インタビュー

メインビジュアル

【 社長インタビュー 】

3PLを主力にする 震災から早期に復帰 

2016年07月26日

熊本交通運輸 住永金司 社長 

熊本地震から3カ月。熊本交通運輸(本社・熊本県益城町)は4月、震度7の揺れに2度見舞われたが、素早い初動で早期に通常業務に復帰。今期も増収を見込む。南九州向けのハブ立地として熊本に着目し、益城インターチェンジ至近に物流センター開設の計画も進める。ドライバー不足と時短の動きを見据え、3PL事業に力を入れる。住永金司社長は「これからは脱運送」と話す。

――いまの状況は。
住永 震災直後から、取引先の幹部らが弁当を抱えて見舞いに駆けつけてくれたり、本当にありがたかった。会社の被害は少なくないが通常業務に支障はない。益城物流センターのエレベーターが6月20日に復旧して万全の体制になった。
――被災社員は。
住永 地震で社宅、自宅が全壊した全社員のため、4月26日に30世帯分の仮設住宅を用意した。水道管、下水管を通せばすぐに建てられる。車中泊や芝生で寝ているドライバーに運転しろとは言えない。安心できる環境をできるだけ早く提供するのが会社の務め。
――業績への影響は。
住永 ほとんどない。平成29年3月期売上高は運送・倉庫部門で前期比3%増を見込んでいる。28年3月期は売上高110億3100万円(前期比2.2%増)、営業利益4億3400万円(同52.3%増)だった。4月に年商2億円の運送会社を買収した半面、7月内に年間3~4億円の売り上げがある顧客から手を引く。法令順守のためだ。それでも今期の売り上げは増えるとみている。当社はそれだけの信用力がある。

熊本に南九州向けハブ拠点

――注力する分野は。
住永 倉庫事業。熊本は本州―南九州の中継ハブとして魅力がある。鳥栖より熊本の方がいい。例えば大阪―鳥栖間の大型運賃は片道12万円ほど。鳥栖―熊本間ではプラス2万5000円ほど掛かる。一方、大阪から熊本まで一気に走らせれば13万円ほどで済む。顧客は熊本の倉庫まで商品を持っていく方が安く上がるという訳だ。
――なるほど。
住永 法令順守面でも熊本の方が優位性がある。鹿児島から鳥栖の倉庫まで商品を引き取る場合、往復で8時間掛かる。手待ち時間などを含めるとドライバーの拘束時間は13時間で収まるかどうか。一方熊本であれば運転は往復5時間で済む。また、ハブは鹿児島と宮崎の中間点にある宮崎えびの市の方がいいという考えもあるが、熊本は物量が多い。えびの市からだと熊本までの配送の足が長くなってしまう。

益城IC至近物流Cを開設

――倉庫はどうする。
住永 益城熊本空港インターチェンジ至近に倉庫面積1万2000㎡の物流センターを開設する。来年3月の開設予定だったが、地震で後ろにずれ込む。3階建てで1階はターミナル、2~3階は商品を保管する。流通加工から輪配送まで請け負う。顧客のシステムを取り入れることで発送指示→上層階で流通加工→1階ターミナルに流して配送、という流れをうまく統率できる。作業平準化と短納化が図れ、鏡倉庫(熊本県)などで実績もある。
――3PLの割合は。
住永 まだ売り上げの15%ほどだが今後の主力にしていく。運送よりリスクがない。改善基準告示の順守で中継拠点の需要も高まっている。これからは脱運送だと社員にも言っている。
――課題は。
住永 ドライバー不足。高齢化も進む。今後は若年層を採用し、一から仕事を覚えてもらうやり方に変える。準中型免許の創設で高卒者の採用にも力を入れる。準中型、大型免許の全額補助も行う。当社は定着率が高い。物流に人の力は欠かせない。

 

記者席 テントで屋台村

4月の地震で本社近くにある益城町商店街が損壊し、商店の多くが営業不能に陥った。「突然、収入がゼロ。それでも家のローンや仕入れの支払いは来る。みんな今日の10円が欲しいという気持ちだった」
益城町商工会長を務める住永社長は震災直後から動いた。スーパーの駐車場を借りてプレハブで生鮮市場、テントで20店舗入る屋台村をつくろう――。だが、「テントに建築確認が要るとかいったような横やりが入った。こんな時なのに」。
屋台村は6月下旬、ようやくオープンにこぎつけた。「(屋台村に入った)店主は1日で3日分稼げたと笑ってくれた。鍋の振り過ぎで手首が疲れて仕方がないとか。やって良かった」

(略歴)
すみなが・きんじ=昭和22年5月15日生まれ、69歳。熊本県出身。41年県立熊本商高卒。47年熊本交通運輸設立、取締役、56年社長。(丸山 隆彦)