インタビュー

【 社長インタビュー 】
強みの建材物流を軸に 規模拡大へ積極果敢

2016年08月02日
NBSロジソル 河野 逸郎 社長
NBSロジソル(本社・大分県日田市)の河野逸郎社長は昨年4月の就任直後に、組織の見直しに着手。意識改革のため社員とのコミュニケーションも積極的に行った。得意の建材物流を軸にIT(情報技術)への積極投資で効率化を図り、顧客と従業員の満足度を高める準備を進める。河野社長は「規模拡大に向け積極果敢に取り組む」と話す。
――社長就任から1年3カ月がたった。
河野 難しさと手応えを感じた。40年来取引がある住宅設備メーカーなど顧客に恵まれている一方、当社を含め物流業界はITによるシステム化が遅れている。逆を言えば、まだまだサービスレベルは上げられる。効率化で従業員の給与、やりがい、職場環境も良くなる。そのためにまず、硬直化が見られる組織体系を見直した。
――新体制とは。
河野 関東・中部・関西・九州の独立採算的な支社体制から、営業・業務・国際・管理本部の機能別の事業本部制に改め、各事業の推進力を強化して専門性を高めることを狙った。規模拡大を目指すには全社一丸となる必要がある。役員に年商120億円を4支社×30億円で稼ぐ会社がいいか、それとも120億円の会社がいいか聞いたことがある。返答は後者の方だった。
――会社一丸で成長を目指す。
河野 そのためには社員の意識を変える必要があった。私から毎月1回全社員にメッセージをレター1枚分に込めて発信した。「思いを一つに心を一つに、期待を超える感動を」というスローガンも打ち出した。全国の営業所に赴き従業員と面談する中で、組織の一体感は高まっていると感じている。
IT活用で差別化図る
――業績は。
河野 平成28年3月期売上高は125億円強。前期比で微増だった。外部環境も決して良くなかった。だが、まだまだ伸びると考えている。
――その理由は。
河野 当社の主力は建材物流。全国40カ所の拠点で一気通貫型の包括的な物流サービスを提供しているが、建材は荷姿が一様でないため積み付けが難しく納品は細かな時間指定があり、組み立てなど煩雑な作業も伴う。こうしたノウハウは長年蓄積したものがあるがIT化を図ることでさらにサービスは上がる。差別化の余地は十二分にある。
――どう進める。
河野 長期的な視野で進めていくことが肝要だ。まずは基幹システムを全面的に見直し、顧客の理解を得ながら効率的な保管、輸配送の運用ができるよう、人材育成も含めて積極果敢に取り組んでいく。
――モーダルシフトは。
河野 陸海を組み合わせた輸配送も強みだ。いま、北九州―東京航路で無人車によるフェリー輸送の便数をかなり増やしている。大型車での無人航走は珍しいのでは。費用対効果が高い。環境負荷軽減に加えドライバーの拘束時間を短縮でき、トラックに比べ振動が少なく貨物に優しいなど顧客ニーズにも応えられる。
昨年4月に人材開発室新設
――課題は。
河野 ドライバーはもちろん配車係、管理部門などで人材が足りない。そこで昨年4月、人材開発室を立ち上げ、各エリアに採用担当の人員を配置した。拠点ごとでの単独での採用より、本社の人材開発室が統制しながら戦略的に求人情報を活用する方が当社の良さをうまくPRできる。優秀な人材も集まる。
――最後に意気込みを。
河野 ITを積極的に活用して業務を効率化し、個々の社員の付加価値を徹底的に高めていく。社員と一緒に戦っていきたい。
記者席 構えあって構えなし
「気合を入れるぞ」。3人の部下を引き連れ駅伝に参加。これがきっかけになり、東京マラソンに出走。4時間半で走破した。自転車ロードレースで120㎞も走った。「いろいろやります」
座右の銘は宮本武蔵『五輪書』水の巻にある「構えあって構えなし」。20代後半にこの言葉に出会い「感銘を受けた」。構えようとするから体が硬くなる。全ては斬るための一連の所作だと思え――。「ビジネスでも常に目的を見据えていれば自然と流れが生まれる。何を変えないといけないかが分かってくる」
お酒も強い。「社長になっても、部下にはお酒のイメージの方が強いと思う」と笑う。
(略歴)
かわの・いつろう=昭和48年10月3日生まれ、42歳。神奈川県出身。平成8年慶大経卒、日興アセットマネジメント入社、23年NBSロジソル入社、25年取締役、26年常務、27年社長就任。(丸山 隆彦)