インタビュー

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【 社長インタビュー 】

「物流業務支援会社」へ 創立50年機に新段階

2016年08月09日

東京団地倉庫 髙橋 久夫 社長

昭和41年の会社設立以来、都内4事業所(平和島、板橋、足立、葛西)での倉庫施設提供を通じ、首都圏の物流を支えてきた東京団地倉庫(本社・東京、髙橋久夫社長)が12日、50周年を迎える。次の50年に向け新しいステージへ。「これからは施設提供の枠を超えた〝物流業務支援〟を前面に押し出したい」と語る髙橋社長に、今後の経営ビジョンを聞いた。

――50周年の抱負は。
髙橋 社長として大きな節目を迎えられることはまたとない巡り合わせだ。この機に会社設立の理念を改めて見つめ直した上で、次の50年に向かって、当社の役割をさらに深化させていきたい。
――具体的には。
髙橋 設立以来、当社施設は倉庫業者自身が倉庫業を営むために用いることを基本原則としている。都区内の大規模な共同倉庫はテナント各社がそれぞれ倉庫業務を行うためのものであり、いま一度この原点に立ち戻り、株主・テナント各社に基本原則を再認識してもらうことが重要だ。昨年策定の中長期経営指針にも「基本原則の再確認」と「施設運営ルール整備」を明記した。
――施設の再整備も大きなテーマ。
髙橋 既存施設はこのまま使用しても新耐震基準に適合しており、良好な維持管理により引き続き長期間使用が可能だが、物流ニーズの変化に応えるには再整備が不可欠。今後は機能充実を図り、ランプウエー方式の採用も踏まえた建て替えを検討したい。テナント各社の事業展開、集客のしやすさを追求することが再整備の基本姿勢になる。
――次の50年へ役割をどう深化させる。
髙橋 安全性と利便性に優れた施設とサービスを競争力のある賃料で提供し、設備保全に努めることは不変の使命だ。さらにこれからは単なる施設提供会社から「物流業務支援会社」へとステップアップを目指す。テナント各社の困り事や要望に耳を傾け、サポートする取り組みを第二の使命として本格化したい。目下、当社業務・企画部門が中心になり、各事業所でテナント各社と活発な意見交換を行っている。

かゆい所に手が届く支援を

――支援のイメージは。
髙橋 テナント各社のかゆい所に手が届き、「さすが東京団地倉庫」と評価される取り組みを進めたい。倉庫会社が共用する当社施設の特色を生かす観点でいえば、荷役や配送、パート・アルバイト雇用の共同化など、各テナントが個別で行うには負担の大きい取り組みを当社が仲介して支援することも考えられる。
――具体的な取り組みも始めた。
髙橋 板橋事業所では、ウェブを通じて各社間で空きスペースの情報をやり取りできる仕組みを整えた。あるテナントで貨物があふれて別に保管場所が必要になった際、情報交換を通じて当社の他のテナントの空きスペースをうまく活用してもらえば、貨物を他方面の倉庫に分散させず効率の高いサービスが可能になる。

次世代担う新卒採用積極化

――きめ細かい支援を行うには人材育成も重要。
髙橋 当社は自社一貫で施設の管理・保全を行う「直営保守」が強みだ。直営保守も物流業務支援も基盤は「人」。これまで中途採用で人材を確保してきたが、今年から新卒者の定期採用活動を開始。今後も新卒採用を続け次世代の戦力として育てていく。社員の多能工化を図り、部門間の人事交流も積極化したい。
――人材で差別化を。
髙橋 そうだ。50年で培った強みと独自性を人材の力で強調させていきたい。各テナントの懐に入り、血の通った物流業務支援を当社の優位性として確立させ、倉庫業界の発展を支えていく。

 

記者席 「団地イズム」育む

「新しい戦力に“団地イズム”を植え付けたい」。団地イズムとは、テナント各社によりよい事業環境を提供していく企業文化のことだ。「物流業務支援会社」としての確かな歩みを、次世代に託そうとする思いは強い。
現在、株主103社のうち、53社がテナントとして都内4事業所に入居。その多くは中小の倉庫業者。倉庫業界は二極化が進み、本業だけで経営が成り立たない中小事業者も少なくない。「業界が勢いを盛り返すためにも、物流業務支援を押し進めることが必要」。単独では困難なことも、各社が力を合わせれば解決の糸口を探ることができる。設立以来貫く「協同組合的」な会社運営の重要性は増している。「まずは小さな支援から始めることが大切」。物流業務支援は業界を元気にする希望の種だ。

(略歴)
たかはし・ひさお=昭和26年3月22日生まれ、65歳。50年明大商卒、辰巳倉庫(現・ヤマタネ)入社、平成13年関東支店営業部長、19年取締役国際本部長、26年常務。26年東京団地倉庫社長。(水谷 周平)