インタビュー

【 社長インタビュー 】
不採算を抜本的見直し 基盤整い、「これから」

2016年06月07日
ロジネットジャパン西日本 真田 俊秀 社長
ロジネットジャパン(本社・札幌市、木村輝美社長)グループで、本州での事業拡大の鍵を握るロジネットジャパン西日本(同・大阪市、真田俊秀社長)。平成28年3月期は赤字だったが、営業利益は前期より3億8000万円改善。不採算荷主からの撤退を断行し、「経営基盤は整った」(真田社長)。昨年10月~3月期の損益は黒字転換。今期からの巻き返しを図る。
――現状は。
真田 前期は不採算事業に大ナタを振るった。当社の前身である旧・青山本店時代から長年取引がある大口荷主に料金改定の交渉を重ねてきたが、到底原価に見合うものにはならなかった。大口荷主との取引解消は社内で意見が割れたが、「全ての業務を1から見直す」という方針を貫き、取引を止めた。平成28年3月期の売上高(55億3700万円)は前期より11億円減ったが、大半がこれによるものだ。通期では赤字であったが下期は黒字に転換した。営業利益は前期より3億8000万円改善した。
札通の4拠点統合も追い風
――グループの組織改編で4月から札幌通運の中部以西の事業を統合した。
真田 札通の大阪支店、滋賀支店、名古屋支店、静岡営業所の4店の事業を当社に統合した。シナジー(相乗)効果が見込め、今期からの巻き返しで強力な後押しになる。採算の良くない事業を精査し、覚悟を持って顧客と交渉してきたことが実を結んでいる。これからだ。
――前身の青山本店は食品の共同配送が強みだった。
真田 以前は料金が割安だった。法令順守が問われる中、適正料金を収受できなければ運営が行き詰まる。抜本的な見直しが急務であり、不採算事業からの撤退はそのためのものだった。4月の組織改編を機に、神戸、大阪、名古屋に主管支店を設けて営業力を強化し、食品にこだわらず、さまざまな貨物を取り込んでいく。
――特積みも扱う。
真田 当然だ。札通から統合する4店は特積み輸送の拠点だった。当社は区域輸送が中心だが特積み免許も取得した。これまでのサービスとなんら変わることはない。むしろ向上する。
――というと。
真田 愛知県小牧市に約1万4000㎡のセンター開設を計画している。高速道路インターチェンジから至近距離にあり、効率的な特積みの中継拠点として機能させる。幹線輸送ではトレーラーヘッドのスイッチ拠点としての活用も考えている。ドライバー不足と長時間運転の解消につながり、トータルで顧客により高い利便性を提供できる。区域輸送の新規拡販も見込める。
全国ネット構築の使命担う
――課題は。
真田 まずは地固め。当社のネームバリューはまだ低く、前期も通期赤字であることに変わりはない。粘り強く顧客に当社の取り組みを説明し、信用を積み重ねていくことが大事だ。同時に、センターはスルー型だけでなく在庫型としての運営に目を向け、これと輸配送と組み合わせた3PLも検討している。顧客ごとにカスタマイズした提案で多様なニーズに応え、新規拡販につなげられれば。
――グループの全国展開の鍵を握っている。
真田 当社はいずれ福岡に拠点を構え、グループで北海道から九州までの全国ネットワークを構築する使命がある。中部センターの次は、大阪にも大型のセンターを開設したい。神戸センター(倉庫面積約2万㎡)との3拠点体制で中部、関西圏での存在感を高め、その先に福岡がある。あせらず、じっくりやっていきたい。
記者席 すべきことをする
昨年1月にロジネットジャパンから異動し専務に。3カ月後、社長に就任。会社の再構築に当たり、まずは緩んでいた社内の空気から変えた。物流のプロをスカウトし、2人3脚で善後策を考え、事業の見直しに取り組んだ。
この1年を振り返り、「苦しかった。10年ぐらいの密度があった」と吐露。業界は法令順守、事故防止への要請が高まる半面、ドライバー不足時代への突入とこれまでにない変化があった。だが既存顧客に説明しても「けんもほろろで話をすり替えられることが多かった」。
取材中、はっきりした口調で大きな声で質問に答えてくれた。「地に足を付け、すべきことをするだけだ」
(略歴)
さなだ・としひで=昭和34年9月19日生まれ、56歳。北海道出身。58年北大法卒、商工中金入庫、平成22年同庫札幌支店長、24年同庫資産サポート部長を経て、26年ロジネットジャパン常務執行役員、27年1月ロジネットジャパン西日本専務、4月社長就任。(丸山 隆彦)