インタビュー

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【 社長インタビュー 】

言行一致で課題解決 共同運行・配送拡大に向け

2025年07月29日

福山通運 熊野 弘幸 社長

 福山通運(本社・広島県福山市)は2026年3月期、増収増益、中でも、営業利益は大幅な回復を見込む。特積み輸送を中核とした自社戦力の強化はもとより、協業企業・業務提携企業との共同運行や共同配送に積極的に取り組む方針だ。6月に就任した熊野弘幸社長は「解決すべき課題は明確。全社員と共に言行一致の姿勢で取り組む」と話す。

物流量と運賃の底上げ徹底

 ――今期、増収増益を見込む。
 熊野 売上高は前期比4・6%増の3163億円、営業利益は同10%増の81億円を確保する。売上高は物量の確保や収受運賃の底上げなどで達成する。一方、利益は人件費をはじめ、燃料費、外注費などが続騰している。さらに、減価償却費の増加などもあり並大抵の努力では完達は難しい。だが23年3月期、24年3月期とも2桁台の減益になっており、今期に限れば減益は許されない。
 ――利益確保の具体策は。
 熊野 適正運賃収受は当社に限らず、全ての企業にとって一丁目一番地だ。当社の取引先は約20万社だが、これまで値上げ交渉の成果をについて「軒数」を指数として、うち約7割程度の交渉が実現した。今後は実利をより確実なものにすべく、軒数に代わる新たな指数も考えたい。宿命とも言える、上下便の物量のアンバランスといった下押し要因を少しでも緩和するため、同業他社との協業をさらにスピードを上げて進めたい。
 ――効率化・省人化では、モーダルシフトやダブル連結トラックの活用も盛んだ。
 熊野 ブロックトレイン「福山レールエクスプレス号」は現在、東京―大阪、東京-広島、名古屋―福岡、さらに大阪―盛岡の4区間で運行し、大型トラック換算で1日当たり340台分を鉄道輸送に切り替えている。ダブル連結トラックも現在100台セットの規模で運行し、効率化・省人化を図っている。引き続き、利用効果の最大化に向け、活用の高精度を実現したい。
 ――幹線輸送では中継輸送にも取り組む。
 熊野 ロジスティード(旧・日立物流)と実施していたが、最近、センコーとも関東―大阪間で中継輸送を開始した。ドライバーの労働規制強化に伴う24年問題への対応が背景にあるが、物流業界の将来を見据えた時、中継輸送に限らず、お互いの強みを生かし、言い換えれば弱い部分を相互補完する協業や業務提携は否応なしに進む。

コスト押せえて売上げ確保

 ――社長に就いて1カ月がたった。
 熊野 まずはコスト上昇を抑え、売り上げ確保に取り組む。教条的と思われるかもしれないが、全ての事案に対して「言行一致」で臨む。私自身、全社員を信じることは当然ながら、一人でも多く理解者を増やして活気あふれる会社にしたい。幸いにも当社の強みはドライバーの年齢が40歳と若いこと。厚生労働省の「21年賃金構造基本統計調査」によれば、大型49・9歳、中・小型47・4歳で、全産業平均は43・4歳。若さだけにこだわっていないが、環境の変化に素早く対応でき、改革・変革も取り組みやすい。
 ――設備投資はどうか。
 熊野 ネットワークの整備で言えば、大阪、名古屋など大型店舗の中には古い施設もあり、効率化実現のためにも優先的に取り組まねばならない。また、新店舗の開設だがネットワーク整備の観点からして重要ということは分かるが、採算を度外視して開設することはできない。いずれにしても特積み輸送事業を基盤としながらも、流通加工・貸し切り輸送など、各事業拡大への貢献・寄与が見込めるならちゅうちょなく実施する。

記者席 気負いなく平常心

 福山通運の将来を託されての入社で、この間、営業部長、営業本部長など営業畑を歩いてきた。貸し切り事業や3PL事業の強化、全国ネットワークの整備や同業他社とのアライアンス(提携)強化など、小丸成洋社長(現・会長)の「攻めの経営」を側面から支えてきた。
 変わらぬ信条は「言行一致」「自分の意見を持った行動」「凡事徹底の継続力」。さらに「会社の強みと弱みを知れ」。企業の年功序列の重要性も説く。日頃はあけすけで直截的な物言いで押し通すが、時に相手の心を和ませる気配りも忘れない。「私自身その能力があるか、保証の限りではない」とする。
 満を持しての社長就任ということか、少しの高ぶりや気負いもない。平常心はいつも通りで「闘争心は人一倍」が社内の一致した評価だ。