インタビュー

【 社長インタビュー 】
「有言実行」前面に 安全教育徹底を掲げ

2016年05月03日
西濃運輸 神谷 正博 社長
4月1日、西濃運輸(本社・岐阜県大垣市)社長に神谷正博専務が就任した。セイノー輸送グループの売上高の約半分を占める中核企業の先頭に立ち、変化が激しい経営環境下でかじを取る。持ち前のコミュニケーション力を生かして「有言実行」に突き進む。その決意を聞いた。
――社長としての初仕事が入社式だった。
神谷 緊張した中にも西濃の一員として自己実現、夢の達成に向けた意思を表情から感じ取った。質疑応答も含めた交流の場を持てた。
――社長への質問も。
神谷 37年間の勤務の間で苦労したことは何か、と聞かれた。「いろいろな経験を振り返り、当時はつらかったり苦しんだりしたことでも年数がたてば良い思い出に変わってしまうと感じる。苦労しなければならないのはこれから」と答えた。
――社長就任を要請されたのはいつ。
神谷 3月中旬ごろ。濃飛西濃運輸在籍時にトップを務めていたが、企業規模が異なる。巨大な船のかじ取り役を担う中で、西濃の経営を左右する即断、即決を迫られる局面も出てくるだろう。プレッシャーとともに責任を強く感じている。
28年度売上高目標は3%増
――経営で重視していくことは。
神谷 歴代社長は思いを込めた言葉を社員に伝えた。那須野昌隆元社長は「我 西濃なり」の魂を訴えた。大塚委利前社長(現取締役相談役)は「為(な)せば 成る」と結果が出せる行動力を強調した。私は自身への教えの意味も込め「有言実行」を伝えていきたい。
――コミュニケーションを大切にしてきた。
神谷 社員と思いを一つにして前進していきたい。言葉を交わしながら自分たちに課せられた使命を果たしていく。好きな言葉である「邁(まい)進」は片時も忘れていない。自信を持って突き進める土壌をさらにつくり上げていく。
個々の社員にプロが指南し
――今期の計画は。
神谷 前期は取扱量は減少したが、増収増益が見込まれる。それを踏まえ、今期は前期売上高実績の3%増を目指す。ハードルは高いが、17万2000に及ぶ継続取引顧客の物流を守りながら、新規顧客も引き付けたい。
――重点テーマは何か。
神谷 安全教育の一層の徹底を図る。4月、15人のインストラクター社員を全国に赴かせ、プロ中のプロがドライバー社員を指導する制度を設けた。
――従来、安全指導に積極的だった。
神谷 安全管理課が実践教育に当たっていたが、新設の安全推進部の下、インストラクターが個々の社員に直接指南していく。技術だけでなく、顧客との接し方も丁寧に教えさせたい。営業開拓にも十分つながるとみている。
――荷主の心をつかむ狙いが。
神谷 外食する時にどの店を選ぶかに例えることができる。同じ価格、同じ味であれば選択基準は何か。店員の愛想の良い店が顧客を呼び込む。西濃の輸送でも他社と同一の運賃、スピードであれば、現場を担うドライバーの対応が物を言う。
――荷主は集配ドライバーをしっかり見ている。
神谷 礼儀作法や問い合わせなどへの反応の速さを大事にしてきた。西濃の体質ともなっている。考えてから走るのではなく、走りながら考える。そのスピード感はこれからも守っていきたい宝だ。
――セイノー輸送グループとの連携も勝ち残り戦略となる。
神谷 最適な輸送モードを持つグループ会社に輸送を任すことで、より高度なサービスを提供できる。評価も高まっている。グループ各社が受付窓口になって、さまざまな輸送商品を引き続きアピールしたい。
――3PL事業への取り組みは。
神谷 特積み事業の拡大に直結できるのも大きなメリット。今期は約80億円を目標にする。重要な事業の一つとして大事に育てていく。
記者席 一体感で組織力高め
西濃運輸勤務のみならず、北海道西濃運輸、濃飛西濃運輸、中部経済連合会、岐阜県経済同友会への出向も経験。その中で、情報を共有しながら議論を進めていくことの重要性を学んだ。緊密なコミュニケーションによる合意形成で活性化を推進。当時から「有言実行」に努めていた。
社内の野球部の試合も「一体感」を生む場。社員による応援団の役割にも目を凝らす。「スタンドと選手たちを強く結び付ける大切な仕事」。人と人をつなぐ力を重視しながら、組織のパワーを引き出していく。
絶えず笑みを浮かべ穏やかに話す。コミュニケーション力の源だ。孫の話題になって目を細めた表情が印象的だった。
(略歴)
かみや・まさひろ=昭和28年8月13日生まれ、62歳。岐阜県出身。54年早大商卒、西濃運輸入社、62年道通西濃運輸(現・北海道西濃運輸)取締役経営企画部長、平成3年濃飛西濃運輸営業部長、23年社長、25年西濃運輸専務営業本部担当、27年兼セイノーホールディングス取締役、28年4月1日西濃運輸社長に就任。(谷 篤)