インタビュー

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【 社長インタビュー 】

中計達成へ視界良好 品質、営業力強化が鍵

2014年10月21日

三和倉庫 鷹見 伸佳 社長

昨年3カ年の新中期経営計画が始動した三和倉庫(本社・東京)。ことしに入り主力の化学品などの荷動きが持ち直し始め、今期は好調な滑り出しを切った。中期計画で掲げる目標を達成するため、鷹見伸佳社長がポイントとするのが「安全品質の向上と営業力の強化」。今期中には新基幹システムを稼働させるなど、精力的な設備投資も進める。

 

――昨年6月の社長就任から1年が過ぎた。
鷹見 まずまずのスタートを切れたのではないか。メーカー時代は生産現場での仕事が長く、物流を本格的に手掛けるのは初めて。今後もこれまでの経験を生かしながら、中長期的な視点で判断を下し、課題を1つ1つクリアしていく。
――足元の荷動きは。
鷹見 主力の化学品はこの数年荷動きが低迷していたが、年明けから回復基調にある。4月の消費増税前に需要を先取りする動きも見られず、新規顧客、既存顧客ともに取引量は増えつつある。医薬品の荷量も安定しており、4~6月期の増収増益につながった。
――7月以降はどうか。
鷹見 夏場も好調な荷動きが続き、この勢いが第2四半期(4~9月期)の業績にも寄与する見通しだ。平成28年3月期の売上高55億円、営業利益4億5000万円を掲げる中計目標に向け順調に来ている。前の中期計画では東日本大震災や世界経済混乱の影響で未達だった分、今回は目標を達成したい。

 

積み重ねで現場力をアップ

 

――中期計画達成に向けたポイントは。
鷹見 顧客から安心して仕事を任せてもらうには、安全品質を一層高めることが欠かせない。トラブルが起きた際、応急処置で終わるだけではダメ。改善を繰り返して定着させ、顧客サービスにつながる効率的な仕組みを運用する必要がある。
――具体的には。
鷹見 伝票の確認ミス、荷物事故といったトラブルの大部分は人的要因によるもの。即効性のある対策は取りにくいが、地道な取り組みから事故は減らせる。研修や現場レベルでのミーティングなど、全社規模での教育を徹底していく。

 

今期中に基幹システム稼働

 

――営業力強化も中計で掲げる重要なテーマ。
鷹見 これも積み重ねが肝心だ。昨年からコンサルタントを交えた研修会などを通じ、営業手法や意識改革向上を進めている。物流を取り巻く環境が厳しさを増す中、強い精神力を持ち、踏み込んだ営業をしなければ競争には立ち向かえない。
――近年は新たな物流サービスも手掛ける。
鷹見 おととし横浜事業所で取得した医薬品製造業の許可は、多様な物流ニーズに対応するための施策の一環。保管にとどまらず医薬品の小分け、ラベル貼り替えといった製造的な機能を求める要望も強まっていた。医薬品物流を手掛ける大宮、茨木でも顧客の要望があれば、製造業の許可を取得する。
――設備投資は。
鷹見 約2億5000万円を投じた新たな基幹システムを今期中にも稼働する。新システムは顧客からの入出庫依頼、各事業所の貨物管理、社内経理など全情報を1元管理し、より効率的な体制を築くことができる。
――施設面の投資は。
鷹見 川崎と横浜事業所を皮切りに、昨年から老朽化した設備の更新を始めた。LED(発光ダイオード)照明の導入や塗装工事で庫内を明るくし、従業員の作業環境改善を進めている。
――中計期間中に倉庫の新設に着手するのか。
鷹見 建設コストが高騰しており、慎重に判断したい。まずは既存施設のリニューアルを中心に、適正な設備を維持する投資を行っていく。

 

記者席 現場の経験を生かす

 

前職は三和倉庫の親会社・日本曹達の出身。入社以来、プラントエンジニアリングや化学製品の生産担当など現場勤めが長かった。「メーカー時代は工場勤務が大半。本社で働いた記憶はほとんどない」と振り返る。
一方で、生産現場の考えは熟知。「現場では、工場の門を出た後のモノの動きを知らない人が少なくない」。結果、時に物流への不満につながることもある。メーカーと物流の両方を経験するいま、「(供給網の)川上と川下をつなぐ役割を果たしたい」と意気込む。
山歩きが趣味。地方で仕事をしていた頃は妙高山(新潟県)などをよく訪れた。「自然の中をゆっくり散策するのがリラックスできるひととき。時間があれば、関東近辺の自然豊富な山にもぜひ登ってみたい」

 

(小林 孝博)