インタビュー

【 社長インタビュー 】
日梱 核に多角化・深化 「物流にこだわらない」

2015年11月10日
ニッコンホールディングス 黒岩 正勝 社長
10月1日、ニッコンホールディングス(本社・東京、黒岩正勝社長)が誕生。日本梱包運輸倉庫を中核事業会社として持ち、運送、こん包、倉庫の各事業の川上・川下への領域拡大を推し進めるとともに、従来の取り組みである不動産賃貸など「物流にこだわらない」(黒岩社長)形での成長を目指す。
――HD化の目的は。
黒岩 コンプライアンス(法令順守)を重視。経営と資本を切り分け、より戦略的にグループを運営していく。
――従来難しかった。
黒岩 日本梱包は戦略を練ることと戦術を実践することの両方を担い、実務優先になる傾向があった。まだHDと日本梱包の仕事を同じ人間が兼務する状態。来年4月には組織・人事ともに新しい体制をスタートさせる。
――物流は「深化」を追求する。
黒岩 事業会社の中核になる日本梱包運輸倉庫はこん包、運輸、倉庫を手掛けており、各業態を深掘りしていく。人口減少で国内市場の縮小が確実な中、海外事業の拡大はもちろん、国内でも扱えるものを増やす。
――川上、川下へと業態を拡大。
黒岩 川下で言えば、菓子などの食品。消費物流は常温帯を中心に伸ばす。製造の前工程・後工程の部分では、前に行けば流通加工をさらに進めた製造請負、後ろに行けば例えばカーディーラーへの納車や新車保管といった販売のお手伝いなど。事業領域の面的拡大を図っていく。
縮小市場の中競争力さらに
――ネットワークは。
黒岩 一昨年度から新設や移転、リニューアルなど積極的に投資を行っている。北海道から九州まで満遍なく対応できる体制を敷く必要がある。新聞輸送を強みとする中越テックを例にとると、首都圏配送では1トン車、2トン車を使い新聞配達後に日本梱包の荷物を運ぶようにしている。グループを挙げてネットワークを構築していく。
――完成車輸送部隊を昨年から今年にかけ分社化した。
黒岩 将来を見据え生き残るには、質の向上も含め競争力を付けていかなければならない。輸送の部分では、特に地域競争力。「自前主義」の原点に立ち帰り、人の育成をはじめやるべきことをやる。
――ドライバー不足への対応は。
黒岩 結論から言えば給料が上がらないとダメだ。労働時間を考慮すれば、相当効率的な仕事のやり方が求められる。待ち時間をなくす、完成車輸送は1車2人制、2車3人制で設備をフル稼働させるといった取り組みを進める。
――仕事の中身を濃くする。
黒岩 ムダの改善は昔から、顧客と一緒になって取り組んできた。仮に料金が上がらない場合でも、顧客にも当社にもメリットが生まれる方法はある。
競争力を高められる相手と提携
――グループのシナジー(相乗)効果をどう生み出していく。
黒岩 グループの中核会社社長にはニッコンHDに執行役員として加わってもらった。課題認識を共有し、相互メリットを出していく。地域別、機能・業態別に分かれているので、倉庫主体の会社と運送主体の会社が連携する、あるいは東京に強い会社と大阪に強い会社が補完し合うなど、互いに営業支援を行う。
――中期計画では平成29年3月期の売上高2000億円が目標。
黒岩 自然増が見込める時代ではない。いまは物流が中心だが、リースや不動産賃貸も手掛けている。物流にこだわらず、量的背景をどんどん広げていく。M&A(企業の合併・買収)もそうした観点から、グループとしての競争力を高められる相手と手を結びたい。
記者席 「学ぶ」は「まねる」
ホールディングスに体制を移行し、これまで日本梱包運輸倉庫の傘下にあった企業が同じ位置付けに。「日本梱包以外の会社を育てていかないといけない」。そのためには「全員がHDの一員との自覚を持ち、一番進んでいるところをまねするのが早い。〝学ぶ〟というのは〝まねする〟こと」。
会社によらず国によらず良い部分は必ずあり、「互いに勉強し合うようにやっていきたい」と話す。5月にはグループでドライバーコンテスト、フォークリフトコンテストを実施。QCサークルも行っており、品質向上と技能向上の活動はグループを挙げて徹底していく。
部下には「実務者たれ」と。誰よりも一生懸命に仕事し結果も出す。「大過なく、というのは望まない。何もしていないことと同じ」
(略歴)
黒岩 正勝氏(くろいわ・まさかつ) 昭和26年2月2日生まれ、64歳。東京都出身。昭48年駒大法卒、日本梱包運輸倉庫入社、61年取締役、平成元年5月メイコン社長、6月日梱常務、6年A.N.I.LOGISTICS社長、11年日梱専務、15年NK PARTS INDUSTRIES社長、21年日梱社長、27年10月1日ニッコンホールディングス社長就任(矢田 健一郎)