インタビュー

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【 社長インタビュー 】

新門司-神戸航路2隻 平成32年夏までに代替へ 

2017年08月01日

阪九フェリー 小笠原 朗 社長

 阪九フェリー(本社・北九州市、小笠原朗社長)が「いずみ」「ひびき」(新門司―泉大津航路)を建造して2年が過ぎた。小笠原社長は効果に手応えを感じており、来年で船齢15年を迎える残り2隻「やまと」「つくし」(新門司―神戸航路)の代替を「できるだけ早い時期に」と話す。東京五輪が開催される平成32年夏までには実施したい考えだ。

2年前新造船効果に手応え

 ――平成29年3月期の業績は。
 小笠原 減収減益。運賃収入は前期比2.9%減の87億6000万円だった。燃油(C重油)価格の下落に伴う調整金(燃料サーチャージ)の値下げと、昨年4月に起きた熊本地震の影響が主な要因。ただ前の期の業績を考慮すると、悪くない数字だ。
 ――平成27年に就航した「いずみ」「ひびき」の新船効果は。
 小笠原 28年3月期の一般旅客数は前期比34.0%、団体客数は同15.8%、乗用車数は同21.1%増えた。29年3月期は熊本地震の影響で団体客が前期比16.9%減ったが、単価の高い一般旅客は同3.5%減にとどまり乗用車は横ばいだった。フェリーをホテル仕様の上質志向にしたことがプラスに働いた。船旅の良さが浸透してきているのではないか。
 ――貨物部門は。
 小笠原 非常に好調。いずみ、ひびき両船は大型化でトラック積載台数が40台ずつ増え、昨年度の航走台数は20万台の大台を突破した。ドライバー不足と労働時間短縮の問題でフェリーを使う陸運会社が増えており、いまはシャーシ無人航送より単車の有人車率の方が伸びている。平日は満載状態が続き、ニーズに応えられていないと感じている。
 ――トラック航走台数を増やす施策は。
 小笠原 荷物が集中する平日とそうでない週末を平準化すれば、トラックの航走台数は増やせる。無人シャーシを使う顧客に週末運賃の割引を提案し、平日利用の一部を週末に振り替えてもらう交渉を進めている。空コンテナの輸送を週末便に回してもらうことなどが該当する。
 ――空いた平日枠の割り当て先は。
 小笠原 主に増加傾向にある有人車。有人車利用の陸運会社は年間240日の契約で1日3~5台の枠を確保したいといった声が多いが、これを年間360日の契約に変更してもらい、代わりに平日枠を優先的に割り当てていく。無人シャーシと有人車の需給関係を見極めながら、適正運賃の収受につなげる取り組みでもある。

「できるだけ早い時期に」

 ――「やまと」「つくし」の2隻は来年で船齢15年を迎える。新造船の計画は。
 小笠原 いずみ、ひびき同様、瀬戸内航路で最大規模となる総トン数1万6000トン級の大型フェリーへの代替を考えている。できるだけ早い時期に実現し、トラック航走台数を増やして陸運会社のニーズに応えたい。ただ、平成32年のSOx(硫黄酸化物)排出規制を控え、A重油など適合油を使う船にするのか、C重油から排出されるSOxを取り除くスクラバー(脱硫装置)の設置で対処するのかなど検討課題はまだある。
 ――新船就航の時期は。
 小笠原 先述の通り、2年前に就航した2隻の新船効果に手応えを感じている。東京五輪が開催される平成32年は海外観光客の需要を含め、フェリーの利用度が高まると予測される。同年夏までにやまと、つくし両船を代替する方向で考えたい。
 ――いつまでに決める。
 小笠原 SOx規制への対応など課題を整理し、年内には新船就航の時期を固めたい。

記者席 足元に、着実に

 「足元には着実にニーズがある」と新造船に意欲。2年前の「いずみ」「ひびき」2隻の大型化が奏功し、トラック航走台数は代替初年度1.3%にとどまったが、平成29年3月期は20万台の大台を突破した。「今年度も流れは続いている」
 「フェリーは公共輸送機関。人命と顧客の大切な財産を扱っている。その役割は重い」。天候不良など非常時の対応では「社員は何も言わなくても動いてくれる。頼りになる」と評価。近年、社員の積極採用を進めるが、「福利厚生を含めて待遇は悪くないのに、他業種に目移りしてしまう若者がいる」とも。
 この2年はゴルフに熱中。「こんなに気持ちの良いものだと再発見。個人の成績を点数化できる競技が意外と好きかもしれない」

(丸山 隆彦)