インタビュー

【 トップに聞く海上輸送こんなサポ-ト 】
西日本航路、利用広がり サービス充実、利便性高め

2024年10月01日
近海郵船
関 光太郎 社長
太平洋と日本海に南北のRORO船航路を持つ近海郵船(本社・東京)。乗船前後の陸上利用運送サービスなどを拡充しつつ、近年は東京―大阪、敦賀(福井県)―博多(福岡市)の西日本航路の利用を伸ばしている。関光太郎社長は「特に敦賀港は北陸信越や中部、関西方面への利便性が高い。九州航路を選択肢に加えてほしい」と呼び掛ける。
―モーダルシフトに追い風が吹いている。
関 常陸那珂(茨城県)―苫小牧(北海道)、敦賀―苫小牧の北海道航路は、これまでも内航の利用比率が高く、さらなるモーダルシフトが起きているわけではない。一方、東京―大阪、敦賀―博多の西日本航路は目に見えて荷物が増えており、手応えを感じている。
―具体的には。
関 東京―大阪―那覇航路のうち、東京―大阪間は数年前まで、空きスペースがあったが、昨年は前年比で3~4割ほど乗船する車両数が増加した。トレーラーだけを輸送する無人航送の利用が多く、特に大阪南部に拠点を置く荷主、物流企業にとっては、利用のしやすさで強みがある。
―九州航路はどうか。
関 敦賀発博多向けでは、自動車や雑貨、加工食品など、比較的リードタイムの長い貨物で需要が高まっている。最近では、関西に拠点を置く飲料メーカーが一部貨物を海上輸送に転換する動きも出てきた。九州発は農産品を中心に着実に利用を伸ばしている。
―改めて魅力を。
関 九州の荷主、物流企業には、当社のRORO船が発着する博多港も選択肢に加えてほしい。また、敦賀港は北陸自動車道などの整備により、北陸信越や中部、関西方面への便性が高く、玄関港になり得る。日本海側航路の活用はBCP機能の強化にもつながる。
敦賀港、さらに使いやすく
―敦賀港では8月から、敦賀―苫小牧航路の着岸バースを移転した。
関 これまで敦賀―苫小牧と敦賀―博多の着岸場所は離れていたが、移転で接続の利便性が高まった。バックヤード(後背地)も広い。福井県や地方整備局と協議を重ねた結果、冷凍・冷蔵車が使用する駐車場の電源設備も増やし、増加する食品輸送の需要に対応している。
港から配送先へ陸送も可能
―利便性向上のため、長年、複合一貫輸送サービスを強化している。
関 ウイングトレーラーをはじめ、1363台の機材を保有するとともに、当社手配の車両で、港から配送先までの陸上輸送もできる。ドライバーの残業上限規制が適用される中、選択肢に加えてもらう機会が増えつつある。
―安定した輸送サービスも海上輸送の強み。
関 当社は太平洋、日本海の両方で運航し、災害で道路や鉄道が寸断された際も安定的な輸送を展開できる。日頃から利用してもらえれば、当社から新たな提案をすることも可能で、「よろず屋」のように使ってほしい。
―新技術の活用は。
関 自律運航技術を活用することで、船員の労務負荷を軽減しつつ、夜間や悪天時の安全な入港を両立できる。また今年に入り、一部で(世界最大の衛星通信網の)「スターリンク」も導入。通信容量を高めることで、台風接近時により詳細な情報共有が可能になるなど、船のDXも進めている。