インタビュー

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【 社長インタビュー 】

働き方の改革、推進 残荷対策も力入れる 

2016年06月21日

第一貨物 武藤 幸規 社長

平成28年3月期から、新たな3カ年中期経営計画がスタートした第一貨物(本社・山形市)。事務作業のムダ取り・標準化を図る「リニアープロジェクト」を完成させたいと武藤幸規社長。到着貨物量の予測システムや到着時間を見える化するシステムも磨きをかけていく。一方、「品質面では特に、法令対応の中で生じてきた残荷対策に懸命に取り組む」と話す。

――前期を振り返って。
武藤 特積み事業は売上高689億円、経常利益は6億9500万円だった。運賃が幾らか改善し、軽油も値下がりした。物量は前年比で99.6%と横ばい。ロジスティクス事業では大口得意先の収支改善もあって、これが物流事業全体の収支に寄与した。一方で、12億~13億円を充て賞与をはじめとした待遇改善を進めた。

利益より待遇改善を最優先

――効果があった。
武藤 利益を上げることよりも、ドライバーの確保を最優先に考えた。社員数は期末対比で50人ほどの増加があった。
――品質面では「貨物事故半減」を掲げて取り組んだ。
武藤 期待値には届かなかったが、20%弱の改善を実現した。例えば荷受け時にきちんと荷姿を確認し、打痕や段ボールの傷などについて都度写真を撮って発荷主に状況を説明、理解を得る取り組みを行った。運行便の出発前に荷台後部の写真を撮影し着店で状態を比べる、一部の運行車で走行中荷物が揺れる様子をカメラ撮影して、積み込み作業を指導するなど、ありとあらゆることをやった。
――課題もある。
武藤 いま残荷の問題が出てきており、手当てしなくてはいけない。法令対応から労働時間、出発時間、到着時間全てに目標を定め、現場で努力した。行き過ぎて顧客に迷惑を掛けるケースもあったので是正していく。(アイドル時間削減など事務のムダ取り・標準化を図る)「リニアープロジェクト」もまだ完成形には至っていない。
――どちらも新3カ年計画で取り組んでいく。
武藤 3年でやらなくてはいけないのが、残荷対策。出発時間の遅い車を設けたり、途上の店所で積み残した荷物を積み合わせたりする仕組みにしていく。勤務時間を多少シフトするといったことと並行して進める。その他の品質問題も当然、対応していく。

「DST」通じ顧客メリット

――リニアープロジェクトもさらに。
武藤 プロジェクトの一環である「PSS(ピーク・サポート・システム)」は到着量予測により物量が増えた時は(車両・人員を)増やし減った時は減らすものだが、いまのところ狙いの半分あるいは3分の1程度にとどまっている。
――到着時間を発着顧客に見える化する「DST(デリバリー・サービス・タイム)」も一部動き始めた。
武藤 だが、PSSもDSTもブラッシュアップや追加投資の必要な部分がある。DSSについては、大量の出荷先に対し到着時間を予報することが、実際に顧客の業務簡素化につながるメリットがあるようなところに、当社の側からサービス案内をしていきたい。また運賃もまだ一部是正しなくてはいけないし、営業力も強化していく。
――数値目標は。
武藤 31年3月期に売上高700億円、経常利益8億5000万円を計画。これで満足ということではなく、やるべきことをやった上で収益が改善することを目指している。今期は売上高695億円、経常利益は7億円強、物量は横ばいで計画している。

 

記者席 一定の成果あり

「前の3カ年では一定の成果を挙げられた」と武藤社長。運賃・取引条件の改善、それを原資にした待遇改善、あるいは採用競争力の強化を進めた。「運賃を上げて利益に回すということは基本的にやらない」
ただ、持ち越したテーマもある。リニアープロジェクトはその一つ。現在の到達点は「5合目ぐらい」。ドライバー確保のための運賃値上げと同時に、社内の合理化とサービス向上にも手を打ってきた。完成度を高め、さらなるメリットを追求していく。
待遇改善の面では、初任給をアップに続き今期、定年を65歳に引き上げ、一定年齢からの賃金の減額率も緩和。モチベーション向上につなげたい考え。「アベノミクスじゃないが、社員みんなに頑張ってほしい」

(略歴)
むとう・ゆきのり=昭和19年3月27日生まれ、72歳。東京都出身。42年慶大商卒、ブリヂストンタイヤ(現・ブリヂストン)入社、49年退社、太平興業入社、52年第一貨物自動車(現・第一貨物)取締役、59年副社長、太平興業社長、63年第一貨物社長、平成24年ディー・ティー・ホールディングス社長。(矢田 健一郎)