インタビュー

【 社長インタビュー 】
特積み×ロジ展開加速 DXで現場重視の効率化

2023年04月04日
トナミホールディングス 髙田 和夫 社長
トナミホールディングス(本社・富山県高岡市)は今月、連結売上高1600億円、連結営業利益80億円を目指す中期経営計画の最終年度を迎えた。昨年12月に急逝した綿貫勝介前社長の後を継いだ髙田和夫社長は「継続的に成長できる企業を目指し、働きやすい職場環境を追求したい」と語り、綿貫前社長の遺志を受け、中計の重点戦略をさらに進める決意を強くする。
―綿貫前社長への思いを踏まえ、就任の抱負を。
髙田 持ち株会社制移行や会社分割といった重要な節目で一緒に仕事をさせてもらったことが強く記憶に残っている。今期が最終年度の中計は、継続的に成長できる企業を目指し、業容をさらに拡大させるという綿貫前社長の意思をくみ取って策定したもの。達成を目指し戦略をしっかりと立て、実践していきたい。
―中計の進ちょくは。
髙田 100%満足し得る状況ではないが、納得できる形で推移している。売り上げ面は、コロナ禍や物価高に伴う消費低迷に加え、収益認識基準変更の影響が想定より大きく苦戦しているが、利益面は目標達成できそうな水準。グループ社員の工夫と頑張りでコスト上昇分をある程度吸収できていることも大きい。利益を確保できる体質になっているのは確かだ。
総合営業で3PL堅調拡大
―重点戦略の一つ「特積みとロジスティクスの戦略的展開」の進み具合は。
髙田 着実に進めている。主に自社戦力で輸配送とロジスティクスを提供できることを強みに、特積み部門と倉庫部門による総合営業を展開。3PL事業は堅調に伸びている。拠点展開も進め、5月の連休明けにも開業するトナミ運輸の「新・尼崎支店」(兵庫県尼崎市)は、従来に比べ広大なプラットホームを備え上階に倉庫を併設する新たな戦略拠点となる。
―3PLは成長分野。
髙田 2024年問題を背景に長距離輸送が減りつつある中、各地に細かく在庫を持つ顧客の動きがあり、中距離のエリア内輸送のニーズが増加。こうした環境の変化を捉え、さらなる業務獲得を図りたい。
―独自の情報戦略「TDX(トナミデジタルトランスフォーメーション)」の展開は。
髙田 デジタル技術の活用で現場重視の効率化を図る取り組みとして、立ち止まることなく進めており、生産性向上と時短の効果が出ている。今は基盤づくりの段階。まずは働きやすい職場の整備を着地点として、データベースの再構築を進め、あらゆる現場作業の効率化を目指す。特積みで言えば、AIを使い誰でも効率的に荷物の積み合わせができるようにすることも視野に入る。
24年問題対応はほぼクリア
―24年問題対応は。
髙田 TDXの効果もあり、ほぼクリアはしている。半面、ドライバーをはじめ人材の確保へ重点的に取り組む必要がある。持続可能な経営のためには、働きやすさの追求に加え、賃上げへの対応も不可欠。デジタル技術活用による生産性向上と適正運賃・料金の収受で原資を確保していくことが重要だ。
―M&Aも推進。
髙田 M&Aは人材確保や拠点網充実を図る鍵となる。中核を担うトナミ運輸とグループ会社のシナジー(相乗)効果を合わせた総合力を成長の原動力としてさらに磨いていく。
―カーボンニュートラル(炭素中立)実現への施策も積極化。
髙田 富山支店でのEV(電気自動車)トラック導入や、水素エンジン開発プロジェクト参画、代替燃料の実証など多方面で取り組んでいる。EⅤトラックは収集した実証データを基に他店所でも使えないかを検討。水素エンジンについては、走行試験によるデータ提供を通じ早期の社会実装を支えていきたい。
記者席 「柔軟な継続」力に
トナミ運輸に勤務していた父の死が入社の契機。大学卒業後、別の会社で働いていたが、当時の役員の呼び掛けに応じた。以来40年、主に本社に身を置き、人事を含む管理部門に携わってきた。
「強烈なリーダーシップでけん引するタイプではない。さまざまな人の意見を聞き、良いものを選択し、経営に取り入れることを大切にしたい」。企業理念「和の経営」を重んじる。
座右の銘は「継続は力なり」。ただし、「同じことを頑固にやり続けるのではなく、変化へ柔軟に対応する姿勢が大事」。一日の長である特積みのノウハウを強みに、ロジスティクスの展開を加速する企業の姿勢と重なる。
読書と庭仕事が息抜きに。休日は自宅近くの田んぼ道をウオーキング。季節ごとの情景の変化を楽しむ。