インタビュー

【 社長インタビュー 】
60年に感謝、使命は不変 「生まれ変わり再出発」

2025年03月25日
泉北高速鉄道
金森 哲朗 社長
東大阪、北大阪両トラックターミナル(TT)を運営する泉北高速鉄道(本社・大阪府和泉市、金森哲朗社長)が4月1日、親会社の南海電気鉄道と統合し、約60年の歴史に幕を下ろす。金森社長は「特積み各社の支えがあってこそ、TTを安全に運営できた」と感謝を示した。円滑に事業継承できるよう万全の体制を整えており、「TTの社会的使命が変わることは決してない」と話す。
円滑な移行へ準備は整った
―4月1日の経営統合を前にした心境は。
金森 基本的な準備は整っている。2023年12月に親会社の南海電鉄との統合を発表し、当社の事業が円滑に再編できるよう調整してきた。合併の認可は鉄道事業が24年11月に、トラックターミナル事業も今年1月20日に受け、準備が佳境を迎えている。
―前身の大阪府都市開発の設立から60年目の節目だった。
金森 1965年に創立され、東大阪TT(大阪府東大阪市)、北大阪TT(同茨木市)の運営は半世紀を超える。事業に自負を持っており、本来なら今年12月に60年で還暦を果たすはずだった。率直に寂しい思いはあるが、「生まれ変わって再出発する」という還暦の意味を胸に、顧客と共により良い未来へ大きく飛躍したい。
―東大阪、北大阪両TTは西日本の物流の要として役割を果たしている。
金森 東大阪TTは68年に、北大阪TTが74年に開業した。さらにTTに隣接する東大阪流通倉庫が69年、北大阪流通倉庫が74年に開設。高度経済成長期から今日に至るまで、物流を一日たりとも滞らせることなく支え続けてきた。
―公共ターミナルの役割はこの先も不変だ。
金森 4月以降、南海電鉄が事業を引き続き運営するが、これまで培ってきた社会的使命が変わることは決してない。入居する特積み各社には引き続き、安心してトラックターミナルを利用してほしい。
―統合後の体制は。
金森 当社の物流事業は南海電鉄不動産事業本部の下、「物流事業部」として新たなスタートを切る。南海電鉄は2026年4月にも鉄道事業を分社化し、不動産や新規事業を手掛ける持ち株会社に移行することで、成長分野の開拓を加速させる方針だ。
TTを高度化迅速な判断可
―投資として、北大阪TTでは再開発が先行している。
金森 これまで1号棟、食品流通センターE棟が高度化施設に生まれ変わった。現在、中核施設となるⅡ期棟は計画通り進行し、26年3月にしゅん工する見通し。その後、Ⅲ期棟、Ⅳ期棟の建設に順次取り掛かり、老朽化している全施設を更新する計画だ。
―東大阪TTの将来像は。
金森 東大阪TTは構想段階だが、投資額がかなり巨額になると予想している。南海電鉄と統合することにより、迅速な経営判断が可能となるはずだ。稼働率は現状100%で、運営を継続しながら更新するためには、建て替え用の種地が欠かせず、再開発プランを策定している。両TTは大阪都心部や高速道路に近い利便性を生かし、関西圏や西日本の物流を支える一大拠点に刷新する。
―泉北高速鉄道として特積み各社へメッセージを。
金森 これまで大きな事故なく運営できたことは特積み各社の支えがあってこそ。改めて厚く感謝したい。国の基幹産業の特別積み合わせ事業の基地としての重責を担っており、将来的にも揺るがない使命を果たす。
記者席 南海G、成長の源泉へ
前身の大阪府都市開発は2008年、大阪府の橋下徹知事(当時)が民営化の意向を示し、紆余(うよ)曲折を経て14年に南海グループに入った。物流事業は成長の源泉で、27年度を最終年度とする10カ年グループ経営ビジョンで不動産事業の進化は事業戦略の大きな柱だ。
民営化当時、特積み各社から今後の行方に多くの声が寄せられたが、今回10年強の信頼関係が醸成され、疑問の声は聞かれなかった。現場に寄り添った運営方針のたまものと言える。
金森社長はミナミを本拠とする南海電鉄で土木畑を歩み、20年に泉北高速鉄道社長に就いた。昨年6月、北大阪TTⅡ期棟の安全祈願祭に立ち会い、「育った茨木市に戻って仕事に携われたことは感慨深い」と振り返るとともに、事業の行く末を見届ける思いだ。