インタビュー

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【 社長インタビュー 】

物量確保へ提携も視野 事故は風化させない 

2017年03月07日

四国運輸 石本 修也 社長

 四国運輸(本社・高知市、石本修也社長)は、路線から貸し切り、定温といった総合物流サービスを提供する。長引く景気低迷で輸送量の減少が続く中、石本社長は現状に強い危機感を抱き、「事業者との新たな業務提携も視野に入れる」とする。安全対策、人材確保など今後の戦略を聞いた。

 ――現況をどう見る。
 石本 平成28年3月期は黒字を計上したが、あくまで燃油費下落の恩恵を受けたもので今後を危惧している。物流業はボリュームと密度が重要。長引く景気低迷で特にボリュームが減少し、収支バランスが崩れてきた。例えば流通チャネルの変化で大手量販店は独自の物流を構築し、従来の物流網を利用しないケースが多々見られる。
 ――打開策は。
 石本 ボリュームを増やすため、(伊予商運、宇和島自動車運送、四国高速運輸、三豊運送と共同配送で協調する)「5社会」以外の事業者との提携を深めることは十分視野に入る。県内津々浦々に張り巡らせたインフラの強みを生かし、到着貨物の増加を図りたい。

値上げ難航も定温輸送強み

 ――一方、密度を高めるには。
 石本 運賃値上げは取り組んでいるが環境は厳しい。他地域では値上げの成果が表れているようだが、(県内の)荷主は依然運賃・料金の安さで選ぶ傾向が少なくない。
 ――それでもアプローチは必要。
 石本 強みを顧客に訴えなければならない。例えば当社では、荷物の積み残しは絶対に発生させない「完配主義」だ。顧客からの信頼を運賃値上げに結び付けたい。
 ――定温は得意分野。
 石本 高知県産の野菜、果物、花卉(かき)といった園芸品輸送は鮮度や品質を保つため定温機能が必要。保有する大型トラックの9割以上は定温装備で、付加価値を高め顧客ニーズに対応してきた。定温輸送のノウハウを活用し、医薬品輸送にも注力している。

細部まで検証点呼を重要視

 ――安全・安心といった社会的使命を担う。
 石本 安全対策には自信がある。国際認証のISO9001(品質)、14001(環境)を全事業所で取得。全従業員を対象に、職場安全衛生教育を月ごとに本社で実施。ドライブレコーダーや監視カメラで記録された実例を基にした指導教育、ヒヤリ・ハット報告や顧客からの苦情・称賛の共有を行っている。
 ――その思いとは。
 石本 一つの事故を風化させないため、事後の検証を細かく行う。路上事故、故障、高額荷物事故、労災事故が起きれば職場安全衛生委員会の下、個別検討会を開催する。当事者、同僚、責任者が集まり、経緯を事細かに分析。議事録は本社、各営業所で共有される仕組みを整えた。
 ――事故をどう防ぐ。
 石本 毎日、始業前に通達を出す。「昨年のいまごろはこのような事故が発生した。はやりの事故」といった内容。ドライバーは点呼時に指導を受け、必ずサインする。結果、重大事故は大きく減った。だが、軽微な事故の減りは鈍い。
 ――ドライバー不足の中で、人材の確保は。
 石本 ドライバーの平均年齢は52歳を超え高齢化が著しい。高卒採用に注力している。スキルアップの明確化で、今春から中・大型運転免許の取得費用の一部を支援する。こうした取り組みは県内ではまだ少数。若年層確保に向け大いに期待している。同時に、インターンシップの受け入れも強化したい。県・市など行政機関、地元の学校とも協力しながら、若年層の確保を進めたい。

記者席 歩みは臨時社員から

 平成2年、臨時社員で入社した。路線、園芸貨物といった現場業務に携わり1年後、正社員に登用。社長はこれまで創業家一族や金融機関出身者が務めたが、25年、異例の人事で抜てきされた。プロパーで現業経験者は創業初だった。
 取締役会では一番の年下。若さと行動力を武器にいまでも営業の最前線を走る。一方、事業の継続、発展に必要な人材の確保には頭を悩ませる。地元高知県でも人材確保は難しくなっている。募集広告では、コーポレートカラーの黄色を際立たせ、県内でまれな免許取得費用の一部助成、インターンシップの強化を打ち出す。
 若手社員に対する熱い思いも。自らの経歴を示し、「努力すれば役員、社長に出世できる」と激励する。

(略歴)
 いしもと・おさや=昭和39年7月19日生まれ、52歳。高知県出身。58年高知学芸高卒、平成2年四国運輸入社、19年営業部長、25年社長。(遠藤 仁志)