インタビュー

【 インタビュー 】
法令順守の努力続ける 業界の魅力を高め

2015年10月13日
北海道トラック協会 伊藤 昭人 会長
道内長距離輸送や、本州向けには海上・鉄道輸送が必要になるなど北海道の物流には、地域ならではの問題が山積している。人材不足、労働時間規制の逆風もある中、荷主が物流を考える協議会の設立や、法令順守徹底など環境改善に力強く取り組む伊藤昭人北海道トラック協会会長。「逆風こそチャンス」と改革を推進する。
――法令順守意識を高める活動を続けている。
伊藤 会員の改善基準告示に対する理解を深めるために活動してきた。7つある各地区のト協を2年間で26回訪問した。法令を守らない企業は滅びる。法令順守の意識徹底を訴えてきた。
――9月から改善基準告示が一部変更に。
伊藤 フェリーの乗船時間が全て休息時間と認められた。北海道の物流は域内物流と本州向け物流の二つに分かれる。域内物流の課題も多いが、本州向けではフェリー乗船中の時間をどう見るかが課題だった。改正の意義は大きい。
――改革につなげる。
伊藤 事業者は今回の措置を誠実に受け止めなくてはならない。「全てをトラックで運ぶためにドライバーを酷使する」「荷主の言いなりになる」。このような体質を経営者が改め新しいアイデアを出さないと、人材不足は加速する。
法令改正重く受け止め
――ピンチをチャンスに変える。
伊藤 そうだ。平成2年の物流二法施行時も3PL(サードパーティ・ロジスティクス)などの新しい仕組みが生まれた。今回もそうしなければいけない。
――労働人口は減少している。
伊藤 42年には北海道の人口は100万人減少するという推計がある。その中でどうやって人材を確保するのか。職の魅力を高めるために、事業者や協会が他人任せにせず考えていかなければならない。
業界のプラスイメージ発信
――「ニュー3K」の取り組みを進める。
伊藤 いままでの悪いイメージを逆手にとり「希望・活力・貢献」という3つのKを提案した。ポスター配布などを通じて普及に努める。一方で、個々の事業者がこのコンセプトを職場にどう取り入れていくかが大切だ。
――各事業者の努力が求められる。
伊藤 希望を持てる職場にできるのか、地域に貢献できるのか、活力を生みだせるのか。トラックの枠を超えて物流をどう創造していくかということだ。
――トラックにできることを見極める。
伊藤 地域全体で物流の役割を考える。その意味で、荷主を主体とした協議会を設けた。荷主に健全なトラック業界をつくるため、どうするか考えてもらった。
物流から道内経済を変える
――「取引環境・労働時間改善協議会」で話し合いを継続する。
伊藤 課題抽出が終わったので、早めに結果を出していけるのではないか。地理的な問題や、農繁期に荷物が集中しやすいといった産業構造の問題だ。北海道ブランドを守るために荷主と協力して解決していきたい。
――地域で連携する。
伊藤 地域全体を盛り上げればトラックの仕事も増えてくる。
――道内全体で物流について考える機運が高まっている。
伊藤 「運賃は高く、商品も良く」というのが理想だ。トラックから経済を変えていきたい。人材確保に向けてはトラック業界の魅力を発信していく。同時に、法令順守の意識を軸に業界を良くしていきたい。
(略歴)
伊藤 昭人氏(いとう・あきひと) 昭和20年4月28日生まれ、70歳。北海道出身。39年道立札幌南高卒、41年東京通運入社、43年静内自動車運輸(現・シズナイロゴス)入社、46年取締役、56年代表取締役専務、平成14年社長、25年会長。18年札幌地区トラック協会長、北海道トラック協会協副会長、25年会長。(佐藤 周)