インタビュー

【 社長インタビュー 】
貸し切り、3PLを強化 24年問題の困り事に対応

2023年12月19日
新潟運輸
坂井 操 社長
10月に創立80周年を迎えた新潟運輸(本社・新潟市)。坂井操社長は「顧客、諸先輩、従業員には感謝しかない。これからも企業が継続して発展できるように努める」と話す。国内貨物輸送量は漸減傾向にある中、主力の特積みでは採算管理と提案営業を強化する一方、貸し切りや倉庫を活用した3PLを伸ばし、総合物流企業として収益基盤を固める方針。3月にグループ入りした大信物流輸送とのシナジー(相乗)効果も追求する。
―1943年10月1日の創立から80周年。
坂井 入社以来、80年のうちの約半分を新潟運輸と共に歩んできた。80年を迎えられたことは、顧客、諸先輩、従業員の支えや頑張りがあってこそ。感謝しかない。
―近年は厳しい事業環境が続いている。
坂井 この10年を振り返っても、天変地異や世界経済の動向など海外情勢が企業活動に強い影響を及ぼすようになっているが、これからも企業が継続して発展できるように努める。
居抜きで東港に新たな倉庫
―人口減もあり低成長の中、どう打開する。
坂井 新潟県内でも全国でも人口減少が進んでおり、物流にも影響が出てくることは想定していた。現在の売り上げ構成は、特積み7割弱、貸し切り2割弱、残りが3PLと不動産。特積みを維持・拡大させながら、貸し切りと3PLのシェアを高め、総合物流企業としての収益基盤を固めていく。
―倉庫を増やしてきた。
坂井 高崎支店(群馬県高崎市)、海老名支店(神奈川県海老名市)、新長岡支店(新潟県長岡市)と近年各地で倉庫を開設してきた。10月には新潟東港近辺に延べ床面積1万1550平方メートルの倉庫を居抜きで購入した。収入拡大と顧客の販路拡大につなげる。
―貸し切りは。
坂井 3月にグループに迎えた大信物流輸送とのシナジー効果を追求していく。
―特積みでは何に取り組む。
坂井 採算管理を徹底し、提案営業を強化する。採算管理では、業務量に応じた体制づくりも含め各店所で作業改善を進め、1人当たり生産性を高める。一方、提案営業では(ドライバーの労働規制強化に伴う)2024年問題で困っている顧客に対し、倉庫も含めた物流改善提案を展開している。調達、生産、販売、回収までありとあらゆるニーズに対応したい。
―荷主は例えばどんな悩みを抱えている。
坂井 顧客はリードタイムが延びることを一番気に掛けている。当社で在庫を持たせてもらい、リードタイムは維持するといった提案が有効だ。メンテナンス関係では特にリードタイムへの要求は高い。
来年5月、米沢支店を更新へ
―設備更新を計画している。
坂井 来年5月、山形県で米沢支店をリニューアルオープンする。老朽化に伴う設備更新で、片面が全天候型。東北中央自動車道の南陽高畠インターチェンジが最寄りになる。
―他社との協業は。
坂井 これまでもエリアごとで取り組んできたが、新たに海老名支店でエスラインギフと幹線便の共同運行を開始した。関西方面の一部荷物をお願いしている。事業環境が厳しい中で、地方では傭(よう)車の撤退が目立ち、今後配送が難しくなる地域が増えていく可能性もある。特積み業界全体で、協業の重要性が従来以上に高まっているのではないか。
―荷動きは厳しいが運賃交渉も進めている。
坂井 今期前半の5~10月期は前年同期比で物量は6%ほど減少。10%アップを目指し適正運賃収受に取り組み、物量減を一部カバーしたが、補い切れていない。来期に向けては新タリフ(運賃表)を準備していく。
記者席 変わらないもの
物流の根幹は変わらないね」と入社以来の40年余りを振り返った。トラックの技術やITは大きく発展したが、ターミナルでの荷さばきや、ドライバーがトラックを運転して顧客に荷物を届けるという幹の部分は変わらない。だからこそ「常に人の問題がこの業界を左右してきた」。
今、2024年問題として世の中が物流に注目し、国を挙げた対応が進められている。「当社は3~4年前から準備を進めてきた。残業上限規制についてはほぼクリアしている。改善基準告示についても同様だ」。
軽油をはじめとしたコスト増の下、働き方改革を進め、企業成長も図るためには原資が不可欠。来期以降は「2024年運賃」を適正収受のベースにしていく方針。