インタビュー

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【 社長インタビュー 】

地域に根差した企業へ 人材育成が鍵を握る 

2015年12月01日

太陽運輸倉庫 重久 陽一 社長

 南九州(鹿児島・宮崎)と福岡に2大拠点を構え、九州圏のネットワークを確立させた「九州2眼レフ体制」で、九州に確固たる基盤を築く太陽運輸倉庫(本社・鹿児島市)。重久修一前社長(現・副会長)から7月、社長職を引き継いだ重久陽一新社長は「労働環境の改善と人材育成で、地域に根差し安定した経営を進めたい」と抱負を語る。

 ――社長就任の率直な感想は。
 重久 驚いた。「九州2眼レフ体制」の一翼である福岡支店を平成12年の立ち上げ時から長く担ってきた。従業員を当初の5人から150人規模まで成長させた経験を生かしたい。
 ――福岡支店長の経験は大きいか。
 重久 そうだ。福岡支店を当初、福岡県志免町に開設。15年には九州自動車道福岡インターチェンジ近くに移った。新拠点の選定、センターの運営方法、新規荷主の開拓など責任者として一から着実に成果を積み重ねた一方で、苦労も多かった。

働きやすく辞めにくい

 ――突破口は。
 重久 ジャパン・トランスポート・パートナーズシステム(=JTP)、全国引越専門協同組合連合会などに加盟し、全国ネットワークを生かすとともに、南九州で培った既存顧客の紹介で裾野を広げた。
 ――抱負は。
 重久 「地域に根差したオンリーワン企業」を目指し「社員が働きやすい職場環境づくり」を進めたい。
 ――具体的には。
 重久 労働環境の整備は最優先課題。コンプライアンス(法令順守)の重視は当然。業務改善でさらなる労働時間の短縮、連休の取得、給与など待遇面の改善を促進し、働きやすく辞めたくない会社を構築する。
 ――生産性の向上には人材育成が必要。
 重久 現状の課題は、中間管理職の底上げ。たとえ人材を確保しても、キャリア形成が不明瞭では企業の発展につながらない。「企業経営は人づくり」を柱に月に1度、外部から専門の講師を招き入れ勉強会を実施し、議論を深めている。
 ――目指す方向は。
 重久 これまで築き上げた高品質を生み出す社風に磨きを掛けたい。そのためには、社員自身が目標を設定し業務を遂行する。また、管理職は進ちょく状況を確認し意見交換を行う、目標管理体制を整える。マニュアルを整備すると同時に、生産性を高める研修を実施し、現場で実践できる人材を育成したい。
 ――新卒採用を毎年、行っている。
 重久 今年で7年目を迎えた。来春入社予定の大卒、高卒計8人が内定した。将来を見据え、育成には惜しまず投資する。結果、新卒入社1期生は各センターの副センター長にまで育ち、当社の中核になりつつある。

エコ事業参入総合力高める

 ――今後の事業戦略は。
 重久 経営の多角化を進め、着実に利益を生み出したい。当社は輸送、保管、3PL、引っ越しなど総合的に物流事業を手掛けてきた。今後、需要が高まるエコ事業を積極的に展開する。九州全県で産業廃棄物収集運搬業の許可を取得した。一般企業が排出する情報機器リース品、産業廃棄物の回収、再資源化に注力し、多様な九州の顧客ニーズに応えていく。
 ――文化活動にも注力している。
 重久 重久紘三会長は小説『放浪記』『浮雲』で知られる作家、林芙美子のおいに当たる。桜島を一望できる城山観光ホテル(鹿児島市)に4月、芙美子の直筆を刻んだ石碑を建立した。このような地域の文化活動に貢献する会長の意思を引き継ぎたい。

記者席 異業種との交流深く

 兄から引き継いだ社長職。創業者であり父親でもある会長と共に、賃金体系の見直しやキャリア形成の構築など経営の足腰を強化する。月に1度の外部講師との勉強会では、専門的な知識の吸収と情報収集に余念が無く、時には質問攻め。
 これまで長く担当した福岡では、異業種との交流を積極的に深めた。地域のオンリーワン企業を目指しており、「フィールドは九州だが、情報収集のため人脈はグローバルに」がモットーだ。
 休日には、サッカーやラグビーで汗を流す。サッカーのポジションはディフェンス。守備の要で全体を見渡すポジションは社長業と重なるが、「本当はフォワードで得点を決めたい」と、闘う姿勢を隠さない。

(略歴)
 重久 陽一氏(しげひさ・よういち) 昭和44年1月21日生まれ、46歳。鹿児島県出身。平成5年日大文理卒、9年太陽運輸倉庫入社、12年福岡支店長、18年取締役、21年常務営業事業本部長、25年副社長、27年7月社長就任。(遠藤 仁志)