インタビュー

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【 社長インタビュー 】

新中計で労働環境改善 待機削減、共配も推進

2023年10月31日

シーエックスカーゴ 佐藤 豊 社長

 シーエックスカーゴ(本社・埼玉県桶川市)は今期から、3カ年の第9次中期経営計画を始動した。前中計では、巣ごもり需要などの影響で物量が増加した半面、業務に対応するため、社員への負担も大きかった。佐藤豊社長は「新中計では重点課題の一つとしてES(社員満足度)とエンゲージメント(愛社精神)向上を柱とした環境整備を推進する」とし、生協と連携した共同配送などを進めながら、働く人を重視した取り組みを展開する。

 ―2020年度に始動した3カ年の前中計を振り返って。
 佐藤 前中計は共同配送を推進したほか、全国の生協事業が好調だったことで、メーカーから物流センターへの運送など取扱物量が大幅に増えた。コロナ禍での巣ごもり需要もあり、宅配向けを中心に物量が増加した。
 ―課題もあった。
 佐藤 計画以上の物量増加に対応すべき課題への取り組みが遅れたこともあり、十分な社員の確保が難しかった。21年7月には桶川第2流通センター(埼玉県桶川市)を稼働。新事業となる通販物流の安定稼働を優先させるべく、他の営業所の社員にサポートしてもらったことで人員を配置するのが難しかった。
 ―新中計では、従業員の働き方改革に焦点。
 佐藤 社員と家族の皆さん、協力会社、顧客、地域社会にとって、あって良かったと思ってもらえる会社を目指している。新中計では従業員の労働環境改善を柱の一つに掲げている。

人事制度充実へ見直し

 ―何に取り組む。
 佐藤 人事制度が要。前中計では正社員に加えフルタイムと短時間勤務のパート社員の制度を改定。契約時間で雇用形態を分けていたものを一本化し、シンプルなものにした。等級制度を見直し、評価方法を仕事の遂行能力に特化したものから業務内容や役割を重視しており、給与を改定。改定した人事制度は常に見直し、新中計ではドライバーの制度を見直す。
 ―ポイントは。
 佐藤 現在の制度は地域基本給、資格手当など固定部分と人事評価による業績給など変動部分に賃金が分かれている。固定・変動という基本的な部分は同じでも、会社が求めるドライバー像を定め、ドライバーが良くなった、当社で働き続けたいと実感できるものを検討する。

協力会社や荷主とのPJも

 ―労働時間削減も重要に。
 佐藤 今年、荷主・協力会社と共に、ドライバーの残業上限規制に伴う24年問題のプロジェクトを立ち上げた。不足が懸念されているドライバー確保のためには長時間労働・低賃金など働き方のイメージを変えなければならない。
 ―具体的には。
 佐藤 国から出されているガイドライン(指針)にある「荷役・車両待機2時間以内」の目標を24年3月期までに達成させる。24年問題により、ドライバー不足はますます顕著になる。輸送能力確保へ業務効率化を進め、荷待ち・荷役など付帯作業に充てる時間も削減しなければならない。
 ―道筋をどう描く。
 佐藤 待機時間の実態把握・見える化と荷役効率化がポイント。見える化では全ての自社施設で、24年3月までに入庫予約システムを稼働させたい。荷降ろしでは小型マテハン機器の活用、パレット運用統一などを進め業務標準化による効率改善を図る。
 ―メーカー・卸から生協センターへの輸送も見直す。
 佐藤 関東、中四国、九州の生協とは、輸配送の効率化に向けた改善を進めている。各地区で共通して取引があるメーカーや卸もある。同じ地域に工場や物流拠点があれば、共同配送も可能で、今後も推進していく。
 ―何を目指す。
 佐藤 ドライバーの働き方を見直すには、車両1台当たりの積載率や業務標準化などの改善が重要。現在、幹線輸送で使うフルトレーラーの積載率は98%と高水準だが、他の車両では80%台以下もあり、少しでも高めたい。

記者席 会社支える社員と共に

 シーエックスカーゴの長期ビジョンや中期経営計画は、会社を支える30代前半~50歳の社員を中心としたメンバーで策定したのが特長だ。
 自身も営業本部長に就任した2007年、中計策定に携わったことがあり、「最も思い出に残っている」と話す。
 21年度に策定した長期ビジョンでも、約30人の社員が集まり策定。中計策定に関わったことがない社員にも参加してもらった。このメンバーから数人を、前中計と新中計の企画チームに選抜し、社員の意見を大事にした。
 「会社の将来像を考え策定してもらい、それを経営陣が受け止め、会社経営する上で必要な要素が盛り込まれているか点検した」とし、会社に対する社員の思いが詰まったものとなった。