インタビュー

【 インタビュー 】
人手不足、重大な課題 解消は改正物効法を柱に

2017年09月12日
国土交通省 川上 泰司 大臣官房参事官
この数年、倉庫業界では労働力不足が顕在化し、業務の生産性をいかに高めるかが一層重要になっている。今年度末に期限切れとなる倉庫税制の延長も焦点だ。国土交通省の川上泰司大臣官房参事官に、今後の倉庫行政の展望を聞いた。
――倉庫業の経営環境はどうか。
川上 国交省の営業普通倉庫21社統計を見ると、最近は入出庫高・回転率ともに特段の変化はない。内閣府による月例経済報告の指標も緩やかな改善傾向にある。eコマース(電子商取引)の成長、既存施設の集約などを背景に物流不動産の建設は続いているが、営業倉庫各社の経営は安定して推移している。
◆荷主協力も不可欠
――課題は。
川上 将来を見据えた労働力不足の対応が課題だ。新たな総合物流施策大綱では、人手不足の中で「いかに強い物流をつくるか」を最大のテーマとした。今後予定される残業上限規制で、倉庫は一般職と同じ年720時間が適用される。課題解消に向け、国交省としても生産性向上につながる取り組みを推し進めたい。
――どんな取り組みが重要なのか。
川上 例えば一部物流企業で始まった技術開発の動きを広げ、労働集約型産業からの転換を図ることが重要だろう。現状では技術、コストといった課題があり、関係省庁と物流革命につながる技術開発を支援したい。荷主から協力を得ながら、労働環境を改善していくことも必要になる。
――具体的には。
川上 食品業界では(即席麺など日持ちのする商品で)賞味期限表示を年月日から年月に変更したり、生産を平準化したりする動きがある。こうした動きが普及すれば、倉庫も商品の入出庫をより柔軟に対応できるのではないか。また日本倉庫協会に対しては、トラックの生産性向上につながる独自の自主行動計画を検討してもらっている。
◆倉庫税制延長に全力
――生産性向上には昨年10月施行の改正物流総合効率化法を通じた取り組みも不可欠。
川上 総合物流保管施設(物効法認定の対象となる保管施設)にトラック営業所の併設、または車両予約システムを導入する取り組みを総合効率化計画に認定し、生産性向上を推進している。9月1日時点の認定件数は14件で、年30件の目標達成は難しい。一方、予約システムのラインアップも増えており、普及に向けた対策を進めたい。
――今年度末には倉庫税制の期限が切れる。
川上 輸送と保管機能の連携を図る認定施設に特例措置を与える倉庫税制は、効率化と省人化を目指す上で重要なツール。倉庫各社の要望も強い。フォークリフトで使用する軽油引取税の免税措置と合わせ、来年度以降も延長できるよう粘り強く交渉していく。
――物効法認定計画を増やすことが重要に。
川上 現在、日倉協が物効法認定取得相談室を設置しており、連携を深めたい。地方運輸局が主催するセミナーでは、倉庫だけでなくトラック協会にも制度の認知を広げていく。