インタビュー

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【 社長インタビュー 】

成長の基盤は「品質」 自社戦力強化に本腰

2016年06月28日

丸全昭和運輸 浅井 俊之 社長

今期、3カ年の新中期経営計画を開始した丸全昭和運輸(本社・横浜市、浅井俊之社長)。前期の売上高は前中計で掲げた1000億円にわずかに手が届かなかったが、利益とともに過去最高を達成。新中計では国内3PLとグローバル物流の拡大に重点を置き、「成長の基盤である品質をさらに高めたい」と浅井社長。品質向上の要である自社戦力の強化に本腰を入れる。

――前期は過去最高の業績だった。
浅井 売上高は999億200万円(平成27年3月期比5.5%増)と、前中計で掲げた1000億円超にわずかに届かなかった。中国はじめ新興国発着貨物の減少、鉄鋼・建機関連も低調となり、輸出入とも取扱量が減ったが、消費財を中心とした国内3PLの成長が増収に寄与した。
――利益面も拡大。
浅井 営業利益は前期比11.0%増の52億9300万円、経常利益は同8.8%増の58億6400万円を確保できた。燃料価格の改善による効果が大きかったが、組織改編やコスト削減努力も奏功。グループ社員の堅実な業務運営力が利益創出につながった。2年連続でベースアップを実施し、従業員に利益を還元することもできた。
――新中計最終年度(平成31年3月期)の売上高目標は1110億円。初年度の今期は1070億円(前期比7.1%増)を予想。
浅井 新中計の重点施策である3PLとグローバル物流の拡大を図れば到達できる目標だ。国内では物量の大きな伸びが見込めない分、運賃適正化の努力もますます重要になる。

首都圏の消費財市場を開拓

――3年間で50億円のM&A(企業の合併・買収)を計画。
浅井 国内は当社にない物流機能の獲得とネットワーク拡充を目的に進めたい。海外展開を加速するために、人材・拠点といったアセット、現地の物流ノウハウを持つ強い海外企業を対象にしたM&Aも検討していく。
――3PLは引き続き消費財関連を開拓。
浅井 消費財の一大市場である首都圏の営業展開を進めていく。子会社の丸十運輸倉庫が持つ都内の拠点や通運のノウハウを活用し、新規の需要開拓を図りたい。
――3PL拡大を図る国内の拠点整備も推進する。
浅井 自社施設による「アセット型3PL」が当社のモットーだ。この姿勢は海外でも変わらない。来年3月の完成をめどに仙台で自社施設の建設に着手。北九州市小倉にも大型倉庫を開設する計画だ。
――グローバル物流の拡大にも拍車。
浅井 4月に韓国で現地法人を設け、5月にはメキシコへの本格進出を図り、双日ロジスティクスとの合弁会社を設立した。海外のネットワークは着実に広がりつつある。今後は、中国やタイ、ベトナムなど、日本電産グループが工場を展開する全ての地域に子会社・丸全電産ロジステックの営業拠点を構えていきたい。

自車比率高め輸送力を強化

――新中計は「品質」を前面に押し出した。
浅井 創業から現在まで、当社グループの成長の中核となったのは品質と顧客ニーズへの柔軟な対応力だ。今後も自社運営にこだわりながら、確かな現場力で高品質なサービスを提供できる体制を固め、成長への好循環をつくり上げていく。
――自社運営が品質向上の鍵に。
浅井 外部委託での「品質管理」という課題もある。品質向上を図るには自車比率を高めなればならない。輸送を担う関係会社の再編を進めながら、増車とM&Aの活用で自社輸送力を強化していく。

 

記者席 熱き思いで託す将来

浅井社長が座長を務め、次世代のリーダー育成を図る勉強会「マルゼン・ジュニア・ボード・ミーティング」。現在、3期生が活躍中。介護関連分野の物流やイスラム教徒向けの「ハラール」商品に関する物流といったテーマで調査研究を進めている。「立派に育ち、会社の重要戦力となることを期待する」
新中計の目玉である、社内外の情報やノウハウを集め新規事業に挑む「業務支援組織」の設立も1期生のアイデア。将来を見据え、「知」の側面から会社を支える組織体が今期中にも誕生する。
「トップ自らが内定者フォローに積極的に関わらなければ」と、今年は社長自身が内定者と直接触れ合う機会も計画。「じかに話をして、自信を持ってわが社を勧めたい」。会社の将来を託すべき人材の確保にも一層の力が入る。

(略歴)
あさい・としゆき=昭和20年6月27日生まれ、71歳。愛知県出身。43年愛知大法経卒、丸全昭和運輸入社、平成8年中部支店長、13年4月関西支店長、同6月取締役、17年常務、21年代表取締役専務、24年社長。(水谷 周平)