インタビュー

【 社長インタビュー 】
東西の結び付き強固に 高まる低温需要獲得へ

2025年04月01日
ムロオ
山下 俊一郎 社長
低温物流を得意とするムロオ(本社・広島県呉市、山下俊一郎社長)は輸送ネットワークの強化に取り組んでいる。西日本と東日本の拠点網の結び付きを強めることで、ニーズが高まる食品の温度管理輸送の需要獲得を目指す。
足元の貨物量に勢いがない
―低温輸送の市場をどう見ている。
山下 足元の貨物量については少し勢いがないと感じる。長引く物価の高騰で消費が抑制され、小売店が仕入れる商品の数が抑えられていることが理由だ。だが、中長期的には輸送ニーズ自体は今後も高まるだろう。
―どういうことか。
山下 徹底した温度管理輸送を求める声が増えている。一因が夏場の気温上昇。これまで常温帯で保管・輸送していた食品が損傷を受けるリスクが高まり、低温帯での取り扱い需要が増加している。メーカーが商品の賞味期限を伸ばす添加剤を控える傾向にあり、低温・定温が必要な商品が増えていることも背景にある。また、家庭で冷凍食品を食べるケースが増えていることも後押しになっているとみられる。
―高まる需要を取り込む。
山下 自社の物流ネットワークの強じん化を図ることが重要となってきている。具体的には、西日本と東日本の輸送網の結び付きを強めることが、重要なポイントだ。
―新しい厚木支店に期待が高まる。
山下 神奈川県厚木市に3月2日にオープンした「厚木支店」が、西と東のつながりを強固なものとする最初の役割を担う。空き施設を取得したもので、神奈川県内に拠点を構えるのは数十年ぶり。敷地面積は1万1176平方メートル、地上2階建て、延べ床面積は8961平方メートル。1棟全体で冷凍・冷蔵に対応することが可能。東日本エリアのサービスの強化を図る。同時に、圏央道の厚木インターチェンジ(IC)と厚木パーキングエリアスマートICから約5分の優れた立地を活用し、西日本から運ばれてきた首都圏向けの荷物のハブ拠点として機能させる。
―中継拠点としても活用する。
山下 東日本では茨城、群馬、埼玉、千葉などに主要拠点を展開している。西から東に走る幹線便は出発後、都内を通過して各拠点に向かっていたが、ドライバーの残業上限規制を受け、これまでのような運行が難しくなっている。そこで、厚木支店を中継地として運用し、労働時間を圧縮する。方面により差はあるが、往復で平均4時間の短縮が期待できる。
競合との差別化ポイントに
―支店の開設は差別化につながる。
山下 首都圏は人口が集中し競合も多い。厳しい事業環境の中で、新・厚木支店は差別化のポイントになる。関東の荷主は、関西でも事業を手掛けているケースもある。自社に仕事を任せてもらえるなら東日本に限らず、広島を中心とした西日本の自社拠点ネットワークを利用して近畿、中四国、九州に向けて荷物を発送することが可能。災害など予測できないトラブルに対応するBCP(事業継続計画)対策のニーズにも対応できる。厚木支店の新設で西と東の接続がスムーズになり、これまで以上に顧客に対し訴求ができるようになった。
―トップクラスの車両を保有している。
山下 幹線便や輸配送で運行する全トラックを冷凍・冷蔵・常温の3温度帯に対応した車両となっている点も他社に先んじるポイントだ。国内でもトップクラスの保有台数と自負している。
記者席 食品で新たな傾向
ムロオは創業から一貫して低温物流を手掛けてきた。同社を率いる山下社長は食品分野の知識が豊富。この数年、食品メーカーの商品に傾向の変化が見られるという。
食品の腐敗を防止するための保存料の添加を避けようとする動きがあると山下社長。「分かりやすい例が食肉加工品」。小売店で確認すると、似た商品でも冷蔵コーナーに陳列されているものと常温棚に置かれているものがあり、「冷蔵品は使用量が少ない」。
メーカーの動きはチャンスで、「製品がダメージを受けることを防ぐため緻密に温度管理された輸送が求められている」。展開する食品流通ネットワーク「ブルーライン便」をより強固なものとし、需要の獲得に向けて攻めの経営を推し進める。