インタビュー

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【 社長インタビュー 】

プライム昇格へ準備加速 HD化でガバナンス強化

2025年07月08日

ヒガシホールディングス 児島 一裕 社長

 ヒガシホールディングス(本社・大阪市、児島一裕社長)は東証プライム市場への昇格を目指し、グループ体制の増強を推進する。4月、ガバナンス(企業統治)強化を主な目的にホールディングス体制へと移行し、新たなスタートを切った。同時に始動した2028年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画の下、目標達成に必要な基礎を完成させる。

 ――ホールディングス体制に移行した。
 児島 ステップアップを実現するための取り組みとなる。プライム市場への昇格で、重要な審査要件となるガバナンス強化が最大の狙いだ。これまで、事業持ち株会社による各グループ会社に対する管理レベルにばらつきがあったが、ヒガシHDの誕生によってグループ全体を、一律に高い水準で監督する仕組みが整い支援体制が強化された。
 ――同時に新中計をスタートさせた。
 児島 3カ年の新中計では、最終年度の28年3月期に連結売上高を550億円(25年3月期比14・3%増)、連結経常利益を35億円(同19・5%増)とする目標を掲げた。中計テーマには「プライム市場への昇格」という文言を初めて盛り込んだ。プライム市場への上場は、20年に掲げた30年に向けた長期ビジョンの中で示した将来像だった。今回、改めてターゲットとして中計の中で明示し、今後、昇格に不可欠な基礎を完成させる決意を固めた。

「新幹線型」の経営が寄与

 ――新中計は1年前倒しで始動した。
 児島 23年5月にスタートした3カ年の前中計の経営目標を1年前倒しで達成し、プライム市場への昇格に必要な数値基準をクリアできる見通しが立ったためだ。国内の荷量は全体として、人口減少や生産拠点の海外移転を背景に減少傾向が続いているが、六つの全事業領域で成長を志向する独自の「新幹線型の経営」を推し進めたことが寄与した。

挑戦を積極的に後押しする

 ――一般貨物事業と3PL事業の伸長が特に目覚ましい。
 児島 特に大手EC企業向けの物流センター業務と、輸配送業務の業績が伸長している。顧客のニーズに対してスピード感を持って施設と車両を準備し、短期間で必要な物流機能を整備できる社内体制が高く評価されていると考えている。また、事務所移転を主軸とするオフィスサービス事業、電子機器のキッティングを手掛けるITサービス事業、館内物流を行うビルデリバリー事業、介護用品を扱う介護サービス事業では、新しい業務の獲得や事業拠点の拡大、新規M&Aを推進したことで結果が出た。
 ――新中計の目標をどう達成する。
 児島 新幹線型の経営を加速させることを基本方針とし、HD化のメリットを最大限に生かしたい。コンプライアンス(法令順守)に関連する情報に限らず、グループ全体の営業活動に関わるあらゆるデータがヒガシHDの管理部門に集約されることになる。各社の新規事業案、投資計画を多角的に検討し、必要に応じて目標の設定や改善指示を出しながら、新たなチャレンジを積極的に後押ししていく考えだ。
 ――スーパー向けの冷蔵物流にも新規参入。
 児島 5月から大阪府内で三つの事業部が合同で、関西の大手小売店向けの冷蔵配送業務に参入している。現場から持ち込まれた新規案件で、既存業務で使用している施設・器材と活躍している人材を、うまく組み合わせて挑戦できる点を評価し、新規投資を決断した。今後、取扱量の推移を見守りながら業務の規模拡大を視野に入れている。

記者席 中核人材の育成

 新たな一歩を踏み出したヒガシホールディングス。ガバナンスを強化し、目標とする東証プライム市場への昇格に向けた準備を前進させたが、児島社長は達成しなければならない課題は多いとする。
 重要施策の一つが中核人材の育成だ。例えば、3PL事業では特に物流センターの責任者の確保を重視する。顧客によって業務内容に違いがあり、施設を運営・管理する方法、求められるスキルが変わってくる。一定の時間や投資を必要とし「簡単なことではない」。
 取り組みを進めるため、HD化のメリットを活用する。従来よりも俯瞰(ふかん)してグループを監督できる体制となり、各社で活躍する人材を把握しやすくなった。グループ内の人材の流動性を高め、貴重な経験や優れた技術の共有を促進。全体のレベルアップを図り、成長を加速させる。