インタビュー

【 西多摩運送 創立80周年・インタビュー 】
「聞く力」が成長の源泉 顧客の思いをカタチに

2024年11月19日
西多摩運送
千原 武美 会長兼社長
今年、西多摩運送(本社・東京都昭島市)は創立80周年を迎えた。品質向上、営業力強化のため、長年、会社全体で取り組んできたのが〝聞く力〟の醸成。千原武美会長兼社長は「話の中から求めることを聞き出し、先回りして提案することで、顧客の思いをカタチにしてきた」とする。現状に満足することなく、さらなる飛躍を誓う。
―創立80周年という大きな節目を迎えた。
千原 社員と力を合わせて進んできた結果、80周年を迎えることができた。本日(11月16日)の記念式典には従業員とその家族、当社の発展に貢献してくれた方々を中心に招待させてもらった。今度は、従業員が感謝の気持ちを顧客にサービスを通じて返してほしい。
―経営者として、長年重視してきた考えは。
千原 全社員に人の話を聞くことを徹底してきた。会話中、自身の考えを押し付けてしまう人もいるが、それは違う。仮に相手の話が間違っていても、必ず全て聞くことが不可欠で、いつの時代も変わることはない。
先を見据えて挑戦
―話から新たな発想や気付きが生まれる。
千原 重要なのは相手の困り事、改善点などを知ること。これが新規案件獲得や既存事業の深耕につながる。次の手を判断するため、会議でも、現場レベルでも、会話でどんなやりとりがあったのかを、正確に報告することを求め続けている。
―この徹底が長年の成長を支えてきた。
千原 例えば、品質一つ取っても、時代ごとに求められる内容は変わる。輸配送、センター事業など種類も多岐にわたる。当社は中堅企業。顧客の求めるものを聞き出し、思いをカタチにする提案をしなければ、時代の先を見据えた挑戦を続けることはできない。
―社長就任以降、人材育成に注力している。
千原 人が仕事をつくるのではなく、「仕事が人をつくる」と考えてきた。入社時の雇用形態を問わず、できる可能性のある人には難しい仕事も任せている。苦労を乗り越えれば自信を生み、新たな挑戦への意欲を高める。従業員、経営層共に、次を担う人材が着実に育ってきた。
3つの戦略同時展開
―女性の活躍にも取り組み続けてきた。
千原 女性が持つ感覚や人への接し方は、品質向上などを進める上で重要だ。将来的には、全従業員に占める割合を2割に高めたい。実現には、時短勤務などの体制整備が重要で、誰でも同じ業務を行える多能工化を推進し、家庭と仕事を両立できる環境を整える。
―人材確保の取り組みも重要になる。
千原 複数の地元の大学生を10人ほど集め、好き放題に話し合ってもらう会を開きたい。最低でも毎月1回開催し、日当、交通費、食費は支給する。例えば、「サービスとは何か」など、物流に関わる内容であれば、テーマは何でもいい。当社の考えと合致すれば、起業を希望する学生への投資も考えていく。
―会の狙いは。
千原 「西多摩運送という面白い会社がある」ことを知ってもらうだけでいい。今は情報の時代だ。SNSで広めてもらえれば、認知度向上が期待できる。将来、学生が就職した勤め先で物流企業を探す際、学生時代の記憶を基に、当社が委託先に選ばれる可能性もある。回数を重ねるごとに輪は大きくなる。人材戦略、営業戦略、企業戦略の全てにつながる。
「誠実さ」が大事
―2024年問題で、物流業界は転換期を迎えている。
千原 輸送力不足などの課題はピンチだが、事業の進め方次第で好機にもなる。顧客に対してはニーズをつかみ、何が喜ばれるかを考え続けたい。また、労働条件改善は重要だが、同時に楽しい会社でなければ、社員は定着しない。仕事が人を育てる以上、さまざまなことに挑戦できる企業を目指していく。
―未来像は。
千原 従業員が働き続けたいと思える企業でありたい。そのためには、誠実に向き合うことが重要で、従業員には褒めることも、叱ることも大事にしていく。日頃から、顧客とも隠し事なく誠実に付き合う関係を深めていけば、諸条件の改善をはじめ、必要な時に耳を傾けてもらうことができる。
―全社員に向けてメッセージを。
千原 皆さんが一生懸命仕事をしてくれるおかげで、今の当社がある。家族が安心して送り出すことができ、自慢できる企業になるよう、これからも最大限のパフォーマンスを発揮してほしい。