インタビュー

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【 社長インタビュー 】

共同化促す商品開発を 技術革新で魅力高める

2016年07月26日

日本貨物鉄道 田村 修二 社長 

 ――鉄道貨物輸送を取り巻く環境をどう認識。
 田村 ドライバー不足や労働時間規制強化を背景に、大量の貨物を長距離で運べる鉄道の役割は高まっている。国内輸送量は縮小傾向だが、全国の利用運送事業者と連携を強め、追い風をバネに鉄道利用を拡大させたい。
 ――10月、改正物流総合効率化法が施行。
 田村 改正物効法はモーダルシフトと共同化・協業がテーマ。貨物鉄道は誰もが使えるオープンな輸送機関。今後は共同化をテーマにした新しいサービスも開発していく。

特積み対応を起点に諸施策

 ――特積みなどトラック運送業界が鉄道に注目。
 田村 大手だけでなく中小の事業者からも鉄道を使いたいという要請が強い。モードが対抗する時代から、複数のモード活用でどう効率的な輸送体系をつくるかという時代へ移りつつある。
 ――積み合わせ貨物のシフトが増加傾向。
 田村 EC(電子商取引)拡大で貨物の小口化が進む中、特積みは重要な顧客だ。あらゆる方面向けの多様な荷物を扱うので往復利用してもらえる。スピードや品質で最高水準を求める特積みのニーズに対応できれば、他にも質の高いサービスが提供できる。特積みへの対応力を起点に施策を講じることがテーマだ。
 ――一方、輸送障害時対応は課題。
 田村 レールは旅客と貨物の共用なので当社ができることに限りはあるが、旅客会社には強い機動力で災害時のインフラ早期復旧を実現してもらっている。国の支援も不可欠。今後も、代替輸送強化を図る措置の拡充など働き掛けを強めていきたい。来年度には運転支援システム「PRANETS」を刷新。安全運行を最優先に、コンテナの位置情報を遅滞なく提供可能な体制づくりを進めていく。

運賃体系、弾力的に改定を

 ――輸送枠拡大のニーズも高い。
 田村 旅客と調整した上でダイヤを組むので、列車を増発するには限界がある。まずは深夜中心の時間帯でいかに良いダイヤを提供するかが重要。イールドマネジメント(収益最大化を図る管理手法)で運賃体系を弾力的に見直し、ユーザーの声を聞き入れながら、輸送力の調整に取り組みたい。
――営業面も積極化。
 田村 列車さえ動かせばいいという旧来の体質を打ち破り、往復実車化に向けたきめ細かい営業を進めている。全国通運連盟の「お試し輸送キャンペーン」の実績でも分かるが、鉄道を知らない荷主は多い。戦略としては人気の高い列車の往復利用、専用列車を仕立ててもらうことが理想だ。
 ――今期は鉄道事業の赤字解消を目指す。
 田村 黒字化達成への正念場。意識・計数管理・組織の改革に加え、今期は(1)赤字を抱えるORS(オフレールステーション)・臨海鉄道・車扱いの抜本的改革(2)新商品・新技術開発(3)連結経営本格化――に取り組んでいる。
 ――ニーズの高い温度管理コンテナも開発。
 田村 秋口の実証実験開始に向け、12フィートコンテナをベースに蓄電池を使うなどのアイデアを盛り込み、性能や強度を確かめながら開発中だ。機関車・貨車の更新とともに新技術を積極的に取り入れ、魅力あるモードにしていきたい。

(略歴)
 たむら・しゅうじ=昭和23年8月5日生まれ、67歳。島根県出身。昭和47年東大法卒、日本国有鉄道入社。60年貨物局総務課補佐、日本貨物鉄道(=JR貨物)では総務部長、総合企画本部副本部長などを経て、平成11年執行役員、13年取締役、14年常務、16年代表取締役専務、19年同副社長、24年社長。(水谷 周平)