インタビュー

【 インタビュー 】
公益に寄与し地位向上へ 広域で災害対応を

2017年05月23日
関東トラック協会 千原 武美 会長
平成32年に東京オリンピック・パラリンピックを控え東京を中心に首都圏の経済が活性化している。業界では、人材不足が顕在化。長時間労働削減や法令順守も改めて課題に挙がっている。昨年就任した千原武美関東トラック協会長は、「災害対応など社会の役に立つ事業を通じ、業界の地位向上に努めたい」とする。
――関東の足元の景気は。
千原 東京五輪を平成32年に控え、若干景気の回復が見られる。東ト協の27年度の経営分析調査報告書でも黒字企業の割合が調査開始以降初めて5割を超えた。
――荷動きの活発化で人材不足が一層の課題に。
千原 多くの会員がドライバー不足、人材不足に悩んでいる。解決には業界やドライバーの地位向上が欠かせない。誇りを持って働けるようにすることが重要だ。
――就任以来、業界外へのアピールを強化している。
千原 一般消費者に業界の役割を周知することが、ドライバーの社会的地位向上の鍵だ。切り口の一つとして昨年12月、東京都に対して「緊急輸送支援システムの再構築」を提案した。
緊急輸送の主役はトラック
――どのようなものか。
千原 緊急輸送の主力はトラックだ。だが首都直下型地震では、道路の陥没や家屋の倒壊で、相当の交通障害が発生するだろう。従来想定していた海や川からの物資輸送は非常に困難になる。
――新たな方策が求められている。
千原 そこで関東一円を網羅する圏央道沿いに、広域防災拠点として平屋の倉庫を建設して都内や関東一円に集荷・集積することが効果的だ。
――そのための準備も進めている。
千原 震災は、東京のみならず千葉・神奈川・茨城など関東のいつどこで起きても不思議でない。また、その危険性も年々切迫している。関ト協に参加する1都7県のトラック協会長は、災害時に各ト協が相互応援をして、都民・県民の命を救うことは、重大な使命であるという強い意識を抱いている。そのため、本年9月の事業者大会の時に各協会長が協定を締結する予定だ。首都直下型地震では、輸送を担うトラック事業者も関東で3割近くが被災する可能性もあり、広域での連携が欠かせない。
――暮らしを支える使命を持った業界。
千原 広く世間に周知する。同時に、荷主には業界が維持存続できるように適正運賃収受を求めたい。業界の抱える課題を解決するためには、荷主の理解が不可欠だ。関ト協一丸となって取り組みを進めたい。
(略歴)
ちはら・たけみ=昭和22年4月17日生まれ、70歳。西多摩運送会長兼社長。東京都トラック協会評議員、理事を経て平成24年5月に副会長に就任。適正化事業指導委員長・近代化基金運営委員長を歴任。28年東京都トラック協会長、関東トラック協会長就任。