インタビュー

【 社長インタビュー 】
変化に先駆ける 長大車両で課題克服

2017年08月29日
日本梱包運輸倉庫 大岡 誠司 社長
日本梱包運輸倉庫(本社・東京)は車両の長大化を推進し、得意分野の自動車部品物流に長尺物を組み合わせ輸送の効率化を図る。6月に就任した大岡誠司社長は「原理・原則を重視し変化に対応した経営を大事にする」と話し、ニッコンホールディングスの他の事業会社との協業を通じHDの収益目標達成に貢献する。
――経営上大事にしていることは。
大岡 5現(原)主義だ。人と設備を抱える実業会社の自負から、いわゆる3現主義の現場・現物・現実をまず重視する。ただ、昨今の法規制や規制緩和の変化を考え、3現主義の前提に、変化に先駆けて対応する原理・原則がないと経営が成り立たない。3現主義に原理・原則を足して5現(原)主義を大事にしている。
――事業環境どう見る。
大岡 人口減少を背景に国内市場は縮小傾向、自然減はあっても自然増はない。この環境は改善しないと認識している。
――生き残るためにどうするか。
大岡 労働力不足と規制強化の中で、安定的な利益を確保できる事業体質の構築と、地域社会との共生を両立する。他社に先駆けた技術、差別化された物流サービスの提供がポイントになる。
――労働力不足への対応は。
大岡 女性や高齢者が働きやすく、働き続けられる環境をつくる。物流は男の職場という考え方がまだある。福利厚生を改善できた事業所では女性の雇用が拡大している。フォークリフト作業員の半数以上が女性というケースもある。人事制度の見直しも必要だ。
――サービスの強化については。
大岡 ドライバー不足や環境問題など物流業界が対処すべき問題を解決してこそ、差別化できるサービスとなる。そのために輸送、保管、こん包事業を一貫して行うビジネスモデルを進化させる。車両や拠点など社内設備と蓄積したノウハウのフル稼働で売り上げを拡大し、利益を確保したい。
――21mフルトレーラーの活用の狙いは。
大岡 特積み企業が避ける1トン前後の少量・変形のいわゆる長尺物をターゲットの一つにしている。車両が長大化しても重量規制が緩和されない一方、容積は確保できる。そこで得意分野の自動車部品物流に長尺物を組み合わせたいというのが狙いだ。
――長大車両にも課題が。
大岡 積み込みや降ろし場所の環境整備だ。3年前から取り組んでいたこともあり、荷主の認知が浸透してきた。駐車スペースの確保などドライバーによる積み降ろしを考慮してもらえる例も出てきた。休憩場所についても、国交省や高速道路会社に申し入れ、効率化を図る最適な物流網を形成していきたい。ドライバー不足は、今後より深刻になるので、主要幹線で同業他社とも協力して取り組む余地は十分にあると思う。
――ニッコンHDの他の事業会社との協業について。
大岡 これまで日梱の車両や拠点での荷主への業務提案が中心だったが、国内41社、海外28社のグループ事業会社と250の事業拠点がエリアの垣根を越え車両や倉庫などの利用を含めた総合的な提案がこの1~2年で功を奏し始めた。
――今期の目標は。
大岡 ニッコンHDの目標売上高1860億円、営業利益184億円の達成に貢献したい。前期までの投資で稼働し切っていない拠点など設備投資の刈り取りに、全社一丸で取り組む。
記者席 1日の大切さ
「地に足を着けた事業を行う。グループ会社内にノウハウがある事業を未着手の他の事業所に展開したい」とホールディングス全体の均衡ある成長を意識する。
通勤時間の読書が趣味。最近は時代小説の藤沢周平シリーズを再読している。「1日の時間の長さのいまとの違いは、時代小説を読んでいるとよく分かる。憧れるわけではないが、昔の人は1日を大事にしていたのかな。1日の大切さを知るには時代小説は良い」
本は中古でも買って読む。借りると読み方が雑ぱくになるという。
好きなスポーツはタイへの赴任をきっかけに始めたゴルフ。足は第2の心臓なので、衰えてはいけないと健康にも配慮。1日8000歩以上歩くことを心掛けている。
(鈴木 洋平)