インタビュー

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【 社長インタビュー 】

協業完成が使命 「こぐま品質」高め

2023年09月05日

名鉄運輸 吉川 拓雄 社長

 名鉄運輸(本社・名古屋市)は6月2日、吉川拓雄代表取締役副社長が社長に就任した。グループ経営強化とNXグループとの協業を推進してきた内田亙前社長(現・相談役)の後を受け、吉川社長は「協業を完成させることが最大の使命」と話す。8月9日には、NXトランスポートとの事業統合に向けた枠組みも発表。新時代の名鉄運輸グループ構築に向けて、かじ取りを担う。

 ―就任の感想は。
 吉川 重責を感じている。同じ代表取締役といっても社長と副社長では、感じ方が全く違う。決断の重みを実感している。前任の内田相談役は信州名鉄運輸と四国名鉄運輸の各グループと一体となるグループ経営を完遂し、NXグループとの協業を着実に進化させてきた。私の最大の役割は、協業の完成だと考えている。

安全第一・品質第二は共通

 ―1年運送業を見て鉄道との違いを感じたか。
 吉川 運ぶという基本は変わらない。安全と品質に対する考え方や人が担う仕事であるといった部分だ。異なるのは運賃の部分で、鉄道では運賃表通り収受できるが、トラックではそうはいかない。適正料金の収受には難しさを感じている。
 ―物流を取り巻く経営環境は厳しい。
 吉川 燃料、トラック、施設、人件費といったあらゆるものが高騰している。その中でも、人材に対する投資を行わなければ選ばれる業界・会社にならない。どのようにバランスを取っていくのか、悩ましい部分だ。
 ―2024年のドライバーの残業上限規制適用に向けて、労働時間削減を着実に進めてきた。
 吉川 会社の収入が伸びない中、時間が減っても賃金が変わらないという目標はまだ達成できていない。労働時間削減については、軽自動車の乗り回しによる短時間業務の創出など業務の分割を進める方針だ。ただ足元で消費が落ち込んでいて、収入拡大は一筋縄ではいかない。
 ―運賃是正を進める。
 吉川 これまでも力を入れてきたが、コスト分析も一層進め着実な収受につなげたい。タリフ(運賃表)改定も含めて総合的に実施していく。同時に品質を高めるために、自社化・自グループ化を進めていく。24年問題を考えれば、委託先の労務管理などは困難だ。従業員を大切にする会社だと理解してもらうために、還元も進めながら自社戦力増強を図りたい。
 ―日本通運の特積み事業やNXトランスポートとの統合が発表された。
 吉川 両グループの経営資源をより一体で運用し、効率良く事業を進められる。品質の共通化など必要な施策を進め結実させたい。日通の特積み業務を、全国で元請けとして引き継ぐことになる。自社戦力の多い強みを生かし、高品質なサービスで業務の拡大につなげたい。

2000億円売り上げ視野

 ―統合で売上高2000億円が視野に入る。
 吉川 長期ビジョンでは特積み比率を下げることを掲げているが、統合の効果は織り込んでおらず一時的には比率が跳ね上がる。将来的には大阪と中部のトラックターミナルを軸に3PLや区域事業の拡大を図り、経営のバランスを整えたい。3PLに関してはまだ弱いと認識している。ノウハウを持った会社のM&Aや人材の中途採用も視野に入れている。
 ―名古屋鉄道グループの一翼を担い続ける。
 吉川 名鉄グループの中で物を運ぶ特異な存在として、経営のポートフォリオ(分散)化を支えている。特積み事業の性質上、利益面での貢献が弱い側面はあった。規模のメリットを生かし利益率向上に努め、名実共に中核企業の一つとして貢献していきたい。

記者席 業界全体の向上を

 内田亙前社長は、近年の名鉄運輸トップとしては珍しいほど物流業界の輪に解け込んでいた。吉川社長も期待されていますよと水を向けると、「引き続き業界の輪の中に入っていく」と力強い答え。業界が抱える人手不足や地位向上といった取り組みには、個社の枠を超えて立ち向かう必要があるとの認識だ。
 座右の銘は「不易流行」。安全第一・品質第二といった変わらない・変えてはいけない部分はしっかりと守りながら、刻一刻と変化する状況にはしっかりと対応する。そんな「変化に対応していくのが好き」。
 休日は、山登りを楽しむ。子どもが小さい時に始めたが今は夫人と二人行脚。普段は、鈴鹿山など近場の山を日帰り。「帰ってお風呂に入って飲む一杯がたまらなくうまい」