インタビュー

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【 社長インタビュー 】

顧客の声拾い上げ商機に あらゆる物流手法駆使して

2023年04月25日

第一貨物 米田 総一郎 社長

 第一貨物(本社・山形市、米田総一郎社長)は今期、物量減とコスト上昇が見込まれる中で輸送事業の建て直しを図る。主力の特積みをてこ入れし、利用運送と貸し切りを強化する。米田社長は「まずは前期営業赤字となった輸送事業の黒字化を果たしたい。ロジスティクス事業でも積極的な営業展開をする」とし、相次ぎ開設した3カ所の物流センターへの顧客誘致を急ぐ。

 ―状況は厳しい。
 米田 物量は昨年11月以降、急減した。物価高による買い控えが主因とみられるが、持ち直しの兆しが見えない。軽油価格は高止まり、光熱費は想定以上に上昇。人件費も上昇し、2023年3月期は、輸送事業に限れば2億5000万円程度の営業赤字を見込む。
 ―コスト転嫁は。
 米田 燃料サーチャージの適用率は90%に迫るが、コストは増える一方だ。今春闘では4%の物価上昇に対応した賃上げを決めた。並行して3月以降、運賃・取引条件の改善を顧客にお願いして回っている。成果は徐々にだが出てきている。
 ―物量減が続く。輸送事業をどう建て直す。
 米田 事業構成比では全体の8割弱を特積みが占める。特積みでは月当たりの収入が一定以上ある実取引件数の純増を目標に掲げる。利用運送と貸し切りでも取り扱いを増やすことで、まずは輸送事業を黒字化したい。

センター3カ所相次ぎ開設

 ―ロジスティクス事業でも積極的に動く。
 米田 昨年11月以降、得意先の物流再編に伴う形で札幌市、千葉県八千代市、埼玉県嵐山町にそれぞれ6600~6900平方メートルの物流センターをオープンした。24年に向け、在庫拠点を持ちたいといった荷主のニーズも生まれており、あらゆる物流手法を駆使して対応していきたい。
 ―飛躍的な業容拡大への取り組みは道半ばだ。
 米田 利用運送の伸びは年間では2%程度にとどまった。特積みの実取引件数を純増できた東京支社では「情報カード」を使い、顧客からの相談や問い合わせ内容を逐一担当者に共有し、対応できたことが成果につながった。情報カードは昨年秋ごろに全支社に展開したが、まだ十分には使いこなせていないようだ。
 ―情報への感度を高める必要がある。
 米田 顧客から寄せられる情報には、ビジネスのヒントが隠れていたりするが、特積み以外の情報に対する感度が低いケースも見受けられる。相談を受けた店所では難しい案件でも、広域で対応可能な場合もある。情報を共有し商機をみすみす逃さないことが重要だ。
 ―長年、顧客本位で誠心誠意やってきた。
 米田 品質にこだわり顧客本位で誠心誠意取り組む姿勢、真面目さ、風通しの良さなどの企業風土は当社の良さでもある。

内製化・自社化さらに推進へ

 ―第一貨物で働きたい学生は増えている。
 米田 社員寮も整い、家族を含めた福利厚生や中央研修所(山形県天童市)をはじめとした教育制度が充実していることも特長。今後も毎年100人を超える採用を目指す中、中央研修所の建て替えが来年3月のしゅん工に向け始まっている。
 ―採用増加を進める狙いの一つは、特積みの外部依存体質の脱却。
 米田 過去3年間で集配ドライバーは185人純増し、55億円あった集配委託料の57%を削減した。武藤幸規会長も外部委託を減らし、自社ドライバーによる集配100%を目指そうと(生前)話していた。今期も内製化・自社化を進める。
 ―ロジの拡大も採用増加の動機の一つだ。
 米田 「ロジオペ職」を今期、38人採用した。作業職として入社し、将来的にはセンター運営を任せられる人材に育っていってもらえるよう、給与制度も見直した。

記者席 エンゲージメント

 「社員のエンゲージメントを高めたい」。第一貨物で働くことに意義を見いだし、会社と共に成長することで本人の人生も豊かになる、そんな企業と人の関係が生まれる職場にしたいと語る。
 一つの手段としてタレントマネジメントシステムを導入した。人事情報をデータで一元管理し、一人一人の顔や能力を可視化し、適材適所の人員配置の支援もするシステムだ。まずは本社・営業本部の人事情報のデータ化から始めているという。
 東北色の強い同社も年々多様化が進む。それでも、人気の理由に挙がる企業風土には、山形を地盤とする企業ならではの良さがありそう。採用の面に限らず「良い方向には向かっている」。各人が持ち場でベストを尽くすことが良いサービス・良い品質に結実する。特積みが軸だが「特積みにとらわれないで」。80歳を超えた企業の新たな挑戦は始まったばかりだ。