インタビュー

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【 社長インタビュー 】

営業力をさらなる高みへ 市場・顧客目線に立ち

2025年04月01日

日本通運
竹添 進二郎 社長

NXグループの日本通運(本社・東京、竹添進二郎社長)は1月、地域ごとに展開してきたブロック経営を見直し、大規模再編を行った。「東名阪」の3大都市圏はアカウントセールスにかじを切り、地域を一体化してフォワーディング、ロジスティクスの両事業を推進する。北海道・東北は「East」、中・四国・九州は「West」の社内カンパニーを立ち上げ、エリア特性に即した経営体制を構築する。竹添社長は「地域の市場や顧客に合った機動的な提案・サービス開発を行える体制となった。全国で同一のサービスを提供しつつ、地域の声も聞き取っていく」と話す。

―就任から1年がたった。

竹添 世の中の動きが激しい中で、グループ内も目まぐるしく動いている。就任から1年で、社内の強み・弱みを理解し、顧客志向の会社へと変革するための道筋が見えてきたところだ。

―昨年は、2028年までの中期経営計画の初年度だった。

竹添 「顧客志向の強い企業」「収益力の高い企業」「選ばれる企業」の三つの柱を立てて、変革を志している。アカウント業体制の構築を進め、顧客や市場の視点に立ったサービスを展開し、より顧客との関係を深めていきたい。

―その一歩として社内カンパニー制を導入した。

竹添 グローバル顧客を主なターゲットにする東京・名古屋・大阪と、地域に根付いた顧客の多い北海道・東北や中四国・九州では、顧客のニーズが大きく異なる。全国ネットワークを強みとしてきた半面、東名阪のニーズに寄った経営判断が多かった側面もある。全国・世界に向けたサービスは今後も強化しつつ、地域の声に耳を傾けたサービスを開発・提供するために地域に権限を委譲する体制を取った。

同じ立場で俯瞰

―具体的にどのような戦略を取るのか。

竹添 東名阪は、グローバル展開をしている日本やアジアの顧客が集中している。ほとんどの場合、意思決定は東名阪だが、製造・保管拠点は全国各地に点在する。顧客の供給網を俯瞰(ふかん)することで、輸出入業務や保管など顧客の供給網の一部しか請け負っていない場合があることに気付く。アカウント営業として、顧客と向き合い提案を繰り返し行い、より良い案を提供していく。その結果、当社のサービスをより広い範囲で利用してもらえることにつながる。

―他の地域は。

竹添 地域の使命は二つある。東名阪で獲得する案件も、実際に担うのは各地域になることも多い。品質を落とさず、標準化サービスを提供する必要がある。加えて、地域に根差して世界でビジネスを展開する荷主や、1次産品など地域の特性に合わせたビジネスを展開する荷主もある。地域の特性を理解し、小回りの利く独自サービスを開発して、各地域発のサービスを展開することも重要だ。

拠点・戦力も再配置

―日本事業の再構築を進めている。

竹添 拠点や戦力で言えば、これまでは県庁所在地など行政区に合わせた拠点・戦力配置となっていた。ただ、顧客の供給網を見ると、必ずしもそのような分布にはなっていない。ニーズに合わせた拠点・人の再配置を進める。例えば、北海道の千歳・恵庭エリアや熊本など、工場ができることで大きな変化が起きることがある。変化を起点に、それぞれの事業に合ったサービスを構築する。

―実運送などの戦力については。

竹添 これまで全国にあった実戦力となる作業子会社を日本通運に一本化した。初期コストはかかるが、待遇改善や品質向上、企業統治の強化などさまざまなメリットがある。一方で、当社は長きにわたり利用運送に支えられている。実運送会社などとの協業は、今後もネットワークを維持する上で重要なため、良い関係を築いていきたい。

名鉄NXと協業強化

―ネットワーク事業は名鉄NX運輸に一本化。

竹添 15年からの協業の結実だ。業務の遂行は名鉄NXに一本化し、当社は利用運送としてサービスを販売する立場となった。国内の配送力は、重要な機能の一つだ。今後も経営バランスを見ながら、必要な協業を進めていく。

―サービスの根幹は人材。

竹添 優秀な「人財」を確保すること、今の従業員がやりがいや幸せを感じる環境を整備することの両輪が重要だ。エンゲージメント(従業員が企業に抱く熱意や貢献意欲)の向上をベースに考えている。「ロジスティクス・ブート・キャンプ」という教育プログラムや、NXグループの各部署がポストを社内公募し、社員が応募できる「ポスキャリ」という制度を導入している。

―一方で技術の活用も進めている。

竹添 今後も人口が減少するのは間違いない。さまざまな業務でAIやロボットなどの技術を導入するのは有効な手段だ。ただ、現場でどのような技術を運用するのかは、顧客目線が重要だ。営業体制を強化し、耳を傾けていく。

―エンド・ツー・エンドの提案を進める。

竹添 顧客のニーズを理解し、適正な価格で最適なサービスを提供し、選ばれる企業になることが目標だ。当社を選んでくれた従業員と共に、課題解決にまい進したい。

記者席 目的達成の資本は健康

NIPPON EXPRESSホールディングス国内事業再構築の重責を担う。そのために必要なのは、健康な体づくり。「週に3日ほど7~8キロメートルを走ったり、歩いたりしている。おかげで、これまで大きな病気をせずに済んできた」
気晴らしは映画鑑賞と読書で、本は時代小説を好む。映画は、映画館まで見に行くのが好きで、最近は「グランメゾン・パリ」を見に行った。「見ている間は、仕事を離れられる」。ゴルフは「楽しく」がモットーで、休日に家族と出かける食事も好き。
会社は、2037年の国内事業売上高2兆円に向けた足場固めの時期。実現には、社内外の多くの仲間と協力し、顧客の求めるサービスを構築することが不可欠だ。健康な体をつくり、実現に向けてまい進していく。