インタビュー

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【 社長インタビュー 】

適正収受、欠かせない 同業と連携 必要な時代 

2017年07月11日

岡山県貨物運送 遠藤 俊夫 社長

 6月28日、岡山県貨物運送(本社・岡山市)の社長に就いた遠藤俊夫氏。業界ではドライバー不足、労働時間の短縮といった課題解決が急がれる一方、ヤマト運輸の総量抑制を巡る報道で運賃値上げの機運が高まりを見せている。激動の時代に、遠藤社長は「適正運賃の収受が欠かせない」と強調。同業との連携強化も「必要性を感じている」と話す。

 ――6月、社長に就任。
 遠藤 運送会社は公共道路を使って仕事を行う。事故撲滅が最優先。その上で輸送品質を磨く。結果的に売り上げ、利益が増える。経営の基本は変わらない。だが、やり方はいろいろある。
 ――平成29年3月期の売上高は前期比0.5%増だった。
 遠藤 予測通り。物量は消費税8%への増税後から徐々に回復。当社は運賃値上げも5年前から実施してきた。今期の売上高は前期比1.1%増を見込むが、ヤマト運輸の一連の報道により、交渉が難しかった顧客も理解を示し始めた。追い風はある。
 ――輸送能力に対する現状認識は。
 遠藤 当社は幹線便の自車率が高い方だが、ドライバー不足が厳しさを増してきた。毎月3500~4000本(5トンコンテナ)ほど利用している鉄道コンテナを増便したり、トラック幹線輸送の効率化を図ったりしていく。
 ――減車している。
 遠藤 政策的な意図がある。昨年10月から営業車両全車に任意保険をかけた。保険料は1台当たりで加算されるため、保険総額を抑えるために減車した。昨年は軽井沢スキーバス事故、山陽道のトラック事故が続発。保険加入はリスク回避が目的だが、ひとたび事故を起こすと当該事業所の担当者が事故処理に追われ、本業が手に付かなくなる。事故処理は保険会社に任せた方が効率的。人手不足の影響を考慮した対応でもある。

手薄なエリアカバーし合う

 ――少子化で特積みも安穏としていられない。
 遠藤 今後は過度な物量は望めない。同業同士でシェアを奪い合う時代ではなくなった。西濃運輸さんと福山通運さんが手を組むなど、以前では考えられないことも起きた。当社は中国5県、近畿地区が主な事業エリアだが、東北地方を地盤とする第一貨物さんとは昔から手薄なエリアをカバーし合っている。同業との連携をより強めていく必要がある。
 ――拠点を増やす考えは。
 遠藤 現在80カ所ほどで、当面この水準を維持する。強化エリアは東名阪。同業との連携を踏まえ、輸送品質の維持・向上に努めていく。

若者集まる魅力ある会社に

 ――どこを強化する。
 遠藤 引き続き3PLを強化したい。6月19日に総社主管支店敷地内に製薬会社1社専用の物流センターと危険物倉庫をしゅん工した。9月から稼働する。きめ細かなサービスで、顧客からの信頼を厚くして安定経営につなげていく。また引っ越しは前期、売上高が9%増。特積みの資源、ノウハウを活用すればまだまだ伸びる。
 ――時短への対策は。
 遠藤 集荷時間の遅延はドライバーの残業に直結する。荷主には1時間でも早い出荷をお願いし、遅くなる場合、残貨になることもあると伝える。行き過ぎた早朝配達についても、改善を進めている。
 ――労働時間が減るとドライバーの稼ぎが減る。
 遠藤 まずはいまの給与水準を維持することが肝要。そのためには運賃アップが不可欠だ。人口減少社会で若者も減る。魅力ある職種にするために、業界も本気になって考える必要がある。

記者席 色紙に〝和而不同″

 「おやじもオカケンで働いていた」。大学4年の夏ごろ、就職先を探すため学生課に顔を出すと、掲示板に岡山県貨物運送の求人票が1つ。「深い考えもなく入社した。おやじにも相談していなかったから、後になって驚いていた」
 好きな言葉は「和而不同(和して同ぜず)」。平成6年、本社から広島支店への異動が決まった際、当時の三宅高志会長が色紙に書き、手渡された。「厳しく当たる時は鬼になれ、優しくなる時はこれ限りとほめよ」。その教えは「身に染みた」。色紙はいまも家に大事にしまっているという。
 趣味はゴルフ。愛犬家で、7歳の黒柴犬タロウは「僕が帰宅して玄関を開けたら、狂ったように抱きついてくる」のだとか。

(略歴)
 えんどう・としお=昭和21年8月4日生まれ、70歳。岡山県出身。昭和44年岡山大法文卒、岡山県貨物運送入社、平成14年取締役、17年常務、19年専務、28年副社長、29年6月社長就任。(丸山 隆彦)