インタビュー

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【 社長インタビュー 】

物流を超え社会に貢献 「ロジのセイノー」追求

2024年07月23日

西濃運輸
髙橋 智 社長

4月、小寺康久前社長(現・相談役)からバトンを受けた西濃運輸(本社・岐阜県大垣市)の髙橋智社長。「特積みのネットワークを維持しつつ、ロジスティクスの展開にもシフトしていく」と意気込み、セイノーグループが目指す「ロジのセイノー」の存在感を高めていく考え。加速している同業他社との提携の動きも「既成概念にとらわれずさらに広げたい」と意欲的だ。

顧客生産管理支援も一元で

―改めて抱負を。

髙橋 当社には「物流を超えて、顧客に喜んでもらえる最高のサービスを常に提供し、国家社会に貢献する」との使命がある。物流の領域に限ることなく顧客の課題解決を図り、国家社会に貢献していくことを重要なテーマとして取り組みたい。

―「物流を超えて」の具体イメージは。

髙橋 例えば、物流も生産管理の支援もワンストップで提供し、顧客が本業に特化できるようにすること。当社には、商品を預かり注文に合わせ出荷するロジスティクス機能、製品の検査や組み立てなどを手掛ける「ファクトリー」機能を提供できる強みがある。

―成長をどう描く。

髙橋 特積みは不可欠な社会インフラだが、人口減少や個人消費の増加でモノの動き方が変化する中、毎年10~20%の成長を図ることは難しい。「輸送立国」の使命の下、輸送ネットワークをしっかりと維持しつつ、ロジの展開にもシフトしていくことが重要だ。

―ロジをけん引役に。

髙橋 グループ全体で目指すのは「ロジのセイノー」だ。(親会社の)セイノーホールディングスでは、半導体などのエレクトロニクス分野、医薬・医療などのヘルスケア分野、EV関連などオートモーティブ・バッテリー分野を開拓する3事業部を設け、グループ横断型のロジ提案ができる組織となった。ロジ分野での存在感を高めていくことに注力したい。

―ターミナルと倉庫を併せ持つ「ロジ・トランス」機能の整備を推進。

髙橋 同一施設内でロジと輸送を直結させれば、顧客には受注締め切りまでの時間を延ばせるメリットがある。自前倉庫にこだわらず、顧客倉庫でのロジ機能提供も可能だ。

「空気運ばず、空気きれいに」

―足元ではドライバーの労働規制強化に伴う2024年問題が課題。

髙橋 コンプライアンス(法令順守)徹底は第一だ。東京―九州間のような長距離ではこれまでも中継輸送を展開。運行ダイヤの組み替えも含め着実に対応を進めてきた。

―昨年10月、中継輸送の専門拠点「北大阪ハブ」(大阪府茨木市)を開設。

髙橋 「オープン・パブリック・プラットフォーム(OPP)」構想で同業他社も利用できるようにした。24年問題には業界全体での対処が必要だが、満載にならず半分は空気を運ぶ積載率の低さが業界の課題。複数社で非効率に運ぶより1社で効率良く運ぶ方が環境にも優しい。「空気を運ばず、空気をきれいにする」ことが大切だ。

―協業の輪をさらに。

髙橋 できるところからどんどん広げたい。一例がトナミ運輸と始めた一部地域での共同配送。相互の強みを生かした取り組みで、OPPの一つの形だ。今年のグループスローガンは「創意」。既成概念にとらわれず新たな広がりを求め、業界のピンチをチャンスに変えていく。

―運賃適正化も重要。

髙橋 24年問題を機に顧客が理解を示す環境は整ったが、重要なのは付加価値の提供。集荷体制の見直しで顧客の生産性を2割向上させ、運賃改定を受けてもらった例もある。「顧客になり代わる」を主眼に、ロジやファクトリー機能を含む付加価値のある提案を進めたい。

記者席 「自責考動」と現場の声

「自責考動」が信条。他人の責ではなく、自分の責と捉え思考を止めず動くことを自身への戒めとする。社員には、誇りが持て働きがいのある職場づくりを約束しつつ、「企業が永遠に続くため、一人一人が〝自律〟した存在であれ」と訴えた。

常務時代、役員が変装し現場に潜入するテレビ番組に出演。10トン車の積み降ろしをほぼ一人でこなす体験もし、「経営者が現場の声を聞く重要性を学んだ」。今も全国18エリアから課題を吸い上げ、改善につなげる努力を続けている。

旅行、読書、映画鑑賞を好む。旅行の際は「どこへ行くかなど計画立てが楽しい」。ジョン・ディクスン・カーやエラリー・クイーン、アガサ・クリスティといった海外作家の推理小説を読むことが多く、趣味が合う奥さんと感想を語り合うことも。