インタビュー

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【 社長インタビュー 】

地域と共栄し、新船へ 神戸移転一年、協議会発足 

2015年10月20日

宮崎カーフェリー 黒木 政典 社長

 宮崎と神戸を結ぶ宮崎カーフェリー(本社・宮崎市、黒木政典社長)。関西の拠点を昨年10月、大阪南港から神戸三宮港に移転。地元、宮崎県では官民一体となった利用促進協議会が発足した。「地元の総意で立ち上がった意義は大きい」と黒木社長。避けられない新船建造の課題、フェリーが担う南九州での長距離輸送の役割について聞いた。

 ――神戸三宮フェリーターミナルに移転し、一年を迎えた。
 黒木 移転により貨物、旅客両面で利便性が高まり、業績は堅調に推移している。貨物部門は、名神高速道路に直結する阪神高速が神戸三宮港近くを通り中部圏、首都圏へ向かう顧客のリードタイム短縮に貢献した。旅客部門では、神戸市中心部の三宮駅まで徒歩圏内で訴求効果が高い。
 ――航路の特徴は。
 黒木 宮崎県は全国有数の農産県。だが、首都圏や関西圏の大消費地から遠い。トラック輸送が県の物流の92%を占める中、ドライバー不足や改善基準告示の順守で長距離フェリーの役割は増している。
 ――「県長距離フェリー航路利用促進協議会」が8月、立ち上がった。
 黒木 県、宮崎市、宮崎県トラック協会(牧田信良会長)、経済団体ら14団体・企業で構成。県産業の競争力を維持・向上させるには、海上輸送モードの活用、輸送コストの節約などが欠かせないと地元の総意で立ち上がった。過去、高速道路無料化など国の政策に振り回されたが、今回の協議会設置は長距離フェリーへの理解が深まった結果と認識している。

移転で経費削減、増益確保

 ――業績は。
 黒木 平成26年3月期は売上高49億9000万円、経常利益1億1000万円と減収増益だった。増益の要因は、船舶燃料(C重油)価格の改善。これまで大きくう回していた大阪湾内の航路が移転後はほぼ直線的に結ばれ、航海距離が短縮したことで、燃油代の節約にもつながった。
 ――今期の見通しは。
 黒木 通期を経て移転効果が最大限に表れ、収支改善が進む見込みだ。売り上げの75%を占める貨物部門の営業強化はもちろんだが、修学旅行の利用促進など旅客部門を増加させ、経営の安定化につなげる。

新船は3~4年後目標

 ――新船の計画は。
 黒木 避けて通れない課題だ。現行船「みやざきエクスプレス」「こうべエクスプレス」の船齢は20年弱。新船は、3~4年後を目標に進めたい。
 ――具体的な構想は。
 黒木 ①大型化②省エネ化――の二つが軸になるだろう。農産物出荷の繁忙期(11~翌5月)はトラックの乗船を断っている状況。県の物流を担うには大型化は必須。また燃油代がコストの約半分を占め、燃費の効率化は重要課題。輸送コストにすぐ跳ね返る価格変動調整金(サーチャージ)安定化のため、C重油以外の燃料も含めて幅広く検討したい。
 ――他にも課題が。
 黒木 「地域産業との共栄」を経営理念に掲げ、宮崎に本社を移転し14年が経過した。県全体の協力体制を構築できた協議会の発足は感慨深い。新船建造には、確かな需要を確保し航路を維持することが不可欠。こうしたバックアップは、建造費用を調達する上で鉄道建設・運輸施設整備支援機構や金融機関に理解を求める大きな要素の一つになり得る。
 ――東九州は宮崎、大分、鹿児島(志布志)と船社がすみ分けの状態。
 黒木 事業者は集荷や配達時間次第でフェリー選択の幅が広がり、競争力は高まる。さらに各船社各港に優位性があり、過当な運賃競争に陥らない現体制が望ましい。今後燃費の課題を乗り越えれば、宮崎―京浜航路復活にも挑戦したい。

(略歴)
 黒木 政典氏(くろき・まさのり) 昭和21年10月4日生まれ、69歳。宮崎県出身。45年中央大法卒、日本カーフェリー入社、平成2年同社の事業を引き継いだマリンエキスプレスに転籍、15年社長、16年宮崎カーフェリー設立、社長。(遠藤 仁志)