREAMS―挑む、創る、未来をひらく―」の下、現場を中心とした組織体制の構築に取り組んでいく。
―設立65年を迎えた。
杉山 1959年8月に大和ハウス工業の物流部門として発足。建築・建材の輸送を中心に歩みを進めてきた。従業員の努力と協力会社に支えられながら事業を継続し、節目を迎えることができたと感じている。
―成長を続けてきた。
杉山 設立間もない頃から大和ハウスグループ以外の仕事も手掛けていたが、業務の3割程度にとどまり、長い間、大半がグループ内の仕事で占められていた。大きな転機は2009年ごろ、グループ外の業務が増加し、メーカー物流に依存していた状態から脱却した。国内各地で拠点整備が進み、現在に至る基盤が築かれた。建設現場向けの重量物輸送で磨かれた高い技術力と安全確保に向けた独自の活動が評価され、顧客獲得につながった。
―現在の事業環境をどう見ている。
杉山 燃料費、人件費などのコスト上昇が企業活動全般に影響を与えており、顧客への価格転嫁が欠かせないが、肝心の荷動きに勢いがない。そうした中、当社はこの数年、全国で拠点拡充に注力し、収益性が高い案件を獲得することで着実に体力をつけてきた。
―より本質的な課題にも目を向けている。
杉山 時代とともに急速に変化し多様化するニーズにどう対応し続けるかに問題意識を持っている。例えば半導体産業に関わる物流が注目を集めているが、技術発展や社会情勢の影響で顧客の事業環境が変化すれば、物流ニーズも大幅に変わることが想定される。半導体に限らず、あらゆる分野で先行きを見通すことが難しくなっている。
従業員起点に意思決定
―どう対処する。
杉山 既存の概念にとらわれることなく変化するニーズを捉え、必要とされるサービスを提案・提供できる組織にしていく。実現するには会社組織の在り方を変え、従業員の意識を改革していくことが不可欠だと考えている。
―変化の鍵は従業員。
杉山 これまで当社はトップダウン型の組織体制で成長を続けてきた。経営陣の意思決定の下、従業員は一体となって即座に行動を起こすことができるが、各地で多様な顧客を抱え、求められるサービスの内容も絶え間なく変わってくる。既存の体制のままでは対応は困難だ。顧客と接点のある現場から変化するニーズをキャッチし、さまざまな意見、工夫、アイデアを集約し、意思決定を行うフラット型の組織になること必要となる。
―新組織体制の構築へ企業ビジョンを策定した。
杉山 組織を変えるには従業員の意識改革に取り組む必要がある。新しく策定し4月1日に運用を開始する企業ビジョン「Open up DREAMS―挑む、創る、未来をひらく―」がその要となる。30年後の会社のありたい姿を示すもので「独自の価値で多様化する社会ニーズに応え、人と暮らしが輝き、夢ひろがる未来をひらく」との思いを込めた。
30年後ありたい姿描き
―「挑む」の意味は。
杉山 各現場で担当する顧客の特性に違いがあり、貨物の性質や量も異なる。輸送ニーズの流動性が高まっている中で、トップダウンで営業ターゲットを定めることは大きなリスクになる。また、従業員が受け身の姿勢のままでは、今後の長期的な成長は望めない。「挑む」には、顧客とのコミュニケーションを通じて情報をキャッチし自ら事業計画を策定し、積極的に挑戦する姿勢を示すことを会社として推奨・評価することで意識の変容を促す狙いがある。
独自の価値を「創る」
―独自の価値を「創る」ことも意識する。
杉山 物流サービスの主軸となるセンター業務では手順に従って作業することが求められる一方、近年はデジタル技術が発展し自動化が進んでいる。視点を変えると、機器を導入できれば、ほぼ同じ仕事が可能になり、同業他社との差別化が難しくなる。そこで従業員には、働く現場から差別化につながる独自の価値を自ら創ることを強く意識してもらいたい。鍵となるのは機械にはない人の創造力だ。今後も機器の導入を推進するが、引き続きセンター運営には多くの「人財」が携わる。日々の業務を遂行しながら、作業の動線や方法・手順を観察し、効率化や改善につながる斬新なアイデアを発案し実践してほしい。
―顧客に喜ばれ、会社が成長し、社会発展につながる。
杉山 現場を中心とした組織体制へと再編することで、物流ニーズが急激に変化する中でも、顧客の要望を的確に把握し課題解決に最適なサービスを提供することが可能になる。今後、新たなビジョンと共に成長し、社会の進歩に真に役立つ企業として、人と暮らしが輝き、夢がひろがる未来を拓(ひら)いていく。