インタビュー

【 社長インタビュー 】
代替、5年以内で検討 新船効果で業績好調

2017年09月19日
名門大洋フェリー 野口 恭広 社長
6月、名門大洋フェリー(本社・大阪市)の新社長に野口恭広氏が就任した。同社は、運営航路は大阪と新門司(北九州市)の間を1日上下2便運航する。ドライバー不足やコンプライアンス(法令順守)強化を背景に、トラックの航走実績は堅調に推移している。今後、船齢が15年を超えた現行船2隻の代替が焦点になる。野口新社長に抱負や戦略を聞いた。
平準化が鍵、土曜利用伸びる
――社長に就任した率直な感想は。
野口 重責を感じている。前任の阿部哲夫・現会長は業界の大ベテランで業務に精通している。社員を的確にリードできるよう精進するのみだ。
――3年前に商船三井から転籍した。
野口 入社後は主に旅客部門を担当した。フェリーは未経験の分野で戸惑ったがやりがいを感じた。新船が就航するタイミングだったので、現場の社員と交流を図りながら、問題点を洗い出し社内外の業務改善に努めてきた。
――平成27年に就航した「フェリーおおさかⅡ」「フェリーきたきゅうしゅうⅡ」は積載能力が増えた。
野口 29年3月期の売上高は約83億円。前期比で増収増益を確保できた。新船2隻の効果で、トラックの輸送量は前期比13%増の約17万台、旅客は同12%増の約47万人と当初の予想を上回った。同時に、燃料価格の低位安定が収益の底上げにつながった。
――海上輸送の需要は高止まりしている。
野口 トラック各社は労務管理の強化や長距離ドライバー不足の課題に直面しており、フェリー利用の問い合わせは多い。事実、漸減傾向だった有人車率はここ数年、上昇に転じ、28年度は約45%まで増え、今年度もその傾向が続いている。
――今期の見通しは。
野口 トラックの輸送量は平日はほぼ満載状態が続き、土曜日も平日比で8割を超えている。一方、日曜・祝日は同5割で、受け入れる余地がある。全体の輸送量を増やすには、週末の有効活用が鍵となる。輸送日程に余裕がある荷物を中心に週末利用を提案し、平準化をより進めなければならない。
――グループ会社・フェリックス物流との海陸一貫輸送には定評がある。
野口 フェリーはポートtoポート。実運送を担当するフェリックス物流との協業は大切な営業ツールだ。今後は顧客に一層寄り添った提案が可能かが成長するポイントになる。
大型化は必然検討課題残る
――現行船「フェリーきょうとⅡ」「フェリーふくおかⅡ」の船齢は15年が過ぎ、代替の時期が迫りつつある。
野口 現段階で決まっていることは何もないが、代替を前向きに検討したい。現行船2隻は全長167m、総トン数約9800トンで、いまの需要を考慮すれば供給不足気味。おととし就航した新船2隻(全長183m、総トン数約1万5000トン)のように大型化は必然だろう。だが、検討課題が幾つもある。
――具体的には。
野口 フェリーは一度就航すれば20年前後走り続ける。モーダルシフトはさらに進むと予想されるが、貨物の需要は慎重に見通す必要がある。長期的には、研究が進むトラックの自動運転、高速道路の料金体系の動向も需要変動の要因となる。さらに32年のSOx(硫黄酸化物)排出規制への対応も求められる。
――なるほど。
野口 さらに燃費の向上は新船建造で重要な要素となる。これらを考察し、5年のうちには代替する方向で検討を進めたい。
記者席 新しい息吹を
名門大洋フェリーは代々、親会社の商船三井とケイハンから代表を迎えるツートップ体制を敷く。商船三井から転籍し2年目に代表取締役に就任。満を持して、社長に就いた。
社員・船員は「プロ意識が高い」と一目置く。一方で、「フェリーは未経験」と、その視点を生かし、業務の見直しを提案することが自身の役割と積極的に動いている。
30年以上ぶりに大阪に赴任した。休日はウオーキング、サイクリング、ゴルフに没頭する。「仕事を忘れるほど、へとへとになるまで」。頭と心をリフレッシュし、新しい息吹をもたらす。
(遠藤 仁志)