インタビュー

【 社長インタビュー 】
3A軸に打ち勝つ覚悟 輸送品質、安全第一を追求

2024年07月02日
岡山県貨物運送
馬屋原 章 社長
岡山県貨物運送(本社・岡山市)は6月26日、馬屋原章社長が就任し、新体制が始動した。4月から労働法制が強化され取り巻く環境が大きく変化する中、馬屋原新社長は「3A(安全・安心・安定)が基盤」と語る。長年培ってきた輸送品質、安全第一の強みを前面に押し出すとともに、地域との結び付きも重視し、持続可能な輸送サービスを提供していく考えだ。
―先週、就任した。
馬屋原 重責に身の引き締まる思いだ。少子高齢化、燃料高、人材確保、労働法制の強化など厳しい環境下だが、3Aを軸に置き、社長として率いる覚悟を決めた。昨年、創立80周年を迎え、次の100周年に向け礎を築いていく。
―強みの輸送品質は磨きをかけていく。
馬屋原 「輸送品質日本一」を掲げ、全社員が一丸となって取り組んでいる。2024年問題で業界への注目度が高まることは、適正運賃・料金の収受には追い風で好機と捉えている。品質の向上で他社との差別化を追求すれば、さらなる後押しとなる。得られた原資を社員に還元するとともに、物流を通じて地域や社会に奉仕することを決して忘れてはならない。
中継輸送の充実、荷役分離も
―輸送の安全は経営の根幹だ。
馬屋原 その通り。「決まり事の厳守」を今年の目標の一つに掲げている。軽微な車両事故が目立つ傾向があり、いま一度、安全第一の風土を再構築していく。安全、安心、安定が働きやすい環境につながっていくと信じている。
―労働法制の強化で安定した輸送サービスが求められている。
馬屋原 長距離輸送を中心に運行便を見直し、労働時間の短縮や業務負担の軽減に取り組んでいる。これまでドッキング輸送や荷役分離などを導入し、ドライバーが運転に集中できる環境を整備してきた。さらに今後、新たな中継拠点の設置も検討し、より安定したサービスの提供を追い求めていく。
後進の育成と女性登用は鍵
―事業の安定には人材が欠かせない。
馬屋原 後進の育成が課せられた重要な任務と自覚している。事業継続の観点から経営陣は50~60代が理想だ。幹部、管理職間で切磋琢磨(せっさたくま)し、若く優秀な人材を引き立て盛り上げていく。またドライバーを含めた平均年齢も高まり、採用は待ったなし。若年層をはじめ女性、外国人材などダイバーシティー(多様性)は避けて通れない。
―今春、グループ初のベトナム出身者を採用するなど幅が広がった。
馬屋原 採用活動を刷新し、徐々に効果が表れている。昨年6月から人事部の女性2人が主導し、募集動画制作やCM内容見直しを行った。大学、短大、高校へ積極的に訪問している。
―育成による底上げも重視する。
馬屋原 従来の男性中心から脱却し、男女問わず活躍できる土壌をつくる。特に女性の登用を意識している。2月には将来の幹部候補となり得る30~40代の25人を対象に本社で研修を行い、討論が盛り上がった。大いに期待している。
―今後の事業戦略は。
馬屋原 設備投資では津山主管支店(岡山県津山市)、広島主管支店(広島市)で集約化と施設刷新を進め、労働環境の改善に努めてきた。老朽化している拠点は計画性を持って更新していく。同時に、各拠点に併設する倉庫では保管や流通加工といった3PLの専門人員を充当し、総合力を磨いていく。またカーボンニュートラルの実現に向け、EV、ハイブリッド車の普及を推進していく。
記者席 基本を忠実に守る
原田和充前社長(現会長)に代わり、17代目社長に就いた。「(打診に)率直に驚いた」と語る。業界が大きな転換点を迎える中、これまで以上に難しい経営のかじ取りを任せられると白羽の矢が立った。
人間万事塞翁(さいおう)が馬―。山積する課題に一喜一憂せず、「社是三則」と「はこびの道」の基本理念を胸に刻み、着実に前進する覚悟だ。諸先輩が積み重ねた歴史と伝統のバトンを後進に渡すべく、人材の育成には待ったなしで注力する考えだ。
週末は自宅のキッチンに立ち、腕を振るう風景が定着したという。「レシピ通りにしか作らない」と謙遜するが、今や和洋中何でもお手の物。業務も料理も基本に忠実な姿勢はこの先も変わることはない。