インタビュー

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【 トップに聞く海上輸送こんなサポート 】

寄り添う営業力が強み 利用者ニーズ敏感に対応

2024年12月10日

川崎近海汽船
久下 豊 社長

北海道や九州と首都圏を結ぶ重要航路を運航する川崎近海汽船(本社・東京)。消費地圏から3日目朝一配送を安定的に実現できることに加え、利用者に寄り添った営業を通じ、利便性向上を推進してきた。久下豊社長は「利用者のニーズに敏感に対応できることが強み」とし、これまで以上に利便性の向上を図っていくとする。

―ドライバーの残業上限規制の適用を受け、モーダルシフトの重要性が高まっている。

久下 フェリーは着実に 伸ばしているが、RORO船の利用拡大にはもう少し時間がかかるだろう。一方、深刻なトラックドライバー不足、(残業上限規制に伴う)2024年問題などを受け、企業の中にはできることから一つずつ進めようとする動きも出ている。

―無人航送に時間がかかる原因は何か。

久下 無人航送の拡大には、トレーラーシャーシへの投資、ドライバーの免許取得などの課題がある。このため、まずは中継輸送をはじめ、有人車でどんな対応ができるかを考えているケースが多い。だが、人手不足がより深刻化すると、海上輸送にシフトしなければならず、シャーシを用意し、荷物をまとめて運ぶ動きも出てくるだろう。

ターゲットは九州航路拡大

―利用実績は。

久下 2023年度は景気の落ち込みの影響を受けた。北海道航路は建築用資材などが増えた半面、個人向け雑貨が減少し横ばいだった。清水(静岡県)―大分航路も食料品や樹脂、住宅用建材が動いたが、路線雑貨、紙・パルプが伸びず、横ばいで推移した。

―今後拡大を目指していくエリアは。

久下 九州航路は重要なターゲットになるが、荷量は伸びてこない。その状況下、清水―大分航路は利用者の理解を得た上で、4月から減便させてもらった。今後については、モーダルシフトの進展によるRORO船需要の高まり次第と考えている。

―改めて強みは。

久下 20時間で結び3日目朝一配送が可能な利便性の良さに加え、利用者に寄り添った地道な営業活動を強みとしている。本社・支店を問わず、利用者のニーズに敏感に対応し、若干のダイヤ調整を行うなど柔軟に対応している。「これしかできない」というのではなく、自らアピールしていく営業活動を展開することで、一歩踏み込んだ顧客ニーズを獲得している。

RORO船の活用は効果的

―海陸一貫輸送サービスの需要も高まる。

久下 当社もサービスを展開しているが、自前の航送会社を保有しておらず、「ドアツードア」で輸配送可能な体制を整備する必要がある。物流全体の流れを俯(ふ)瞰しながら最適化を図るため、シャーシ・ヘッドなどを持つ企業と連携し、一貫輸送のノウハウを身に付けていきたい。

―船舶の新エネルギーに対する考え方は。

久下 利用者のコスト負担、国際動向を踏まえて考えたい。近年はディーゼルエンジンの燃費効率も向上し、新エネルギーの活用以外にも温室効果ガスを削減できる手法は考えられる。利用者のメリットを最優先に考え、できることが何かを考えていく。

―持続可能な物流のため、海上輸送の重要性をアピールし続ける。

久下 内航業界全体で認知度向上に努めることも必要だろう。また、ドライバーが減少する中、24年問題をどう解決していくかも考えてほしい。安定的な輸送力の確保には無人航送が効果的で、貨物をまとめて運ぶことが重要になる。