インタビュー

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【 デジタコ特集・始動!規制的措置 運送企業どう対応? 】

デジタル化で実態把握を 運転手の「手間かけず」鍵

2025年07月08日

流通経済大学 大島 弘明 教授

 ドライバーの残業上限規制に伴う2024年問題に対応するため、4月から規制的措置が施行された。全関係者に効率化や取引改善の取り組みが義務付けられる中、流通経済大学の大島弘明教授は「時間管理が重要。荷主に行動変容を促すためにも、物流現場の実態を示す必要がある」と指摘。デジタル化を推進し、ドライバーに負荷をかけず作業時間を記録する仕組みが望ましいと話す。

 ――物流関連二法の施行により、規制的措置の適用が始まった。
 大島 これまで国が進めてきた長時間労働改善に向けたガイドライン(指針)などは、あくまで荷主や運送会社に自主的に行動してもらうためのサポートにとどまっていた。だが、深刻化する輸送力不足への対応ではより大きな改善が求められ、法規制で物流効率化の取り組みを義務化する必要があった。
 ――ポイントは。
 大島 企業規模に関係なく、関係者全体に努力義務が課されたことだ。特に物流現場で起きる問題は、発荷主と着荷主の間で取り交わされる取引条件に左右される。ドライバーの長時間労働の課題となる荷待ち・荷役時間の削減は、運送会社の自助努力だけで解決できない。規制的措置は荷主を含む全産業・全業種に行動変容を求めており、ここが革新的と言える。

荷待ち・荷役は125時間削減

 ――物流効率化に向け、求められることは。
 大島 物流の持続的成長に向けた取り組みが必要になる。国が定めたKPI(重要業績評価指標)では、施行後3年でドライバー1人当たりの荷待ち・荷役時間を19年比で年125時間削減する目標が掲げられた。荷待ち・荷役時間の削減に取り組むことで、無駄を省き生産性向上につなげる。そのためには時間管理が不可欠となる。
 ――なぜか。
 大島 これまでも労働時間や改善基準告示を順守できているかを確認する上で、ドライバーの労働状況の記録を残す必要があった。だが、始業・終業など必要最低限の運転日報しか残さなかった場合、庭先で荷待ち・荷役があっても、荷主に具体的な時間を示さなければ、改善は見込めない。規制的措置では、荷主も荷待ち・荷役時間を把握しなければならず、行動変容を促すためにも、現場の実態を把握して数字で示す必要がある。

時間管理で料金収受も促進

 ――記録を付ける際に気を付けることは。
 大島 ドライバーの手間をかけず、荷待ち・荷役時間を記録できるかが鍵を握る。ここで重要なのがデジタル化だ。デジタルタコグラフや労務管理システムを活用することが望ましい。また、取り組みの結果、労働環境改善や料金収受につながるというメリットを、ドライバーに理解してもらい、協力して取り組むことも欠かせない。
 ――データをどう活用すればいいか。
 大島 物流現場のさらなる効率化や労働時間短縮に向け、収集したデータは荷主との交渉で役立てられる。荷待ち・荷役の実態を示し、情報を共有することにより、適正運賃・料金収受や諸条件の改善につなげていくことが望ましい。
 ――規制的措置では、実運送の取引改善も盛り込まれている。
 大島 4月に施行した改正貨物自動車運送事業法では、運送契約の書面交付が義務化された。現場の中には、運賃と料金が別物という理解が浸透していないケースもあると聞く。荷待ちがあった場合、本来は待機料を収受するべきだが、これまでの商慣行では取引上明確化されておらず、過当競争の中で運送会社も請求しにくい環境だった。時間を明確にすることにより、料金を請求する際の根拠としても使える。