インタビュー

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【 インタビュー 】

経済を支える使命 業界健全化に尽力

2016年05月17日

近畿トラック協会 坂本 克己会長 

 国内輸送の約9割を占めるトラックは輸送の安全を確保するとともに、経済を支える使命を果たさなければならない。だが業界は適正運賃・料金の収受、ドライバー不足、運送契約の書面化など課題が山積している。労働環境を改善し、額に汗して働くドライバーたちに報いる必要もある。
 昨年度から「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」が中央と地方で立ち上がった。国土交通省、厚生労働省、経済産業省、荷主団体、トラック業界らで構成し、ガイドラインの策定に向けた議論を進めている。業界の健全化に向け、最後のチャンスと言っても過言ではない。
 労働時間の短縮は、業界の自助努力では実現できない。荷主都合の手待ち、付帯サービスなど従来の取引慣行を見直さねばならない。手待ちでは、時間割りによる料金収受といった時代に符合した制度づくりが求められているのではないか。

適正運賃の収受で小委員会

 6割の事業者はドライバーに世間並みの賃金を支払えていないのが現状だが、原資となる運賃・料金にテーマを絞った中央協議会の小委員会が、間もなく立ち上がる見込みだ。委員会にはトラック関係者のほか、藤井聡京都大学大学院教授など有識者にも参加してもらい、適正な運賃収受の在り方について国交省、厚労省、経産省とよりよい将来へ向けた議論が深まることを望む。
 ドライバー不足については、準中型免許制度が課題解決に直結すると期待している。18歳で総重量3.5トン以上7.5トン未満のトラックが運転できるようになる。さらに、約1000万人いる普通免許所持者が、簡略的な講習で総重量7.5トン未満まで拡大できる「基礎的免許」が導入されれば、優秀な人材を幅広く採用できる可能性が高まる。

大口・多頻度割引継続は鍵

 昨年、高速道路の大口多頻度割引50%継続をスローガンに掲げ、国に陳情を重ねた。さまざまな事業者の声を届けた結果、次世代型自動料金収受システム「ETC2・0」搭載トラックで1年間の延長が27年度補正予算で認められた。今後、税制改正などの要望で大口多頻度割引の継続や恒久化に加え、自動車関係諸税の軽減にも取り組む必要がある。
 「運輸事業振興助成交付金」(交付金)制度は、安全、環境、災害時の緊急輸送事業を担うトラック協会の活動には欠かせない。昭和51年以降、自動車局長通達でなされてきたが、適正に交付されなかった大阪府をはじめ近畿が中心になって署名運動を展開。平成23年、法制化が実現した。ただ、大阪府では今年度も算定額通りの交付に至っていない。府には法令順守を強く求める。(文責・遠藤 仁志)