インタビュー

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【 社長インタビュー 】

「量」と「質」の確保継続 協業、鉄道利用も推進

2025年08月12日

新潟運輸 坂井 操 社長

 2025年4月期に2期連続の増益を果たした新潟運輸(本社・新潟市)。トラックドライバーをはじめとした人材確保が課題となる中、坂井操社長は「戦力の現状維持を図りつつ自社の効率向上、同業他社との協業を進め物量を確保するとともに、運賃・料金改善に取り組む」と話す。年内をめどに鉄道コンテナ輸送の増便も計画する。

 ――前期は売上高526億9940万円、経常利益11億3031万円だった。
 坂井 売上高は前期比2・5%増、経常利益は同37・0%増で着地できた。3期ぶり増収増益。1日当たり取扱トン数は同1%増で年間でならせば前期並み。トン当たり単価は同2・6%増。物価高も踏まえた人件費上昇や協力会社の値上げ要請など、コスト増への対応が求められる中で、経費が増えた一方、運賃単価改善を進めてきたことが奏功した。保険料、中継料といった諸料金収受の効果も大きい。

サービス維持へ値上げ必要

 ――値上げせざるを得ない状況にある。
 坂井 特積み業界ではドライバー不足により競争が緩和されつつある半面、全国各地では協力会社が事業継続を断念したり、各社で配送コースを維持できないケースも目立ち始めた。他業種の大手企業が大幅な賃上げを行うなど採用環境も厳しさを増しており、人材の採用・定着も課題。輸配送ネットワークを維持するため協業も進める。
 ――今年に入り協業の動きが拡大している。
 坂井 従来の関東―関西間でのエスラインギフとの協業に加え、関東や新潟でも新たな取り組みが始まっている。新潟県内の山間部などは当社の便に他社から委託を受けた貨物を混載して運ぶなど、協調領域はさらに広がっていくとみている。
 ――荷動きには底打ち感がある。
 坂井 以前に比べ(物量減少で)集配ドライバーや業務職は仕事が早く終わるようになったが、給料に影響する。毎年少なからず賃金を改定し給与を底上げしているが、物価高も継続しており、引き続きの対策には最終的には運賃単価を引き上げていく必要がある。足元では荷動きは横ばい。トランプ関税が輸出に悪影響を及ぼせば、われわれが扱う貨物にも影響する。国際情勢も注視している。
 ――今期も運賃改善に取り組む。
 坂井 24年4月期には(ドライバーの労働規制強化に伴う)24年問題を前に、10%を目標に顧客に運賃改善を要請した。改善が不十分なケースが全体の約2割、数千社あり、上期中をめどに再交渉を進める。
 ――23年3月にグループ入りした大信物流輸送との連携も強めている。
 坂井 貸し切り輸送では需要はあるが供給力が不足がちな中で、利用運送事業を展開する大信物流輸送に関西からの車の帰り荷として運んでもらうといった形で活躍してもらっている。

31ftコンテナ計8便体制に

 ――ネットワークの安定化に向け鉄道コンテナ輸送の拡充も図る。
 坂井 24年11月に新潟―大阪間で「シルバー特急便」カラーの31フィート鉄道コンテナ輸送を開始し、1日2便を運用中。環境負荷低減にもつながるもので、年内をめどに新潟―大阪間2路線、東京―大阪間1路線の計3路線6便を拡充し、4路線8便体制とする。
 ――施設でも投資する。
 坂井 26年2月に「静岡焼津支店」をオープンする。20年に旧・静岡支店を旧・藤枝支店に統合し現・静岡支店として営業してきたが、移転・新築する。他にも北東北と愛知で1棟ずつ、支店敷地内の土地を活用して660平方メートル程度の倉庫を開設する。

記者席 収支は個別最適で

 「やはり全体最適ではなく、個別最適でやっていかないと」。輸配送ネットワークについて、エリア・コースごとの収支に従来以上にこだわっていく必要があると話す。
 業界では、不採算路線の赤字を別の路線の黒字で穴埋めして、全体でバランスを取るケースもあった。鉄道などと同様、装置産業の側面を併せ持つ特積み事業の宿命とも言えるが、持続的成長に向けた変化が求められる中で、同業他社と輸送力や荷物をやりとりすることは、新たな局面への対応の一環だ。
 2024年問題、人手不足、コスト上昇の中、長距離はもとより、各地域で長年配達を委託していた協力会社の撤退・廃業も増加。サービス安定へ持続可能なネットワークをいかにして再構築するのか。継続的な賃上げや一時金支給のためにも顧客への要請を適宜行う方針。