インタビュー

【 社長インタビュー 】
成長と従業員還元一体で 特積みの基盤強化推進

2025年10月07日
名鉄NX運輸 吉川 拓雄 社長
名鉄NX運輸(本社・名古屋市)は1月、物量の増加と経営体質の強化のため、名鉄運輸にNXトランスポートと日本通運の特積み事業が一体化する形で誕生した。システム・体制両面での真の統合まではまだ時間はかかるが、吉川拓雄社長は「営業活動の強化と従業員への還元を目指し、(統合の)目的達成を図りたい。新たな〝こぐま品質〟を創造し、顧客への訴求を図り実現につなげる」とする。
――統合当初は厳しい状況が続いた。
吉川 想定より物量が伸びなかった。統合時のシステム問題などで、顧客に迷惑をかけた経緯もあり、信頼と物量の回復を図るために訪問計画を立て着実に実行してきた。日通との連携もさらに密にし、規定物量の確保も進めている。
――体制強化は。
吉川 自らの努力でできる部分と捉え、積極的に取り組んでいる。統合の効果を出すために運送委託料の削減を主に各種費用を圧縮しつつ、長期的には店所の統廃合なども進めたい。
――特積み事業についてどう見ている。
吉川 特積みはインフラ的な産業で、安価で大量に荷物を運ぶことができる。それだけに、単体では大きな利益創出は見込めない。特積みをベースに3PL・倉庫・区域などの事業を拡充し、新たな体制を構築する。
――まずは適正収受。
吉川 統合作業がある中で、事業の安定を優先していたため、運賃交渉が停滞していた。現在、顧客に対してコスト構造やサービスの価値を丁寧に説明し、適正運賃での契約を目指している。またその実現に向けた、営業担当者へのスキルアップ教育も進めている。
――3PLなどの事業拡大も進める。
吉川 ロジスティクス戦略部を2024年3月に発足。営業活動に力を入れる一方、M&Aも視野に入れつつ強化していく。今後、メーカーなど荷主が物流業務の切り出しを行うとみている。受け皿となれるよう、ロジ・特積みの機能を両輪で強化しながら、区域などの仕事も深堀りする。
3PLの拡大・強化を進める
――システム面は。
吉川 DXでは、立ち遅れているのが現状だ。名古屋鉄道とも協力しながら効率化につながるような改革を進めていきたい。また現状の収支をより詳細に分析するため、店所ごとの業績可視化を行い、本社・支社一体となって改革に挑みたい。
――反転攻勢を目指す。
吉川 統合後は売り上げが見込み額に至らず苦労してきた。ただ10月から、これまで打ってきた手が段階的に芽吹くと考えている。26年3月期までの中期経営計画に掲げている目標数値を達成できるように取り組みを進めたい。
さらなる協業も視野に入れ
――物流業界は課題が山積している。
吉川 一番厳しいのは人材不足だ。残業上限規制もあり、1人当たりの運送能力が低下する。解決策の一つで、インドネシアから12人の外国人ドライバーを採用した。公私のケアを丁寧に行い、戦力になってほしいと考えている。
――協業については。
吉川 今後、人口減少がさらに加速し、大手といえども単独でのネットワーク維持は厳しくなる。時には同業とも力を合わせながら、社会インフラとしての役割を果たしていきたい。
――従業員の幸せも重要だ。
吉川 日々業務に努めている従業員・協力会社がいるから成り立つ仕事。不安定な時代の中で地域や顧客の信頼を受けつつ、社員が名鉄運輸グループの一員であることに誇りを持てる会社であり続けたい。そのためにも会社の持続的成長と従業員の生活向上を実現していく。
記者席 統合のまとめ役
名鉄NX運輸となり、大きく分けて3系統の出自の従業員が混在する。旧・名鉄運輸の社員、親会社の名古屋鉄道入社の社員、NXグループの社員。全員に「働いてよかったと思ってもらえるようにならなければ」。事業成長や労働環境改善を着実に進め、社員の融和を図る。
加えて、名鉄NXのマスコット「こぐま」の普及を通じた会社のファン獲得も進めている。名鉄グループの協力で絵本『きみのまちのこぐまくん』も出版。「(キャラクターの展開は)グループの力があってこそできること」
これからも、従業員や関係各社と共に、真の統合を実現するためまとめ役を果たす。「互いの良い部分を融合し誇りを持って仕事を行い、これまで以上に地域や顧客の信頼を得ていきたい」