インタビュー

【 トップに聞く海上輸送こんなサポート 】
南九州の生命線守る 持続可能な物流構築

2025年07月15日
宮崎カーフェリー 郡司 行敏 社長
宮崎と神戸を結ぶ宮崎カーフェリー(本社・宮崎市)は、宮崎、鹿児島といった南九州の物流を支える生命線として存在感を高めている。郡司行敏社長はトラックドライバーの労働規制強化を踏まえ「地元貢献は重要な基軸で、持続可能な物流を構築していく」と強調。安全運航を基に、安心で安定した海上輸送を貫く覚悟だ。
――労働規制が強化されて1年がたち、海上輸送への期待度は高い。
郡司 2年目を迎え、航走実績は期首計画を上回る順調なスタートを切った。宮崎、鹿児島の南九州は首都圏、関西といった大消費地から離れているため一連の法改正による影響は大きい。地元経済を支えるために持続可能な物流を構築する考えは今後とも不変だ。
航走実績はコロナ前に戻る
――現況は。
郡司 2024年度実績は前年度比7・8%増の7万4504台とコロナ禍前の水準を回復した。宮崎発上り便、神戸発下り便は共に顧客の裾野が広がり、積載率を押し上げている。曜日別では、宮崎発が週央で満船に近く、金曜と土日祝は幾分底上げされたが船腹に余裕はある。輸送の平準化に向け、週末利用の促進といった営業施策が欠かせない。神戸発の利用促進を進めていくことも必要と捉えている。
――宮崎をはじめ南九州にとって生命線となる航路だ。
郡司 その通り。南九州の農水産物を運ぶ使命を背負っている。コンプライアンス(法令順守)の厳格化で、トラック業界との協調は今や不可欠だ。特に地方では物流全体を俯瞰(ふかん)し、各輸送モードが果たすべき役割を全うする時代に移った。当社は海の高速道路として宮崎―神戸航路の運航に努めていく。
――新船就航3年を迎え事業は安定している。
郡司 「フェリーたかちほ」「フェリーろっこう」は、12メートル換算でトラック積載量が従来と比べ25%増加するとともに、冷凍・冷蔵輸送に対応する電源を130基設置し農産物のニーズに応えている。また、宮崎港午後7時10分発のダイヤは南九州を最後に出港する便で、運航率97・8%、定刻率92・0%に達し、顧客から高い評価を得ている。さらに宮崎港、神戸港共に高速道路のインターチェンジまで10分圏内という利便性の高さは大きな特徴だ。
生体牛の輸送品目拡大挑む
――利用拡大へ戦略は。
郡司 船舶代替え時に地元の支援を受け「県民フェリー」とも呼ばれている。地域貢献は重要な基軸の一つで、宮崎に関わる全ての品目を運びたい。これまで取り扱いがなかった貨物では、トライアル輸送を実施し、効果や課題を検証した上で本格化する成果が生まれている。直近では生体牛の輸送に挑んでいる。
――船舶の新エネルギーに対する考え方は。
郡司 代替えは事業継続で避けられず、長期的な経営課題と言える。50年のカーボンニュートラルの実現に向け、新たな技術や次世代エネルギーに最大限の関心を持つ必要がある。また、運航に関わるデジタル化は船員の業務を補助することにつながり、有意義と考えている。
――安全運航第一を使命に掲げている。
郡司 安全で安定した運航を確保することが根幹だ。船員、陸上の社員らが多様な訓練を重ねることで安全意識を高めていく。さらに、おもてなしの精神、地域密着の三つで日本一のフェリー会社を目指していく。