インタビュー

【 社長インタビュー 】
収益体質さらに強化 真の総合物流企業へ

2025年08月05日
第一貨物 米田 総一郎 社長
2024年3月期の多額の損失計上を経て、25年3月期にV字回復を果たした第一貨物(本社・山形市)。米田総一郎社長は「特にこの1年、生産性にこだわり各事業所単位での収支改善を進めた。健全な発展と地位向上を含む従業員の幸福のため、今後3年間で輸送事業の利益率を3・5%程度まで引き上げたい」と話し、特積みの資源を生かしつつ〝真〟の総合物流企業への脱皮を図る。
――前期、ロジスティクスを含む全事業で経常利益率1・7%とした。
米田 皆が一丸となりよくやってくれた。特積み事業の物量は前期比1%増程度。コロナ禍以前から低迷していた物量が24年3月期で底打ちした中で、運賃・条件改善交渉の継続とロジの改善、コスト管理の徹底が実を結んだ。
――具体的には。
米田 各会議資料のペーパーレス化や光熱費節約など徹底してコスト削減を進めた。リードタイムを維持しながら、運行便台数の適正化と積載効率の向上を図った。集配車両では地域の道路事情によっては4トン車、2トン車といった車種ごとの台数の適正化、稼働率向上に努めた。全社を挙げ取り組んだことが収益の基盤になっている。
――運賃・条件改善にも継続して取り組んだ。
米田 この数年はエネルギーコスト上昇を受けた燃料サーチャージ、物価上昇や(ドライバーの労働規制強化に伴う)24年問題への対応を踏まえた運賃・料金改定を顧客に求めてきた。荷動きが厳しい中でも先行して交渉を進めてきたこともあり、前期の結果に結び付いた。
――足元でも物価上昇は続いている。
米田 世の中の動きに追い付き地位向上につなげるためにも、運賃・条件改善交渉は今期も継続する。諸料金の部分では館内配送料や中継料金の交渉もこれまで以上に力を注いでいく。
あらゆる顧客ニーズに対応
――営業拡大への意識改革も形を成してきた。
米田 前期、利用運送では売り上げを30%弱伸ばすことができたが、貸し切りや利用運送の取り込みを強化する中で「特積みの第一貨物」という捉え方をする顧客が多いことが見えてきた。特積みの案件に限らず、可能な限り顧客のあらゆる物流ニーズに応えることを根底に据えて取り組んでいるところだ。
――総合的に対応することを当たり前にする。
米田 特積みネットワークの維持にかかるコストを賄うためにも、貸し切りや利用運送を強化することが必要。新たに獲得した案件の中には、運行便の積載効率向上に寄与するものもある。昨年グループ入りした北上運輸は貸し切りにも強く、倉庫保管や輸出入ではおととしに資本・業務提携を結んだ三菱倉庫を紹介するなど、顧客対応力は着実に増している。独自開発のWMS「D―BOX(ディーボックス)」も武器の一つだ。
利益率は発展と幸福の条件
――今期、新たな3カ年中期経営計画が始動した。
米田 特積みで3%程度、貸し切りや利用運送も含めた輸送事業全体で3・5%程度、ロジ事業を含めた全事業では4%程度の利益率を目標に掲げた。前中計で固めてきた業容拡大への土台に立ち、今後3年間で将来に向けて真の総合物流企業に脱皮できるかが問われる。
――就任当初から利益率4%を見据えてきた。
米田 利益率にこだわっていくが、利益率が目的ではない。利益率は会社が健全に発展するための条件であり、ドライバーを含む社員と家族の幸福のために重要なもの。長年貫いてきた法令順守、安全・実直・優しさといった当社の良さを忘れることなく、品質にこだわり、革新性や適正利益を追求していく。
記者席 エンジンは温まった
「ピンチをチャンスに変えるではないが、物量確保、運賃・条件改善、貸し切り・利用運送拡大と、徹底したコスト管理に取り組んだことが今、業容拡大に向けたベースになっている」
コロナ禍以降、集配戦力の内製化など収益体質強化に向けた取り組みに注力してきたが、全社で業績のV字回復に向かう過程で改めてコストを洗い出し、これまでにない見直しにつなげた。積極投資をしてきたロジ事業での収益改善にめどが立ったことも合わせて、土台を固め、さらなる業容拡大に臨む。
鍵は、同社が築き上げてきた経営資源にある。「約2万社の顧客網は大きな財産。だが、特積み以外のニーズを取りこぼしていた部分も否めず、生かし切れていない」と米田社長。成長に向けた〝脱皮〟をどれだけ繰り返せるか、注目される。